「べらぼう」ネタバレ第33話 衝撃！打ちこわしの果てに新之助が遺した“命のバトン”

江戸を揺るがす「打ちこわし」がついに蔦重たちを巻き込んでいく。

NHK大河ドラマ『べらぼう～蔦重栄華乃夢噺～』第33話「打壊演太女功徳」では、民衆の怒りが爆発し、米問屋を襲う群衆、新之助の命懸けの行動、そして斎宮太夫らが繰り出す“銀の告知隊”が描かれました。

この記事では、公式発表や各配信プラットフォームの情報をもとに、この回の核心に迫ります。「この回、心が震えた理由」は何か。新之助の死が遺したものは何か。深く、感情に触れていきます。

新之助の死が意味した“命の使い方”──それが第33話のすべてだ

第33話「打壊演太女功徳」は、ただの打ちこわし騒動じゃない。

民の怒りが爆発する渦中で、一人の男が“命”という言葉に真正面から向き合った物語だ。

その男の名は、小田新之助──彼の死は、今を生きる我々に「命の使い方とは何か」を問うてくる。

打ちこわしの爆発と、新之助の決意

飢えが江戸を満たし、米屋の戸が次々と壊されていく。

それは破壊ではなく、叫びだった。

天明七年五月、江戸市中に立ち上るのは、悲鳴でも怒号でもない──「政を正せ」という魂の幟。

新之助が自ら書いたこの幟が、打ちこわしの号砲となった。

実際の描写では、幟の立つ辻に群衆が集まり、田沼家の御用米屋に向かって雪崩れ込む様子が公式サイトでも強調されている。

「米を惜しんだ報いだ！」と叫び、米俵をばら撒き、人々は「俺たちもやろうぜ！」と合流していった。

この混乱は単なる暴徒ではない。

“政に対する怒り”が民の手を通して現実になった、その象徴だ。

新之助はそれを導いた存在でも、扇動者でもない。

ただ、誰よりも腹を空かせた民の目線で世界を見ていた。

彼が語る言葉のひとつひとつが、口先ではなく血で書かれた抗議だった。

「政を正せ」の旗に込めた本心とは

「政を正せ」──その四文字は、今の政治ドラマの中でも屈指の強度を持つコピーだった。

飢えた者の怒りを暴力に変えないために、新之助が選んだ“旗”という手段。

それは叫びではなく、意志だった。

彼の旗は、暴力を煽るものではなく、“言葉の武器”だった。

しかし、それはあまりにも危うい橋を渡る行為でもあった。

打ちこわしが広がる中、新之助が手を染めたのは「破壊」であり、「秩序への挑戦」でもある。

だが彼の目は常に冷静で、目的を履き違えていない。

「米が欲しいんじゃない、民を人として扱ってほしいんだ」という声が、あの幟に込められていた。

民が飢える時、政治はなぜ“決断”できないのか？

新之助の旗は、未来の藩政改革の伏線でもある。

「幕末より前に、革命は始まっていた」──そんな読後感が、今回の演出にはあった。

冥府の影と、毒刃が貫いた想い

告知隊の練り歩き、太鼓の音とともに民の気持ちが鎮まっていく──そんな希望が射し込んだ瞬間だった。

突如、冥府の案内人のような男が、蔦重に向けて刃を振り下ろす。

その瞬間、身体で庇ったのが新之助だった。

平蔵によって男は斬られ騒ぎは沈静化したが、毒刃が新之助の命を蝕んでいく。

重い身体を引きずりながら、彼は蔦重にこう言う。

「俺はおふくと坊を守れなかった。でも、お前を守れた」

涙ではなく、誇りと共に逝った男の顔。

それは、“命の使い方”を知った者の表情だった。

彼は「誰かのために死んだ」のではない。

“未来を託せる者に命を託した”のだ。

そしてそれを受け取った蔦重は、“命を描く”という生き方を選ぶ。

物語の中で最も重く、美しい継承がここで行われた。

第33話は、ただの政治劇じゃない。

命が命を動かす、その一瞬を描いた神回だった。

蔦重が掲げた「銀の策」──混乱を祭りに変えた言葉の力

剣で乱を鎮めることはできても、飢えは斬れない。

そのことを一番知っていたのが、町人・蔦屋重三郎だった。

第33話は、ただの打ちこわし描写ではない。

民衆の“怒り”を、“笑顔”に変えた男の知恵が炸裂する、娯楽と経済のフュージョン回だった。

銀三匁二分で米一升──江戸を包んだ希望の幟

混乱を前に江戸城も揺れていた。

田沼意次が頭を抱える中、蔦重はとんでもない提案を放つ。

「米がなければ、銀を配っちゃどうです？あとから、その銀で米が買えるってすりゃ…」

一見、突飛に思えるこの提案を、意次は即座に採用する。

なぜなら、民の怒りは「今、食えないこと」への苛立ちだからだ。

それを抑えるには、“未来の保証”では遅い。

今、この瞬間に「救われた」と思える感覚こそが必要だった。

結果、町に貼り出された幟にはこう記される。

「銀三匁二分で、米一升」

民は耳を疑い、目を凝らし、ざわつく。

そして、太鼓と三味線が鳴り響く江戸の街に、「命の音」が流れ出すのだ。

斎宮太夫率いる告知隊と、“娯楽”の奇跡

告知隊が動き出すシーンは、まるで祭りの幕開けだ。

芸者、男芸者、浄瑠璃、摺物──娯楽の総力戦が始まる。

斎宮太夫の歌声が街を駆け、次郎兵衛と留四郎の合いの手が響く。

新之助も見上げたこの光景は、暴動を「祭り」に変える瞬間だった。

「三匁二分、米一升～！」

一升の米が命をつなぐ。

その重さと温もりが、歌と太鼓で届けられる。

道に溢れた怒りは、太夫の節回しで沈静し、祭りのリズムに変わっていく。

ここで描かれるのは、娯楽の本質だ。

娯楽は、笑わせるだけじゃない。

絶望の只中に立ち、心をひととき解放する“文化の剣”なのだ。

そしてこの隊列を率いたのが、本屋──蔦重。

「本と芸が、暴動を止めた」──こんな革命的な回、他にあるか？

芸が、民を救った瞬間を見逃すな

蔦重がこの回でやったことは、政治じゃない。

“人心を扱う”という、江戸随一の表現者としての仕事だった。

印刷を仕掛け、演出を組み、タイミングを設計し、街に届ける。

言ってしまえば、これは現代でいう「公共広告」の原型だ。

だが、それを花魁道中のような華やかさでやってのけた。

民に情報を届け、怒りを収め、希望を伝える。

しかも、祭りという“江戸の言語”で。

これはSNSもメディアもなかった時代に生まれた、最古のプロパガンダ×エンタメだ。

それが成功したのは、「誰の言葉で」「誰の声で」「どんなテンポで」届けるかを、蔦重が完璧に読んでいたからだ。

その全てが、一人の男・新之助の死によって“本気”になった。

彼の命が「命を描く」ことへとバトンされ、その最初の一筆がこの告知隊だったのだ。

だから、この回は“派手”じゃない。

“静かに心を掴む派手さ”を持った、真の神回だ。

田沼意次と蔦重──政治と思想の間で交わされた“祈り”

この世には、「決断できる者」と「願うことしかできない者」がいる。

だがこの第33話では、その境界が消える。

田沼意次と蔦屋重三郎──時代も立場も思想も違う二人が、“江戸を救う”という一点で祈りを重ねた瞬間が描かれた。

田沼の判断が導いた静かな革命

混乱する老中たちが打ちこわしの報を前に足をすくませる中、田沼意次だけが静かだった。

町奉行の報告を受け、彼はすぐに政を読む。

「この打ちこわしには“大義”がある」

これは単なる略奪ではない。

飢えと怒りが理性を越えてしまう、その限界点だと見抜いた意次は、すぐに蔦重を呼ぶ。

この決断が早かったからこそ、江戸は「炎」ではなく「音楽」に包まれることになった。

強権で押さえることもできた。

だが彼はそれを選ばなかった。

米ではなく“銀”を使い、民の怒りに対して“言葉”で応じるという政治を、彼は選んだのだ。

これは、静かに起きた“革命”だった。

蔦重の進言が実現した“銀の配布”とは

蔦重は、あくまで町人。

だがこの回では、その一言が国を動かす。

毒に倒れた新之助の遺志を背負って、彼は意次に進言する。

「銀を配り、その銀であとから米を買えるようにする。それなら民も救われるのではと──」

意次は一瞬の間を置いて、うなずく。

そしてこう言った。

「では、お主に任せよう」

この瞬間、蔦重は“一人の出版人”から“民の代理人”へと変貌した。

ここにあるのは、単なる情報の伝達ではない。

思想と思想の橋渡しであり、絶望の中に差し出された「小さな希望の灯」だ。

蔦重はそれを受け取って、町に持ち帰る。

ただの依頼主ではない。

「この銀に、未来を託してほしい」と願う意次の意志を、一人の人間として請け負ったのだ。

「本屋の力」が、江戸を動かした

田沼意次は、このときひとつの決断を下している。

幕府の命運を、“本屋”に託すという決断だ。

武士でも、商人でもない。

ただの出版人にして町人──だが、民の声を知り、言葉の強さを知る男。

蔦屋重三郎は、情報を売る男だった。

だがこの瞬間、彼は“生き方”を売る男になった。

摺物に刷ったのは、商品ではない。

命の約束だった。

「銀三匁二分で米一升」という文字列に、人々は希望を見出した。

だからこそ田沼は、彼に託した。

そして蔦重は、託された言葉を誰よりも美しく、正しく、力強く届けた。

この回のクライマックスは、殺陣でもなければ涙でもない。

“思想が政治を動かす瞬間”だ。

田沼が蔦重を信じ、蔦重が街を信じた。

この連鎖が、物語に深い説得力と熱を与えていた。

“声なき声”が、ついに届いた。

それは叫びじゃない。

これは、祈りだった。

新之助が遺した言葉──「俺はこの人を守れてよかった」

死の間際、何を想い、誰を想うか──それが、その人の“人生の輪郭”になる。

小田新之助は、自らの命を費やして語った。

「俺はこの人を守れてよかった」──その言葉は、英雄の名より、遥かに重い。

“志の死”と“残された者”の覚悟

あの瞬間、時間が止まった。

冥府の案内人のような男が蔦重に刃を向けたとき、間に割って入ったのが新之助だった。

刃は彼の脇腹を抉り、毒が血とともに流れ込む。

彼は倒れながらも、仲間を気遣い、誰より冷静に状況を見ていた。

まるで最期の時が近いことを、どこかで悟っていたかのように。

蔦重に肩を貸されながらの帰路、新之助は呟く。

「俺は…なんのために生まれてきたのか分からぬ男だった」

貧乏侍の三男、平賀源内の門人、秀でた才もなく、家族も守れなかった。

でも──

「でも、お前を守れてよかった…」

この一言で、彼の人生は“無意味”から“価値ある死”へと転じた。

この瞬間、志が命を超えた。

歌麿が描いた命、蔦重が拾った涙

新之助が息を引き取った後、蔦重はただ立ち尽くす。

その場に座り込み、肩にのしかかった命の重みに耐えながら、声も出せずに泣く。

この時の蔦重は、ただの町人ではない。

命を受け継いだ者の顔をしていた。

そこへ現れたのが歌麿。

差し出されたのは、虫や草花を写した絵。

「これが、俺の“ならではの絵”なんだ」と言う歌麿に、蔦重は震える。

「命を写すことが、自分にできる償いかもしれない」

誰かが死んだとき、その人の“存在”をもう一度世に描く。

それが、命を受け取った者の“宿題”だと、蔦重は気づく。

歌麿の絵が教えてくれたのは、技術ではない。

「命をどう写すか」こそが、絵の価値なのだと。

命を描くことで、人は誰かを生かす

新之助は死んだ。

だが彼の人生は、蔦重の中で“始まった”。

人は死ぬ。だが、誰かの中で生き続ける命がある。

それを描くことで、命の価値は未来に手渡される。

そして今、蔦重は筆を取ろうとしている。

それは絵でも、活字でもいい。

ただ一つ、確かなのは──

「描かれた命は、誰かの救いになる」ということ。

この回のラストで、蔦重の中に“志”が宿る。

それは新之助から託されたものだ。

そしてこの託し合いこそが、べらぼうという物語の“真芯”なのだ。

刀や政治では救えなかったものを、命の物語が救う。

これが、今作最大の感動であり、強さだ。

政権交代の予兆──田沼失脚と定信登場の静かな布石

人が死ぬとき、時代が動く。

第33話のラストで描かれたのは、新之助の死だけじゃない。

もう一つの死、それは田沼政治という“時代の息切れ”だった。

定信の癇癪と、陰で動く治済

その知らせは、白河小峰城にも届いていた。

松平定信──後の寛政の改革を主導する男が、ようやく表舞台に姿を現す。

知らせを聞いて、彼は机を叩き、癇癪を爆発させた。

なぜなら、打ちこわしの鎮静に意次が成功したと聞いたからだ。

定信は、田沼政権の失策を餌にして老中への道を進めていた。

だが意次が“銀の策”で民の怒りを抑え、打ちこわしを収めたことで、その道が揺らぎ始める。

それでも彼の背後には、一橋治済という大奥の巨人がいた。

「月が変われば、そなたはめでたく老中じゃ」

この言葉とともに、“大奥の反対が取り下げられた”ことが告げられる。

政権交代は、すでに始まっていたのだ。

大奥の反対撤回が意味するもの

田沼意次の政権は、表向きは盤石だった。

しかし、内部ではその“地盤”が静かに崩れていた。

公式の一次情報でも、「大奥の反対が撤回された」ことが明記されている。

これはつまり──

定信に政を握らせるための“天の許し”が下りたということ。

その裏で何が起きていたのか。

高岳や大崎、名ばかりの老中たちが、「死を呼ぶ手袋」に怯えながら、支配の構図に屈していく描写が描かれた。

権威の座は、怖れと屈服でつくられていたのだ。

そして、田沼のもとにもこの変化は届き始める。

配下の三浦が、政局の空気を肌で感じ、そっと意次に告げる。

「御三家、一橋様、ひいては上様までを後ろ盾にした老中が、生まれることになりましょうな…」

意次は静かに頷いた。

その目に、敗北の色はなかった。

むしろその表情は、全うしきった者の清々しさに見えた。

次の時代へ──“民を想う政治”への転換点

田沼意次という政治家は、よく「腐敗」と共に語られる。

だがこの回で描かれたのは、それとは違う側面だった。

民の怒りを読んだ政治家としての姿。

そしてその意志を引き継ぐかのように登場するのが、松平定信という人物。

一見、清廉で冷静。

だが彼の政治は、“正しさ”の名のもとに厳しさを民に課す側面も持っている。

つまり、ここで政権が交代するということは──

「優しさの政治」から「正しさの政治」への転換なのだ。

そして、物語はその狭間にいる者たち──蔦重のような“語る者”たちの生き様を通して描かれる。

定信の登場は、ただの権力交代ではない。

思想のバトンが、いま手渡されたという証なのだ。

「罪」じゃなくて「声」だった──冥府の男が映したもうひとつの江戸

あの冥府の案内人みたいな男、覚えてるか？

蔦重に毒刃を向け、新之助を刺した──つまり、物語上は“敵”だ。

でもな、あいつの目、どこか空っぽじゃなかった。

怒りや狂気ってより、“諦め”が立ってた。

「死を抱えた民」の象徴だったかもしれない

あの男、明確な名前も背景も語られない。

けど、毒を持ち、誰に命じられたわけでもなく、ただ静かに歩いて蔦重に刃を向けた。

これ、単なる刺客ってより──“行き場を失った者の最果て”だったんじゃねえかと思う。

飢え、搾取、忘れられた名、踏みにじられた尊厳。

あの時代の江戸には、表に出なかった“死んだ者たちの叫び”が山ほどあった。

刃物を持ったあの男は、たぶんその集積。

つまり「罪」じゃなくて、「声」だった。

新之助は、それすら肯定して死んだ

ここがこの回の凄さだ。

あの“冥府の男”の刃に倒れた新之助、怒りの言葉はひとつも出さなかった。

「お前を守れてよかった」

つまりさ、彼は“誰に殺されたか”より、“誰を守れたか”に重きを置いて死んだ。

これ、もうね、ただのヒューマンドラマ超えてる。

「この人はなぜ刃を向けたのか？」を考えるより、「自分はどう生きるのか」を選んだわけ。

強いとか優しいとかじゃない。

“痛みを否定せずに、肯定して死ぬ”って、どんな強さだよ。

べらぼうってドラマは、敵と味方がハッキリしない。

それはたぶん、「善悪で切れない人間」をちゃんと描きたいからなんだ。

そしてこの第33話、あの無名の男のおかげで──

“この時代に生きた名もなき者の死”にもスポットが当たった。

それが新之助の命と引き換えだったことが、またえげつなく切ない。

でも、たぶん新之助ならこう言う。

「そういう死も、あっていい」

この一話、どこまでも深い。ほんと、べらぼうだよ。

「べらぼう 第33話」の魂に触れて──命の価値と向き合うまとめ

「誰かの死が、誰かの生を照らすことがある」

第33話「打壊演太女功徳」は、その事実を突きつける命の回だった。

小田新之助の死──それは「悲劇」ではなく、「選択」だった。

飢え、暴動、打ちこわし、政争──混乱のなかで、命をどう使うかが全ての登場人物に問われた。

そして、それぞれが出した答えは、痛みと覚悟に満ちていた。

• 新之助は、命を“盾”として使った──仲間を守るために。
• 蔦重は、命を“言葉”に変えた──未来へ繋ぐために。
• 田沼意次は、命を“決断”に換えた──政治を動かすために。

そして定信という“次の時代”が、静かに息をし始める。

この構造は、まさに江戸の転換点。

だがそこにあるのは、剣や法ではない。

「想いを託す」ことのバトンリレーだった。

新之助が遺した「守れてよかった」という言葉。

蔦重が拾った命と涙。

歌麿が見せた「写す」という赦し。

どれもが、“物語”という形で観る者に刻まれていく。

そして観た私たちは、静かに問われる。

「あなたの命は、何を守るために使われるべきですか？」

第33話は、ただのエピソードではない。

観る者一人ひとりの中に、“物語の続きを書かせる”回だった。

べらぼうというドラマの中で、最も静かで、最も熱い1話。

まるで一枚の浮世絵のように──

命が描かれ、死が記され、希望がすり込まれた絵巻物のような時間だった。

だから、もしあなたがこの回を観て「泣いた」なら、それはきっと“命を想った”からだ。

そして、それこそがこの作品が描きたかったすべてなのだ。