
『遠い山なみの光』ネタバレ感想 “母の罪”が語りの奥に潜むとき
「あの子は、幸せにはなれないと思ってた」。この一言に、すべてが詰まっていた。カズオ・イシグロのデビュー作『遠い山なみの光』は、一見静かな記憶の語りだが、読了後に残るのは「これは誰の話だったのか?」という重い問いだ。本記事では、万里子=景子、佐知子=悦子という“鏡像”の仮説を軸に、母が抱える罪の意識、子殺しのモチーフ、そして語りの不穏さを読み解いていく。ネタバレを含みながら、悦子の語りの“消された真実”に切り込むことで、この小説の本当の痛みと静かな叫びをあぶり出す。