東京P.D.第5話ネタバレ感想 報道協定が人命を縛る夜、ニュースが凶器になった

東京P.D.
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誘拐犯より先に、ニュースが現場を揺らす。そんな順番の狂い方が、妙にリアルで怖い。
監禁先のマンション、その“向かい”にあるのは、二課が狙う政治家スキャンダルの部屋。人命とスクープが、壁一枚の距離で睨み合う。
情報を出せば記者が押し寄せる。押し寄せれば犯人が荒れる。荒れた拳が、少年に向かう。
それでも警察は動かなきゃいけない。広報は「発表係」じゃなく、空気の温度を操る担当になる。
この物語が刺さるのは、正義が気持ちいいからじゃない。正義が“綺麗に使えない夜”を、真正面から描くからだ。

この記事を読むとわかること

  • 誘拐と横領疑惑が交錯する緊迫構図
  • 報道協定が生む主導権争いの実態
  • マスコミを囮にした逆転救出作戦!
  1. 事件の現場は二つあった——向かいのマンションが地獄を増やす
    1. 誘拐の部屋と、横領疑惑の部屋が向かい合う悪趣味
    2. 広報が握るのは、情報じゃない。「温度」だ
  2. 報道協定って、透明な檻だ
    1. 「人命よりスクープ」が現場に流れ込む瞬間
    2. 「情報くれなきゃ突撃する」——協定が折れる音
  3. 一課長・北川一(津田寛治)がカッコいいのは、正義を振り回さないから
    1. 会見で見せたのは、情報じゃなく「責任の背中」
    2. 二課長との対峙が面白いのは、肩書きじゃなく“育ち”がぶつかるから
  4. 禁じ手:マスコミを動かして、犯人の目を逸らす
    1. 「突入できない」時間に、少年の部屋だけが濃くなる
    2. 報道が“武器”に変わると、正義の輪郭が揺れる
  5. “一時間で片がつく”快感と、乾かない後味
    1. 犯人が小物に見えるほど、「空気」と「制度」が主役になる
    2. スッキリの瞬間に混ざる、ほんの少しのザラつき
  6. 一番怖い余白——稲田裕司(金子ノブアキ)の温度が変わった
    1. 「不発で良かったですね」——優しさみたいな刃
    2. スナックの会話が、裏の物語を立ち上げる
  7. 主題歌「暴露」(syudou)が刺さる理由
    1. “暴く快感”が、救出の作戦に転用される皮肉
    2. “暴かれる恐怖”が、警察側にも降りかかる
  8. まとめ:救出の達成感の横で、“情報の匂い”だけが残った
    1. この物語が見せたのは「正しさ」じゃなく「主導権」
    2. 稲田が置いた“余白”が、次の不穏を増幅させる

事件の現場は二つあった——向かいのマンションが地獄を増やす

誘拐事件って、だいたい「犯人を追う」だけで物語が走る。ところが『東京P.D.』は、その当たり前を最初から折ってくる。
拉致監禁の“現場”の向かい側に、別件の“爆弾”が置かれている。しかも、爆弾の中身は政治家の公金横領疑惑。正義の顔をした汚れは、嗅ぎつけた瞬間に群がる連中がいる。そう、カメラだ。

誘拐の部屋と、横領疑惑の部屋が向かい合う悪趣味

一課が追う誘拐犯の潜伏先マンション。その“前のマンション”に、二課が狙う若手政治家・若草賢三の愛人宅がある。
位置関係としては、ただの偶然。でもドラマの中では、これが最悪のギミックになる。なぜなら、記者たちは「誘拐」より「横領」の匂いに敏感だからだ。人がさらわれていても、権力のスキャンダルには即反応する。皮肉じゃなく、現場の空気として描かれる。

だから報道協定が効いてくる。誘拐捜査の情報を出せば、記者が現場に集まる。現場に記者が集まれば、犯人の神経を逆撫でする。逆撫でされた犯人が少年に銃を向けたら、終わりだ。
「情報を出す」って行為が、善じゃなくなる瞬間がある。その怖さを、マンションの“向かい合わせ”というシンプルな配置で見せてきた。

この配置が最悪な理由(3つだけ)

  • 誘拐の現場が「報道の遊び場」になりやすい(人命より絵になる)
  • 二課のガサ入れが“映像映え”しすぎて、記者の足が止まらない
  • 情報が出せない時間が伸びるほど、少年の部屋の空気が濁っていく

広報が握るのは、情報じゃない。「温度」だ

このエピソードでいちばん“仕事してる”のは、拳銃を持った人間じゃない。広報だ。
広報が掴んだ誘拐の情報を持って、一課長・北川一(津田寛治)と二課長を引き合わせる場面がある。ここが渋い。正義を語る会議じゃない。
「どちらも引きたくない」空気が、目に見えるくらい重い。誘拐は命がかかる。横領は組織がかかる。どっちも引けば、自分の首が飛ぶ。その板挟みを、広報が“交通整理”する。いや、交通整理なんて生ぬるい。これは事故現場の火消しだ。

.広報の怖さは「何を言うか」じゃない。「いつ、どの温度で言うか」を決められること。情報は刃物で、握り方を間違えれば味方の手が裂ける。.

さらに、安藤直司(緒形直人)が口火を切る「同時に動く」案。ここで“広報の仕事”がただの発表係じゃなく、作戦の一部に格上げされる。
主導権を取るために、情報を出す。出すことで、相手(記者)を動かし、相手(犯人)の目線をずらす。つまり「情報」は真実のためじゃなく、命のために使われる。
この時点で、物語は単純な誘拐劇じゃない。誰が善か悪かじゃなく、誰が“場”を握るかの戦いに変わっている。

報道協定って、透明な檻だ

「情報を出すな」と言われるのは、捜査の足を止める命令に聞こえる。けれど実際は逆で、情報を出した瞬間に“現場”が壊れることがある。
『東京P.D.』が怖いのは、犯人の凶器より、記者の“正義っぽい圧”を生々しく描くところだ。スクープは空気を変える。空気が変わると、人は焦る。焦りは判断を濁らせる。そして、濁った判断のツケを払うのは、監禁された少年だ。

「人命よりスクープ」が現場に流れ込む瞬間

一課長・北川が記者たちへ捜査状況を説明する場面は、会見というより“火種の説明”に近い。拉致に関わった闇バイトの二人組は確保済み、主犯格は35歳の男、監禁場所の住所まで発表する。ここだけ聞くと、スピード感があって爽快。
でも同時に、その住所の“手前”に二課が踏み込みたい部屋がある。若手政治家・若草賢三の愛人宅。人がさらわれているのに、権力の汚れが隣にあるだけで、カメラはそっちへ首を向ける。
だから北川は「遅れた理由」を抱えて説明することになる。誘拐の情報を出せば記者が集まる。記者が集まれば、二課案件が映る。二課案件が映れば、政治が荒れる。荒れた政治の余波は、警察組織にも跳ねる。
つまり、捜査は“正しさ”だけで進めない。現場はいつだって、別の火事と隣り合わせだ。

報道協定が生むねじれ(見落としがちなポイント)

  • 「出せない」が続くほど、記者の疑心暗鬼が増えて現場に近づく
  • 協定は“守るため”のはずなのに、守られる側(被害者)が追い詰められる
  • 捜査の正解より、世論の正解が先に決まってしまう

「情報くれなきゃ突撃する」——協定が折れる音

ドラマが上手いのは、記者を完全な悪役にしないところ。記者側にも言い分はある。「警察が隠している」「市民の知る権利」——言葉だけ並べれば正義だ。
けれど現場では、その正義が刃になる。記者がうろつけば、誘拐犯を刺激する。刺激された犯人は、少年に暴力を振るう。実際、真犯人は闇バイトと連絡が取れない苛立ちを、少年にぶつけ始める。金を急かし、電話をかけ、拳が飛ぶ。ニュースの外側で、被害者の部屋の空気だけが濃くなる。

「人命より重たいものなんてないのに」——そう思った瞬間に気づく。
この世界では、“人命を守るための沈黙”が、いちばん誤解されやすい。

そして残酷なのは、報道協定が「守る/破る」の二択じゃないこと。協定を守り続けても、記者は納得しない。破れば、現場が荒れる。どっちに転んでも地雷。
だからこそ、このエピソードは“正義のドラマ”じゃない。正義を掲げた人間たちが、互いの正義で互いの首を絞めるドラマだ。ここまで来ると、犯人の存在が相対的に小さく見えてくる。怖いのは、制度と空気のほうだ。

一課長・北川一(津田寛治)がカッコいいのは、正義を振り回さないから

北川の強さは、怒鳴らないところにある。声を荒げたほうが“仕事してる感”は出るのに、そうはしない。
会見の場で記者に向ける言葉も、相手を屈服させるためじゃなく、現場を守るために選ばれている。ここが『東京P.D.』の渋さで、そして津田寛治の顔が一番映える瞬間だ。

会見で見せたのは、情報じゃなく「責任の背中」

闇バイトの二人組は確保済み、主犯格は35歳の男、監禁先の住所まで出す。捜査の進捗としては大盤振る舞いに見える。
でも北川は、その“出す情報”の裏に、出せなかった時間の理由も背負って立っている。向かいのマンションに二課案件があるせいで、現場に記者が押し寄せれば誘拐犯が刺激される。その恐れがあるから、言葉が慎重になる。
説明の端々から伝わるのは、「俺が止めた」じゃない。「止めざるを得なかった」という苦さだ。
ヒーローが正義を振りかざす場面で、責任者が“選べなかった現実”を見せる。こういうところで、ドラマの温度が一段下がって、逆にリアルが立ち上がる。

北川の判断が刺さる理由

  • 記者を敵として扱わず、しかし主導権は渡さない
  • 「現場が荒れる」未来を想像して、言葉の量を調整できる
  • 部下の手柄にも、組織の面子にも、最低限の居場所を残す

二課長との対峙が面白いのは、肩書きじゃなく“育ち”がぶつかるから

一課長と二課長が向き合うと、空気が少しだけ険しくなる。ここで描かれているのは、単純な部署争いじゃない。
北川は、現場で汗をかいて上がってきた人間の匂いがある。言葉がやや荒くても、視線がまっすぐで、決めるべきところで決める。対して二課側は、理屈と手順が武器になるタイプの圧がある。
どっちが正しいかではなく、どっちの正しさが“現場で人を生かすか”が問われる構図。これが効いている。

.カッコよさって、正論を言うことじゃない。火の粉が飛ぶ場所で、誰が何を守るかを決めること。北川は、そこから逃げない顔をしてる。.

そして終盤、今泉が二課を先に動かす案を出したとき、北川は“自分が目立つ選択”をしない。政治家側の映像を先に世に流して誘拐犯の目を逸らす——危うい賭けだ。
北川がすごいのは、その危うさを理解したうえで「現場の生存率」を上げる方向に舵を切るところ。正義の格好良さじゃなく、責任の格好悪さを引き受ける。そこが痺れる。

禁じ手:マスコミを動かして、犯人の目を逸らす

突入の正解は、たぶん「早いこと」だ。けれど誘拐の現場では、早さがそのまま“死”に繋がる。
モニターの向こうで、少年に拳銃が向けられている。ここでドアを蹴破ったら、引き金は軽くなる。警察が勝つための突入が、少年を失うための合図になる。
だから『東京P.D.』は、いちばん嫌な手を選ぶ。メディアを、囮として使う。

「突入できない」時間に、少年の部屋だけが濃くなる

真犯人は苛立っている。闇バイトと連絡が取れない。金は振り込まれない。苛立ちは、被害者に向かう。電話越しに急かし、少年に暴力を振るい、ついには拳銃を向ける。
この状況、現場の刑事たちは最悪だ。踏み込めば危ない。待てば危ない。詰みの手前で揺れている。
そんな空気の中で、今泉麟太郎(福士蒼汰)が出す提案が異質に冷えている。「先に二課を動かしましょう」。
救出の作戦として聞くと変だ。でも理屈は残酷なほど通っている。犯人の目線は“ニュース”で動く。なら、その目線をこちらが設計すればいい。

作戦の骨格(ここが肝)

  • 二課の家宅捜索を先に“撮らせる”
  • 刑事が列をなして突入する映像で、現場を別件の熱に包む
  • 犯人に「誘拐はまだバレてない」と誤認させる
  • 安堵した瞬間にSITが侵入、少年を引き剥がす

報道が“武器”に変わると、正義の輪郭が揺れる

二課のガサ入れが始まると、記者はそっちに吸い寄せられる。カメラが向きを変える。レンズの興奮が“別件”の熱を作る。
その映像を見た犯人は、ニュースに映る警察の動きから「自分の誘拐はまだ気づかれていない」と判断する。ここが怖い。救出のために、相手の安心を買う。
「安心してくれて助かった」なんて、本来は言ってはいけない言葉だ。でも誘拐の現場では、その禁句が命綱になる。
そしてSITが突入。犯人の銃は二度、不発。偶然のようでいて、ドラマとしては最も鋭い“倫理の置き土産”でもある。撃てていたら、救出は成功しても、物語の温度が変わっていた。少年が生き残っても、心のどこかが別の形で死んでいたかもしれない。

.救出のために、カメラを踊らせる。胸の奥が少しだけ冷えるのは、正しいことをしているのに、綺麗じゃないから。.

さらに細かいところが気持ちいい。二課に“いいところを取られた”と一課担当がゴネる場面で、上田学(神尾佑)が「車に詰め込むところで良いか?」と落としどころを作る。
あれは優しさじゃない。現場の摩擦を減らすための処理だ。救出後に組織が割れたら、次の人命がこぼれる。『東京P.D.』は、そういう地味な現実まで映してくる。

“一時間で片がつく”快感と、乾かない後味

救出が成功して、犯人も確保される。テレビの前で息が戻る。ストレスがほどけて、肩が軽くなる。
それなのに、妙に喉が乾く。水を飲んでも乾く。
理由は単純で、ここで描かれたのは「悪を倒した爽快感」じゃないからだ。人質が助かっても、現場にこびりついた“別の怖さ”が消えない。警察と報道の距離、縦割りの摩擦、情報の扱い方。その全部が、救出の成功と同じくらい鮮明に残る。

犯人が小物に見えるほど、「空気」と「制度」が主役になる

誘拐犯の動きは、正直ぬるい。逆探知には敏感なくせに、Nシステム的な監視の感覚が薄いように見えるし、海外サーバー云々を匂わせる割に、詰めが甘い。改造銃も二発とも不発。
「そんな都合よく?」とツッコミたくなる視聴者の気持ちもわかる。けれど、この“ほどよい小物感”は、作品の狙いとしてはかなり合理的だ。

犯人を強くしすぎないことで浮かび上がるもの

  • 緊張の中心が「犯人の頭脳戦」ではなく「情報の出し入れ」に移る
  • 敵役が派手にならない分、組織内の判断ミスや遅れが生々しく見える
  • “倒すべき相手”が人間ではなく、現場を縛る仕組みそのものに見えてくる

ここが上手い。犯人が超天才で全員が翻弄される話にすると、どうしても娯楽が勝つ。スリルは出るけど、広報という切り口が薄まる。
でもこの誘拐は、犯人の凶悪さより「現場が荒れる条件」が怖い。記者がうろつく、二課案件が隣にある、報道協定が絡む、突入のタイミングがズレる。その“条件の積み重ね”で人命が危うくなる構造が、じわじわ効いてくる。

スッキリの瞬間に混ざる、ほんの少しのザラつき

救出が決まったあとの“手柄の取り合い”が、やけにリアルだ。一課担当が「二課にばかりいいところを取られた」とゴネる。上田が「車に詰め込むところで良いか?」と折り合いをつける。
このやり取りは笑える。でも笑った直後、少しだけ背中が冷える。誘拐犯を捕まえた直後ですら、人は面子から自由になれない。
現場の勝利って、こういう小さな不純物が混ざっている。完璧な正義じゃなく、現実の勝利だ。

.救出の達成感はある。でも、拍手が鳴り止んだあとに残るのは「次も同じ条件なら、また危ない」という現実の手触り。そこがこのドラマの硬派さ。.

個人的に、こういう“短期決着”の回は好きだ。引っ張らないぶん、事件の快感を味わえるし、視点の焦点がブレない。
ただし、その快感の中に「運が良かっただけかもしれない」という影を一滴落としてくる。銃が二度不発だったことも、犯人の浅さも、偶然の形をした救いだ。
だから気持ちよく終わるのに、気持ちよく終われない。胸の奥が、ほんの少しだけ湿る。そこが忘れがたい。

一番怖い余白——稲田裕司(金子ノブアキ)の温度が変わった

誘拐犯が捕まった瞬間、普通のドラマなら“終わりの音”が鳴る。ところが『東京P.D.』は、そこで別の音を鳴らす。小さく、しかし確実に不穏な音だ。
それを運んでくるのが稲田裕司。記者であり、最初に誘拐の情報を掴んでいた男。金子ノブアキの顔に、善悪のどちらとも言い切れない湿度が戻ってくる。

「不発で良かったですね」——優しさみたいな刃

一課長室に稲田が入ってくる。第一声がもう、絶妙に嫌だ。
「不発で良かったですね。2発とも不発。できの悪い改造銃で」
言葉だけなら、安堵の共有に聞こえる。でも、言い方が“知ってる人間”のそれだ。状況説明じゃない。確認。確認して、手元に置く。そんな匂いがある。
しかも続けて「医療過誤の件、そろそろですね」。ここで空気が変わる。救出の達成感に、別の案件の影が滑り込む。
この一言が何より怖いのは、事件の勝利が「過去の清算」の入口に変わるからだ。警察が救った命の話が、警察が救えなかった命の話に接続される。視聴者の胸の奥が、少しだけ冷える。

稲田の一言が刺さるポイント

  • 「良かったですね」が祝福ではなく、“把握”に聞こえる
  • 銃の不発を具体的に言える=情報源の匂いが濃い
  • 医療過誤を差し込むことで、物語の焦点を過去へ引きずる

スナックの会話が、裏の物語を立ち上げる

稲田と安藤が酒を酌み交わす場面。ここがまた、ドラマの呼吸を変える。現場の緊張とは違う、低い温度の緊張だ。
「まさかマスコミを動かす作戦を出してくるとはなぁ」
この言い方に、稲田が“当事者”として局面を眺めている感じがある。ただの外野じゃない。自分もその盤上にいる。だから驚く。
そして安藤が今泉を広報に入れた理由を語る。「意外といろんなものを抱えている」「どうせなら人のために尽くせる警察官になれば…」。
この台詞、優しいようでいて、実は重い。抱えているものが何かは言わない。言わないまま、視聴者の想像に任せる。任せた瞬間、想像は勝手に肥大する。

.救出の後に“別の話”を差し込めるドラマは強い。事件が終わっても、世界が終わらないから。むしろ、ここからが本番だと匂わせてくる。.

稲田の“S”が気になる、という感覚は視聴者の直感として正しい。誰が彼に漏らしているのか。あるいは、彼がどこから吸い上げているのか。警察内部の穴なのか、外部のパイプなのか。
ここで重要なのは、稲田が「悪役」に見えないことだ。むしろ“有能な記者”に見える。だから余計に厄介。正義の顔をした圧力は、拒む理由を奪う。
事件の犯人は捕まった。けれど情報の流れ道は捕まっていない。そこに手を突っ込んだ瞬間、手が汚れる。汚れるとわかっていても、手を突っ込まざるを得ない。
その予感だけが、救出の余韻に混ざって残る。甘さじゃない。ザラつきだ。

主題歌「暴露」(syudou)が刺さる理由

この物語、結局のところ「拳銃」より「情報」が怖い。だからオープニングで“暴露”と出た瞬間、もう宣言みたいなものだった。
暴くのは快感だ。隠し事が剥がれ、真実が光に晒される。その瞬間、人は拍手する。けれど同時に、暴露は刃物でもある。向きが変われば、救うより先に刺す。
誘拐と横領疑惑が隣り合ったこの物語は、その両刃をずっと見せてくる。

“暴く快感”が、救出の作戦に転用される皮肉

メディアは本来、隠された不正を暴く存在だ。ところがここでは、暴く力そのものが「囮」として使われる。二課の家宅捜索を“撮らせる”ことで、現場の熱を別方向に流し、誘拐犯の目線をずらす。
この構図、すごく意地が悪い。なぜなら、記者が持つ「暴露の衝動」が、結果的に少年の命を救う側へ働いてしまうからだ。
視聴者はそこで、気持ちよさと気持ち悪さを同時に飲み込む。救えた。だけど、その救いは清潔じゃない。スクープの欲が、救助の道具になっている。
“暴露”という言葉は、正義の匂いをまといやすい。でもこのドラマは、その匂いをわざと濁らせる。濁らせたうえで、現場の人間たちに選ばせる。そこが硬派だ。

「暴露」が美談にならない設計

  • 暴かれる対象が“悪人”だけじゃない(警察の都合、組織の面子も含まれる)
  • 暴露の正義が、誘拐現場では“刺激”として働く危険がある
  • 暴く行為そのものが、作戦の部品になってしまう

“暴かれる恐怖”が、警察側にも降りかかる

北川が抱えていたのは、犯人の脅威だけじゃない。記者が現場に来ること、その一歩で全てが崩れる恐れ。
報道協定が透明な檻になっていたのは、まさに「暴かれる側の恐怖」が常に背後にあるからだ。情報を出すと、助かる命がある。情報を出すと、壊れる現場がある。
この板挟みの中で、稲田裕司の存在がさらに厄介になる。彼は“暴く側”の顔で登場するのに、どこか“知りすぎている”気配をまとっている。「不発で良かったですね」「医療過誤の件、そろそろですね」——あの言い回しは、真実を求めるというより、真実を握り直している。

.暴露って、悪を裁くための光じゃない。誰かの視界を奪うほど眩しい光でもある。照らされた側は、目を細めるしかない。.

オープニングが作品に与える役割は、テンションを上げることだけじゃない。「この物語は、何が争点になるか」を先に刷り込むことだ。
誘拐の緊迫も、二課のガサも、記者の圧も、結局は“出す/出さない”の駆け引きに繋がっていく。だから“暴露”という単語が、毎回の入り口としてちょうどいい。
その言葉を見たあとだと、会見の一言、ニュース映像の一瞬、メモの走り書きまで、全部が「次に暴かれるもの」の予告に見えてくる。視聴の目が鋭くなる。ドラマの勝ち方として、かなり巧い。

まとめ:救出の達成感の横で、“情報の匂い”だけが残った

少年は助かった。犯人も確保された。二課の家宅捜索は撮られ、一課の面子は車へ詰め込む瞬間でギリギリ保たれた。
表面だけなぞれば、痛快な決着だ。
でも『東京P.D.』が残したのは、拍手の音じゃない。もっと小さい、耳の奥に残るノイズだ。情報が動くと、人が動く。人が動くと、現場が荒れる。現場が荒れると、被害者が削れていく。
“報道協定”は、その流れを止めるためのルールのはずだった。なのに、透明な檻になって、警察の手首を締める。檻の外では記者が「知る権利」を掲げ、檻の内側では少年が息を殺す。どちらも正義の顔をしているから、なおさら厄介だ。

この物語が見せたのは「正しさ」じゃなく「主導権」

誰が正しいかを競う作品ではない。誰が主導権を握るかで、生存率が変わる作品だ。
北川の会見は、その主導権を渡さないための“言葉の防波堤”だった。安藤の「同時に動く」案は、主導権を奪い返すための“仕掛け”だった。今泉の「二課を先に動かす」は、主導権をニュースに預けるという“禁じ手”だった。
そして、主導権がどこへ寄るかで、犯人の目線も、引き金の軽さも変わっていく。
ここまで来ると、誘拐犯の小物感や改造銃の不発すら、ただの偶然ではなく、「この世界は運にも左右される」という現実の釘として刺さってくる。救出は成功した。でも成功の形は、綺麗じゃない。それが記憶に残る。

稲田が置いた“余白”が、次の不穏を増幅させる

救出のあとに現れる稲田裕司の一言が、やけに生々しい。
「不発で良かったですね」「医療過誤の件、そろそろですね」——祝福に見せかけた確認。安堵に見せかけた釘。
彼は“暴く側”の顔をしているのに、どこか“知りすぎている”匂いがする。情報が漏れているのか、吸い上げているのか。どちらにせよ、捕まえるべき相手が人間ではなく、情報の通り道そのものに見えてくる。
事件が終わったのに世界が終わらない。この作品が強いのは、そこだ。

切り抜き用フレーズ(置いておく)

  • 犯人より先に、ニュースが動いた。
  • 救えた。でも綺麗には救えていない。
  • 正義の顔をした圧力が、いちばん厄介だ。
  • 事件の勝利より、情報の通り道が怖い。
この記事のまとめ

  • 誘拐現場と横領疑惑が向かい合う異常配置
  • 報道協定が人命を縛る“透明な檻”に
  • 広報が握ったのは情報ではなく主導権
  • マスコミを囮にした禁じ手の救出劇
  • 銃の不発が残した倫理のザラつき
  • 一課長の責任を引き受ける覚悟
  • スッキリ解決の裏に残る乾かない後味
  • 稲田の一言が示す情報漏洩の影
  • 主題歌「暴露」が象徴する光と刃
  • 事件より怖いのは“情報の通り道”

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