相棒23 第6話『薔薇と髭の夜明け』ネタバレ感想 ヒロコママが照らす“夜明け”の正体とは?

相棒
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再び、ヒロコママが“事件を連れて”戻ってきた。

『薔薇と髭の夜明け』──この詩的なタイトルの奥には、「過去の罪」と「今を生き直す者たち」の再交差があった。マネーロンダリング、不正受験、未解決の強盗事件。それぞれの闇に“人間の理由”が宿る。

この記事では、事件の構造だけではなく、登場人物たちの“揺れ動く心”を軸に物語を読み解く。これは、ヒロコママの料理と同じく、スパイスの効いた「人生のレシピ」だ。

この記事を読むとわかること

  • 『薔薇と髭の夜明け』が描いた10年前の罪と再起の物語
  • ヒロコママが事件を動かし、人を救う存在である理由
  • 泉川と矢野が背負った秘密と、その告白が導いた“夜明け”の意味
  1. 『薔薇と髭の夜明け』の核心──矢野が強盗をやめた本当の理由
    1. すれ違った未来:矢野と泉川、10年前の夜の邂逅
    2. 「あるよ、チャンスは──」彼の言葉が未来を変えた
    3. 選ばなかった罪と、選ばれた罪:矢野の“受験”とその後
  2. ヒロコママという存在が、“普通”を壊してくれる
    1. 包丁を持つヒロコ、そして過去を追うヒロコ
    2. なぜ第一発見者になりすぎるのか?4度目の不穏
    3. オカマバーから情報屋へ──ヒロコの“変身”と進化
  3. 「やり直し」の代償:泉川が捨てた教師という役割
    1. 身代わり受験の代償は、「教師の顔をしていた罪」
    2. “子どもたちへの真実”を選んだ理由
    3. 「きっと彼なら大丈夫」──そう言えるドラマの優しさ
  4. 10年前の強盗事件が、すべての糸を結び直す
    1. 強盗、裏切り、金、そして死:幸田の終焉
    2. 司法書士・矢野の告白と“万年筆の200万円”
    3. 朝日と共に訪れた“夜明け”は、誰のためのものだったのか
  5. “薔薇と髭”の意味を考える──タイトルに隠された美学
    1. 4度目の『薔薇と髭』シリーズ、その共通項とは
    2. タイトルにしか表せない“救い”の手触り
    3. ヒロコが夜明けを迎えさせた“誰か”とは誰か
  6. 職場や日常にも重なる、“罪の共有”と“秘密の距離感”
    1. 秘密は距離を近づけるけれど、同時に縛りつける
    2. ヒロコママが教えてくれた、“秘密を解く勇気”
  7. 相棒 season23 第6話『薔薇と髭の夜明け』の感情と構造を総括して
    1. 再起は、過去の清算と共に始まる
    2. ヒロコママの存在が持つ“感情の温度”
    3. そして右京が見つめる“夜明け”の行方
  8. 右京さんのコメント

『薔薇と髭の夜明け』の核心──矢野が強盗をやめた本当の理由

この物語の核心にあるのは、10年前の夜。

“たった一度の出会い”が、二人の男の未来を左右した。

強盗を選ぶはずだった男が、替え玉受験を選んだ理由──そこには、人生をやり直すことの意味が刻まれていた。

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すれ違った未来:矢野と泉川、10年前の夜の邂逅

司法書士・矢野拓海には、かつてもう一つの人生があった。

金に追われ、未来を諦め、不正の片棒を担ごうとした“過去”だ。

あの夜、彼は強盗計画の真っ只中にいた。

資産家を狙った強盗──それが成功すれば、人生を買い直せると思っていた。

だが、その運命の夜に彼は、**泉川慎平**と出会う。

風邪で倒れ、布団の中でうなされる青年

新聞配達と受験勉強を両立しながら、それでも腐らずに「教師になりたい」と夢を語る。

矢野は、その姿に“自分にはもう無いはずの未来”を見てしまった。

すれ違ったはずの人生が、奇妙に交差した一瞬だった。

「あるよ、チャンスは──」彼の言葉が未来を変えた

矢野は、そのまま強盗の現場に行かなかった。

彼を引き留めたのは、泉川の部屋に差し込んだ“朝の光”だ。

朝日がカーテンの隙間から、ゆっくりと部屋を染めていく。

「あるよ、チャンスは──あるんだ」

そう呟いた矢野の心に、強盗という選択肢は消えていた。

その代わりに彼が選んだのは、「誰かのためになることをする人生」。

そして、皮肉にもその第一歩が“替え玉受験”だった。

倒れていた泉川に代わって、矢野が受験を受け、合格させた

それは法律上は完全な不正だが、彼なりの“救い”の形だった

やがて泉川は教師になり、矢野は司法書士になる。

二人の道は交わることなく、それぞれの“正しさ”を抱えて生きていった。

選ばなかった罪と、選ばれた罪:矢野の“受験”とその後

10年後、再び交錯する矢野と泉川の道。

表向きは「それぞれが真面目に社会に貢献している人間」だ。

しかしその実、二人とも“選ばなかった罪”と“選んでしまった罪”を抱えていた

矢野は、過去の強盗未遂を口にすることなく生きてきた。

それは「罪を犯さなかった」ことと同時に、「真実から目をそらし続けていた」ことでもある。

そして泉川は、「不正に助けられた人生」を自分の口からは語らなかった。

誰かに言えば、自分のキャリアも、教師としての立場も崩れるとわかっていた。

けれど、“真実”は、いつか口をついて出る

泉川は、ヒロコママや右京たちの言葉に背中を押され、自ら全てを告白する。

その瞬間、矢野の表情が崩れる

10年ぶりに、心が“泣く”顔をしていた。

それは裏切りではない。「終わらせてくれて、ありがとう」の涙だった

この物語における“夜明け”とは、罪を清算し、自分の足で立ち直る意思のことだ。

誰かを想って犯した罪でも、それは免罪符にはならない。

けれど、自分でその罪と向き合った時、人はもう一度だけやり直せる。

矢野も泉川も、10年越しにようやくそれを知った。

あの夜、強盗をやめた男が選んだ罪は、“やり直すための罪”だった

『薔薇と髭の夜明け』が照らしたのは、「過去に戻れない者たちが、未来に向かう瞬間」だったのだ。

ヒロコママという存在が、“普通”を壊してくれる

相棒という物語において、“ヒロコママ”の存在はいつだって特別だった。

けれど今回、『薔薇と髭の夜明け』で彼女はもう一段深く物語の心臓に切り込んできた。

彼女はただの名物キャラではない。

視聴者が“安心して見ていた存在”が、今回は物語をかき乱す“引き金”として機能している

そしてその混乱の中から、確かな人情と希望の火が立ち上がる。

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包丁を持つヒロコ、そして過去を追うヒロコ

冒頭、ヒロコママがこてまりで料理を振る舞うシーン。

割烹着を着て「ヒロコスペシャル」を差し出す姿に、多くの視聴者が笑みをこぼしたはずだ。

“料理”という行為には、無防備な信頼と優しさがある

だからこそ、同じ彼女が数分後には「殺人事件の容疑者」になる展開に、心が一瞬ついていけなくなる。

だが、それがヒロコの立ち位置だ。

人の心を“揺さぶる”ために存在するキャラクターなのだ。

ただ、今回のヒロコは“巻き込まれた女”では終わらない。

自分の目で、現場に残された「教職員バッジ」を見つけ、すぐに泉川を守ることを選ぶ

逃げたのではない。時間を稼ぎ、説得し、自首を促すために“姿を消した”のだ。

この時点で、彼女はもう“ただのヒロコ”ではない。

人のために動く、命を懸けてでも

その行動が、物語の温度を一気に変えていく。

なぜ第一発見者になりすぎるのか?4度目の不穏

『相棒』ファンならすでに気づいているだろう。

ヒロコママが第一発見者になるのはこれで4回目

『1/2の殺意』『マリリンを探せ』『薔薇と髭と菫たち』、そして今回。

なぜここまで偶然が重なるのか?

それは、ヒロコママという存在自体が“事件を引き寄せる磁石”だからだ。

もっと言えば、“生き方の過剰さ”が、いつも物語の歪みを引き寄せる。

彼女は派手で、愛情深くて、正義感が強すぎる。

だからこそ事件の“内側”に足を踏み入れてしまう。

普通じゃない人間は、普通じゃない場所に呼ばれる

それが、彼女の運命だ。

オカマバーから情報屋へ──ヒロコの“変身”と進化

今回、ヒロコママは物語の中で“もう一段階の役割”を担っている。

単なる関係者ではなく、“キーマン”となる情報を運ぶ役目だ。

矢野の過去を知る元恋人の居場所を突き止め、特命係へと導く。

その瞬間、彼女は「情報屋」として機能している

オカマバーのママが、東京の裏社会を熟知しているという設定は昔から王道だ。

だが、その“お約束”の中に、ヒロコは彼女だけの深みを添えてくる。

たとえば、従業員への気配り、泉川への親心、そして右京への信頼。

彼女の“やりすぎな存在感”が、物語にリアリティを加えている。

“普通”じゃないことで、物語の“真ん中”に立つキャラクター

それが、今回のヒロコママだった。

『薔薇と髭の夜明け』という回は、ただヒロコが事件に巻き込まれた回ではない

彼女が物語を“押し動かした”回だった

「殺人事件の容疑者」から「情報をもたらす者」、そして「誰かを守る者」へ。

一人のキャラクターの中に、こんなにも役割が詰まっている。

だからこそ、視聴者は今回──ヒロコママという存在に、少しだけ“救われた”のだ

「やり直し」の代償:泉川が捨てた教師という役割

「再起の物語」は、どこか綺麗すぎる。

人は本当に“やり直せる”のか?

『薔薇と髭の夜明け』で描かれたのは、不正の上に築かれた人生を、あえて壊す選択だった。

教師・泉川慎平が下したその決断は、“再出発”ではなく、“すべてを失う覚悟”のことだった。

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身代わり受験の代償は、「教師の顔をしていた罪」

彼は立派な教師だった。

誰もがそう言う。ヒロコママもそう語る。

だが、泉川自身は、「自分が教師でいていいのか?」と、ずっと自問していた。

10年前、インフルエンザで倒れた自分の代わりに、矢野が受験を代行した。

それによって入学し、卒業し、教員免許を得た。

それは明確な不正──本人も“罪”であることは痛いほど分かっていた

しかし、それでも教師になった。

子どもたちと向き合い、笑い、叱り、励まし、信頼を得てきた。

“教師としての顔”を、社会に対して演じ続けてきた

その仮面を脱ぐということは、「全てを失う」ということに等しい。

でも、泉川は仮面の裏側の自分を、許せなかった

“子どもたちへの真実”を選んだ理由

彼がすべてを告白した相手は、警察ではない。

同僚でも、友人でもない。

“教え子たち”に向けてだった

この選択に、泉川の教師としての“最後の誠実さ”が詰まっている。

「過去に不正があった」ことを明かすことで、生徒に失望される可能性は高い。

それでも、嘘の上に立つ教育は、自分にはもうできなかった。

教育とは、“正しい知識”を教えることだけではない。

“正直に生きる姿”を見せることも教育なのだ

この物語が静かに語るのは、“真実を語る勇気”を持った者が、本当の意味で教師たり得るということだ。

亀山が言ったように、

「生徒たちは、“教師の人生”という教材を手渡された」

のだ。

「きっと彼なら大丈夫」──そう言えるドラマの優しさ

ラストシーン、泉川は職場を去る。

すべてを失い、教師という“居場所”も失った彼の背中は、静かに揺れている。

だが、右京やヒロコ、そして私たちは、こう思う。

「きっと彼なら、もう一度立ち上がる」

それは根拠のない希望ではない。

彼が“失ってでも守ったもの”を見ているからこそ、信じられる未来がある。

このドラマは、再出発の厳しさを知っている。

だからこそ、「きっと大丈夫」と言い切れる人間にだけ、再起の権利を与える。

すべてを壊した人間だけが、本当の意味で「やり直せる」のだ。

『薔薇と髭の夜明け』が描いた泉川の物語は、“やり直す”とは、“失うこと”から始まると静かに教えてくれる。

それは優しくて、厳しくて、人生というものの真ん中を、射抜くような視点だ。

10年前の強盗事件が、すべての糸を結び直す

『薔薇と髭の夜明け』は、最初から“夜明け”をテーマにしていたわけではない。

むしろ物語は、10年前の“夜”──つまり、強盗という闇に立ち戻ることで進み出す。

その夜を正面から見つめ、誰が何を失い、誰が何を選んだのかを問う。

このエピソードの醍醐味は、そこにある。

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/過去と現在を繋ぐ“夜明け”を見届けよう\

強盗、裏切り、金、そして死:幸田の終焉

殺された男・幸田。

彼の人生は、表向きは社会貢献型コンサルタント、実態はNPOを利用した脱税・マネロン業者だった。

しかしその始まりが、“10年前の強盗事件”にあると知ったとき、物語の空気が一変する。

資産家の家に押し入り、大金を盗み出した未解決の強盗事件

この計画には当初、矢野も関わっていた。

しかし矢野は抜け、幸田は“代役”としてもう一人──大森という男と組んだ。

強盗は成功し、金も手にした。

だがその成功は、幸田を“自由にした”のではない。

彼をずっと、大森の脅しと共犯関係に縛りつけ続けた

10年経っても、その夜の“負債”は消えていなかったのだ。

そして幸田は、ついに大森を殺害しようとする。

しかし逆に刺され、死を迎える。

罪から逃れようとした末路が、自らを終わらせたのだった。

司法書士・矢野の告白と“万年筆の200万円”

矢野の物語も、10年前から止まったままだった。

過去を知る者は消え、口をつぐみ、矢野自身も“何も知らないフリ”をして生きてきた。

しかし、特命係は見逃さなかった。

防犯カメラ、証言、そして表情。

矢野の無表情が、真実を語っていた

彼の過去は、ひとつの高価な万年筆にも刻まれていた。

200万円という値がついた一本のペン

大金が手に入った直後、彼はそれを“未来への希望”として手にした。

けれど、ペンは語る。

「この人は、罪の記念品を持って生きていた」と。

それは司法書士という“正しさの象徴”を持った男にとって、最も皮肉なアイテムだった。

朝日と共に訪れた“夜明け”は、誰のためのものだったのか

この物語における“夜明け”とは、比喩以上の意味を持っている。

矢野が泉川を看病した10年前の朝。

差し込んだ光が、彼の心を“強盗”から“受験”へと変えた。

そして現在、すべてを語った泉川、すべてを暴かれた矢野。

その瞬間にまた、朝が来る

けれど、これはハッピーエンドではない。

誰も完全には救われない。

でも、誰かの人生の夜が明けたことは、確かだ

矢野にとっても、泉川にとっても、あの夜の“誤魔化し”を終わらせる必要があった。

その終わりが、新しい一歩になる。

『薔薇と髭の夜明け』。

そのタイトルは、過去に絡み合った“棘”と“影”を払いながら

それでも新しい朝を迎える者たちの物語だった。

“薔薇と髭”の意味を考える──タイトルに隠された美学

『薔薇と髭の夜明け』。

この一見エレガントで、どこか戯画的なタイトルの奥には、このシリーズがずっと描き続けてきた“見えない痛み”がある。

S18、S19、S21、そして今作S23。

4度にわたって繰り返される“薔薇と髭”という言葉。

それはただのヒロコママ回というラベリングではない。

このタイトルこそが、「人間の複雑さ」を愛する視点を意味しているのだ。

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4度目の『薔薇と髭』シリーズ、その共通項とは

S18『薔薇と髭との間に』、S19『薔薇と髭の不運』、S21『薔薇と髭と菫たち』。

そして今回の『薔薇と髭の夜明け』。

どの回にも共通して言えるのは、“善悪では語りきれない人間”たちが登場することだ。

殺人者かと思えば、守るためだった。

嘘をつく者かと思えば、それは“誰かの未来”のためだった。

このシリーズにだけ、明快な勧善懲悪の構図はない

薔薇=美しさと棘。髭=男らしさと陰影。

その象徴として、ヒロコママがいる。

彼女は“男”でも“女”でもない。

“人間”として、誰よりも強く、誰よりも優しい

このシリーズの中で“ヒロコママ”は、二項対立を超えた第三の視点を提供してくれる存在なのだ。

タイトルにしか表せない“救い”の手触り

今回のタイトルに加わったのは「夜明け」という言葉。

これが何を意味するのか──

明らかにそれは、罪や過去の“夜”を経て、光に向かう物語であるという印だ。

だが、それは単なる“再出発”や“許し”ではない。

過去を背負ったまま、それでも前に進むこと。

この「夜明け」は、“失敗から立ち直る力”への賛歌だ。

そしてこの“救い”は、セリフではなく、タイトルでこそ表現される。

視聴者はタイトルを見て、“ああ、今回はそういう話なんだ”と直感的に理解する。

それがシリーズファンへの合図であり、詩的な補助線でもある。

ヒロコが夜明けを迎えさせた“誰か”とは誰か

今回、ヒロコママは多くを語らなかった。

だが彼女の行動は、確実に物語の空気を変えている。

泉川に「隠すこと」をさせず、矢野に「向き合うこと」を与えた

その行動はまさに、“夜明けの光”そのものだった。

ヒロコが朝日を連れてくるわけではない。

でも、彼女がそこにいるだけで、人は少しだけ“素直になる”

それが、今回の“夜明け”の正体ではないか。

タイトルが持つ美学は、ドラマ全体の設計思想と連動している。

誰もが抱える棘と影を、「そのままでいい」と抱きしめる

『薔薇と髭の夜明け』という言葉には、

過剰さも、矛盾も、過去もすべてを肯定する強さがある。

だからこそ、このタイトルを口にしたとき、人はほんの少し前を向けるのだ。

職場や日常にも重なる、“罪の共有”と“秘密の距離感”

今回の物語、ただの犯罪ドラマで片付けるのは惜しい。泉川と矢野の関係を眺めていると、誰の身近にもある“秘密の共有”ってやつが浮かんでくる。職場でも友人関係でも、ひとつの秘密を握っていると、その人とは特別な距離感になる。良くも悪くも。

矢野にとって泉川は、罪を背負わせた相手であり、同時に自分を救ってくれた存在でもあった。泉川にとって矢野は、不正を共にした過去を知る唯一の人間。ふたりの間には、誰にも踏み込めない“静かな共犯関係”があったわけだ。

職場での“内緒ごと”を思い出す人もいるかもしれない。上司の失敗を黙ってフォローした経験とか、同僚とだけ知っている裏話とか。あの妙な連帯感。どこか罪悪感があるのに、その関係があるから仕事を頑張れたりする。矢野と泉川の関係は、もっと重くて切実な形でそれを描いていた。

秘密は距離を近づけるけれど、同時に縛りつける

秘密を共有することで、人は一気に親密になる。でも同時に、その秘密が二人を縛る鎖にもなる。矢野は泉川に恩義を感じながらも、“あの夜のこと”を口にできなかった。泉川は教師として笑顔を見せながら、心のどこかで“あの受験”を引きずり続けていた。距離が近いのに、正面からは向き合えない。そんな不器用な二人の姿が、逆にリアルだった。

日常でもあるよな。仲の良い友達ほど、肝心なことを言えなかったりする。心の奥にしまったまま、でも相手には気づかれていて、ずっとそこに影が残る。二人の関係を見ていると、そんな“心の居心地の悪さ”まで映し出されている気がした。

ヒロコママが教えてくれた、“秘密を解く勇気”

最終的にその秘密を解いたのは、特命係の追及でも右京の推理でもなく、ヒロコママの存在だった気がする。ヒロコは理屈じゃなく、“人として正直に生きなさいよ”と背中を押す。オカマバーのママが持ってるのは、事件解決の鍵じゃなく、人の心を軽くする力。秘密を暴くんじゃなく、秘密を“話せる空気”を作るんだ。

人間関係って結局、そういう小さな勇気の積み重ねなんだと思う。抱えた秘密を誰かに打ち明けた瞬間、縛りつけていた鎖が少しだけ緩む。その勇気を持たせる役割を、今回のヒロコママが担っていた。事件を超えて、この物語が伝えたかったのはそこだったんじゃないか。

相棒 season23 第6話『薔薇と髭の夜明け』の感情と構造を総括して

この回を一言で括るなら、“人生をやり直すためには、まず正直になること”だ。

ただし、その“正直”には代償が伴う。

名誉、立場、信頼──すべてを失ってもなお語る“真実”が、やっと「夜明け」を招く。

『薔薇と髭の夜明け』は、それを視聴者の心の奥に静かに置いていった。

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再起は、過去の清算と共に始まる

泉川も矢野も、「これから」の人生を手にした。

だがその始まりは、“すべてを暴く”という選択だった。

やり直すこと、それは過去を消すことではない

むしろ、「過去を認めること」からすべては始まる

不正、誤魔化し、逃避──人は時に、自分を守るために嘘をつく。

だが本当に守りたかったのは、誰かの未来や、自分の理想だったこともある。

この物語は、“嘘を選んだ人間”に対しても、最後まで寄り添っていた。

だからこそ、その告白に意味が生まれる

ヒロコママの存在が持つ“感情の温度”

ヒロコママは、いつも物語の中心にはいない。

けれど、彼女がいるだけで空気が変わる。

派手な服装、柔らかな声、鋭い眼差し──そのすべてが“人間そのもの”を映している。

今回、彼女は事件の引き金でもあり、鍵でもあった。

人を守る行動力も、真実に近づく直感力も、どちらも“感情”から生まれている。

彼女の優しさには、痛みの記憶が混ざっている

だからこそ、人の心の裏側を見抜く力がある

今回の事件は、ヒロコがいなければ真相にたどり着けなかった。

そして、彼女がいたからこそ、誰も取り残されなかった。

そして右京が見つめる“夜明け”の行方

右京は、最後まで“見逃さなかった”。

表情の変化、言葉の矛盾、過去との接点。

だが彼は、怒鳴りも叱責もしない。

「あなたは自分で、けじめをつける必要があります」

そう静かに語る。

この台詞の中には、右京の“人を見るまなざし”が詰まっている。

彼が見ているのは、“犯人”ではなく、“まだ人間である可能性”だ。

そしてそれを信じた先に、“夜明け”がある。

再起とは、誰かに許されることではなく、自分を許すこと

その旅路を歩き出せる者たちを、右京は信じている。

『薔薇と髭の夜明け』というタイトルは、事件の謎ではなく、

人間が再び“人間らしく”なるまでの物語だった。

ヒロコママ、泉川、矢野──誰もが間違った。

でも、間違いを終わらせる勇気を持った

だからこそ、あの“夜明け”は美しかった。

右京さんのコメント

おやおや…実に複雑に絡み合った事件でしたねぇ。

一つ、宜しいでしょうか?

この事件の本質は、殺人そのものではなく――十年前に積み残された“不正”が、今日まで誰の胸にも影を落としていたことにあります。強盗事件に加担しかけた矢野氏、身代わり受験で道を得た泉川氏、そして不正を隠れ蓑にした幸田氏。皆が“方便”という名の罪を背負い続けていたのです。

なるほど。そういうことでしたか。

罪を選ばなかった者も、罪を選んでしまった者も、結局は同じ地点に立たされましたねぇ。すなわち――過去を清算しなければ、未来へは歩き出せない、ということです。

いい加減にしなさい!

己の立場や利益を守るために法を曲げ、他者を欺く。そうした卑劣な選択こそが、人を長きにわたり縛りつけるのです。正直に語る勇気なくして、やり直しなどあり得ませんよ。

結局のところ、真実は最初から彼らの胸に眠っていたのです。そしてそれを語る勇気を引き出したのは、ヒロコママの人情と信頼でした。人が人を支える――その連鎖が“夜明け”をもたらしたのでしょう。

さて…紅茶を一口いただきながら申しますと、罪を抱えたまま歩むことはできますが、罪を誤魔化したままでは歩けません。それが今回の事件の教訓なのではないでしょうか。

この記事のまとめ

  • 10年前の強盗事件が今へ繋がる因縁の物語
  • 泉川と矢野、二人の秘密が描く“やり直し”の代償
  • ヒロコママが人を守り、真実を導いた存在感
  • タイトル「薔薇と髭の夜明け」に込められた再生の意味
  • 右京が語った「過去の清算なくして未来なし」の教訓

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