「違法捜査で告訴された特命係」。
相棒season16の幕開けは、正義の名のもとに揺らぐ“信頼”と“疑念”の物語だった。
右京と冠城を待ち受けるのは、連続殺人犯の罠か、権力者の陰謀か。この記事では第1話『検察捜査』の物語構造、感情の揺れ、登場人物の関係性、そして今後の展開への伏線までを徹底解説する。
「あの一言に、なぜ胸がざわついたのか?」──感想という名の考察を、あなたの心にインストールしていこう。
- 特命係が“脅迫容疑”で告発される衝撃の構図
- 連続殺人と司法の罠が交差する二重構造の物語
- 正義・信頼・裏切りが揺れる人間関係の描写
違法捜査は“罠”だったのか?特命係に突きつけられた告発の真意
特命係が、ついに“被疑者”として追い詰められる。
正義の側に立っていたはずの彼らが、脅迫容疑で告訴されるという衝撃の展開──。
それは偶然の産物ではない。仕組まれた罠だった。
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/真実を操るのは誰だ──?\
「脅迫容疑」で右京と冠城が告訴されるまでの流れ
物語はある連続殺人事件から幕を開ける。
大富豪・平井陽(演:中村俊介)が、自身の三人目の妻を殺害した疑いで逮捕される。
この男には、過去にも妻が次々と“事故”で亡くなっているという疑惑があり、右京と冠城はその闇にメスを入れようとしていた。
逮捕直後、平井はあっさりと犯行を自供。だが、起訴後に一転して供述を覆し、「警察に脅迫された」と主張。
この“自白の強要”を根拠に、平井は、弁護士を通じて右京・冠城・伊丹・芹沢を脅迫罪で告訴する。
本来なら、こんな告発は門前払いのはずだった。
だが、司法の奥底でうごめく者が、それを「利用」した。
検察官・田臥准慈の登場が意味する“司法の黒い手”
告発状は、東京地検の検察官・田臥准慈(演:田辺誠一)の手に渡る。
彼は、法務事務次官・日下部彌彦(演:榎木孝明)と旧知の関係であり、今回の動きは日下部の“特命係潰し”という私怨の延長線上にある。
検察による強引な告訴受理──これは、警察内部ではなく「外側から」特命係を崩すための計略だ。
公式サイトのストーリーによれば、この狙いは明確に「脅迫罪を立件すること」ではない。
狙いは、脅迫罪の立件ではなく、「特命係を違法捜査で立件する」というものだった。
特命係には本来“捜査権”がない。
田臥はこの点を突き、違法捜査の事実を積み上げていく構えを見せる。
つまりこの展開は、“罪を暴く”ための捜査ではなく、“正義を否定する”ための司法の作為なのだ。
検察が動き出した瞬間から、物語は明らかに「異なる軸」へと進み始めた。
特命係は違法捜査をしたのか?シリーズ過去作との対比から考察
ここで問いたい。
特命係は、本当に違法捜査をしていたのか?
劇中では、右京も冠城も、そして伊丹・芹沢も「自白の強要などしていない」と断言している。
実際、取調べの可視化は“被疑者の拒否”によって回避されており、証拠映像も音声記録も残されていない。
だが、シリーズを通して観てきたファンなら、こう感じるはずだ。
「右京さん、今までもちょっと無茶してたよね?」
実際、過去には被疑者を精神的に追い詰める、誘導的な取り調べが描かれたこともある。
- シーズン6第1話「複眼の法廷」では、証拠に基づくがゆえの“追い詰め”が議論の的に。
- シーズン10第1話「贖罪」では、「自白を強要された」と虚偽を述べる被疑者が登場。
特命係は“限界ギリギリの正義”を貫いてきたユニットであり、それはいつだって「正しさ」と「違法性」の綱渡りだった。
つまり今回の告発は、“絶対にありえない”わけじゃない。
だからこそ、視聴者の胸はざわつくのだ。
「もしかしたら、今回は本当に…」と。
この感情の揺れこそが、『相棒』という作品の真骨頂。
正義の名の下に、何をしても許されるのか。
その問いを、今回は“告発”という手段で視聴者に突きつけてきた。
『相棒』season16は、冒頭から明確なメッセージを持って始まった。
正義が罠にかかるとき、人はどこまで自分を信じられるのか?
その答えを、第1話ではあえて示していない。
なぜならこれは「反撃」の前夜──。
真実は、まだ語られていない。
3人の妻が殺された理由──大富豪・平井陽の“感情なき連続殺人”
妻が次々と“事故死”する──そんな偶然、現実には存在しない。
しかしその“ありえなさ”に、私たちはすぐ慣れてしまう。
なぜなら、それが富豪・平井陽の冷たい知能によって感情のない連続殺人として仕組まれていたからだ。
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/それでも、彼は本当に“無実”なのか?\
事故に偽装された殺害:なぜ3人とも「日常」の中で死んだのか
公式サイトのあらすじでは、このように記されている。
自身の妻を相次いで殺害した連続殺人事件の容疑者である大富豪の平井が、警視庁を告訴した。
この「相次いで」という言葉に、全てが詰まっている。
3人の妻が命を落とした状況は、いずれも“日常”の延長線だった。
- 1人目は、バスルームでの感電死。
- 2人目は、自宅のプールでの溺死。
- 3人目は、階段からの転落死。
現場はどれも、物的証拠が残りにくく、状況証拠も曖昧になりやすい。
だが共通するのは、「常に“密室”に近い場所で、目撃者がいない」という点。
事故死として処理されやすい場所を、意図的に選んでいる──。
右京の眼は、すでにその“不自然さ”を見抜いていた。
自供とその翻意、そして「自白の強要」主張の裏にある策略
この事件がややこしくなったのは、平井陽が“いったん自供した”ことにある。
逮捕直後、彼は犯行をあっさり認めた。
だが起訴後、供述を完全に覆し、「警察による脅迫があった」と主張。
ここで視聴者の脳裏をよぎるのは、過去シリーズでも描かれてきたテーマ──「取調べの可視化」だ。
本作では、録音・録画のない状況下での取調べが、まるで“感情の証拠”だけを武器にした闘いのように描かれる。
そして今回、平井がこの状況を巧みに利用していることが、物語の核心の一つだ。
取調べにおける自白が、司法の強力な武器であることを、彼は知っている。
だからこそ、それを“武器”から“毒”に変えて、特命係を崩しにかかっているのだ。
自供→翻意→告訴の流れは、明らかに用意されたロジックだ。
感情がないのではない。
感情を使うことなく、相手の感情だけを操る。
それが、平井陽という人物の最も恐ろしい部分である。
焼却炉の“心理トリガー”:右京がたどり着いた仮説とは
物的証拠が存在しない中、右京が突き止めた唯一の“手がかり”がある。
それは、平井家の庭にあった焼却炉だった。
庭付きの豪邸に不自然なほど立派な焼却炉。
右京は、過去の関係者からの証言を集める中で、ある仮説に辿り着く。
「平井は、不要なものは何でも焼却していた」
つまり──。
彼にとって、不要になったものは“燃やして消す”対象でしかない。
不要なモノ=焼却。
その心理が、モノから人へと転移したのではないか?
右京の言葉が鋭く胸に刺さる。
「あなたにとって、妻は“不要物”だったのではありませんか?」
ここで描かれているのは、狂気でも激情でもない。
それは、倫理なき合理主義だ。
モノを整理するように、人の命を処理する。
その思考が、刑事ドラマというフィクションを一気に現実に引き戻す。
『相棒 season16』第1話は、単なる“殺人事件の捜査”ではない。
ここにあるのは、感情を持たない人間に、どうやって罪を問うかという命題だ。
「証拠がない」「感情もない」「記録もない」──
それでも正義は成立するのか。
右京の推理は、その可能性に賭けている。
検察 vs 特命係──告発を政治利用する者たち
この回を「連続殺人の捜査劇」として観たなら、きっと見落としてしまう。
だがその裏で静かに進行していたもう一つの軸──権力闘争の舞台裏こそが、本作の“本丸”だ。
特命係が告発されたその裏には、ただの法律論では済まされない、「政治」があった。
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/検察と特命、譲れぬ戦いの行方は?\
日下部事務次官の“私怨”と、その影で動く権力構造
右京と冠城を追い詰めるために、告発状を東京地検へと通した人物──
それが、法務省の事務次官・日下部彌彦である。
彼がここで動いた理由は、正義でも改革でもない。
それは「右京さんへの個人的な恨み」という、ある意味もっとも人間的な動機だった。
過去に日下部が推していた検事(シーズン15登場の倉田映子)が、右京の推理によって辞職へ追い込まれた。
その因縁が、時を越えて“復讐”として形を変えたのだ。
つまり、今回の告発騒動は、
「検察による法の執行」ではなく、「法を使った嫌がらせ」に近い。
その命を受けて動くのが、検察官・田臥准慈。
彼の冷静かつ非情な立ち振る舞いは、「感情を持たない道具」としての優秀さを象徴している。
この構図はまさに──
権力 vs 良識、検察 vs 特命係。
そしてその闘いは、“真相解明”という名の下に進められる、もっとも巧妙な政治工作でもあった。
衣笠副総監と甲斐峯秋の駆け引きが描く“上層部の綱引き”
もう一人のキーマン、それが警視庁副総監・衣笠藤治(演:大杉漣)だ。
彼は日下部と同様、特命係という“組織の異端”を排除したい立場でありながら、政治的なバランスを常に計って動く。
そんな衣笠が仕掛けたのが、“特命係の指揮統括を甲斐峯秋に要請する”という策。
この一手に込められた意味は深い。
特命係が勝手に動いたという建前を崩し、「責任者を立てて組織の一部として縛る」という制度的な絡め手である。
一方、甲斐峯秋(演:石坂浩二)は、特命係を守る立場にある。
だが、“守る”ためには“縛られる”ことも受け入れなければならない。
これは、自由と責任、正義と統制の間に揺れるジレンマでもある。
どちらが正しいという問題ではない。
誰が「現実」を選び、誰が「理想」を貫けるか。
この上層部の“綱引き”は、事件の裏で進むもう一つの戦いだ。
青木年男の立ち位置と“裏切り者”としてのポテンシャル
そしてこの回、何気なく登場しながら、鋭い存在感を放っていたのが──
青木年男(演:浅利陽介)である。
彼は情報系のスペシャリストでありながら、心理的には“孤独と承認欲求の塊”。
今回、青木が日下部と接触する場面が描かれている。
これはただの情報連携ではない。
「特命係をよく思っていない者同士が繋がった」という描写だ。
つまり、青木は内部から崩すためのピースとして、いつでも使える立ち位置にいる。
それが今後どう活かされていくのか──
物語の“裏の主役”は、実は青木年男なのかもしれない。
第1話『検察捜査』は、「真犯人を追うドラマ」ではない。
それは同時に、“誰が味方で、誰が敵か”を見極める群像劇でもあった。
正義という名の下に、どれだけの嘘があるか。
裏切りとは、どこから始まるのか。
物語は、静かに牙を剥きはじめている。
視聴者はどこに感情を揺らされたのか?心理の伏線を読み解く
相棒を観るということは、“事件”を見ることではない。
そこに込められた“誰かの葛藤”を、自分の中に落とし込むことだ。
そして今回の『検察捜査』は、視聴者自身に「特命係を信じるか、信じないか」という選択を迫ってくる。
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「特命係は信じていいのか?」という視聴者の揺れ
「警察が脅迫した」──。
この言葉だけを聞けば、多くの人は特命係がそんなことをするはずがないと感じるだろう。
だが、相手は右京であり、冠城なのだ。
正義を貫くためなら、ルールの隙間に滑り込むような行動を、これまで何度も見てきた。
視聴者はそれを「カッコいい」と思う反面、「少し危うい」とも感じている。
だからこそ、今回のように“明確な証拠がない告発”をされると、
「もしかして……」という不安が胸をよぎる。
そしてその不安こそが、この回最大のテーマである「正義の信頼性」に直結している。
右京さんが100回“正しかった”としても、
101回目も正しいと信じられる保証は、どこにもない。
田臥の視点で語られる特命係の“輪郭”とは
今回、物語の語り口として非常に特徴的だったのが、検察官・田臥の目線で進むという構造だ。
彼は、特命係という存在に最初から懐疑的だった。
捜査権もない、命令系統にも属さない。
それでも重大事件に“入り込んでくる”彼らの存在を、「危険なアウトロー」と見ていた。
この距離感が、まさに多くの視聴者の“本音”でもある。
正義を貫く者を、応援したい。
だが、それが暴走した時のリスクも、知っている。
田臥は視聴者にとっての“鏡”のような存在として機能しており、
「あなたは本当に特命係を信じているか?」という問いを、作品を通して投げかけている。
過去シリーズで描かれてきた「正義の暴走」との接続線
今回の“告発”は、決して突拍子もない出来事ではない。
相棒というシリーズでは、これまでも何度も「正義が人を傷つける瞬間」が描かれてきた。
- シーズン7 第7話「最後の砦」では、取調室での威圧的な追及が、結果として容疑者を死に追いやった。
- シーズン10 第1話「贖罪」では、冤罪事件を起こした刑事たちの“正義の錯覚”が描かれた。
相棒の正義は、常に“ゆらぎ”と共にあった。
だからこそ、視聴者は感情を揺さぶられ、いつもその正義を“再確認”することになる。
今回の『検察捜査』では、
過去のその“揺らぎ”が告発という形で回収される。
それはまるで、これまでの特命係の在り方に対する「司法からの逆質問」のようだ。
あなたたちは、正しかったのか?
あなたたちは、越えてはいけない一線を、本当に越えていないのか?
視聴者は、右京や冠城と共に、過去の選択を思い出す。
その瞬間、ただの刑事ドラマが、“自己との対話”に変わる。
──これこそが『相棒』という物語の、真の目的なのかもしれない。
新シーズンへの布石──OP映像と演出に隠されたメッセージ
相棒の新シーズンが始まるたびに、ファンが密かに注目しているものがある。
それがオープニング映像だ。
わずか30秒ほどの演出の中に、そのシーズンの「空気」や「伏線」が詰め込まれている。
Season16も例に漏れず、明確なテーマと挑発的な映像で、私たちに語りかけてきた。
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/新シーズンの伏線は、すでに始まっていた\
“崩壊”と“再生”を象徴するOPの構成と意味
シーズン16のオープニングテーマに込められたキーワードは、
「崩壊」と「再生」──。
これは制作側が後日、公式ブログで明かした情報でもある。
今シーズンのOPのキーワードは「崩壊」と「再生」。構成は“静と動”、右京と冠城の対比を意識した演出になっている。
右京が象徴する「静」、冠城が持つ「動」。
この対比構造は、今回の物語『検察捜査』とも呼応している。
「静」の右京は信念を貫くがゆえに、時に動けない。
「動」の冠城は、自由な立ち回りがある分、制御の難しさを孕む。
この2人が出会い、信頼し合い、時に衝突しながら進んでいく様こそが、
“崩壊の後に再び築かれる相棒関係”の核心でもある。
砂漠でのビーチフラッグス、割れる硝子のメタファー
オープニング映像で最も印象的だったのが、
砂漠の中で右京と冠城がビーチフラッグスのような動きを見せるシーン。
なぜ“砂漠”なのか? なぜ“ビーチフラッグス”なのか?
それは、見えないゴールを探して走り続ける2人の姿を象徴しているように見える。
答えのない迷宮。
足元が安定しない正義の大地。
そこに旗は本当にあるのか? いや、あると信じて走るしかない──。
そんな不安定な世界観が、砂漠という空間に凝縮されていた。
さらに、映像の中で印象的に割れるガラス。
その破片が、まるで星のように瞬いて空間を包む。
これは単なる視覚的美しさではない。
“秩序の崩壊”と“その中でこそ見える真理”というメタファーだ。
壊れてこそ見えるものがある。
粉々になってこそ、光を反射する角度が増える。
正義もまた、そういうものなのだ。
冠城×右京コンビの“静と動”のコントラスト
シーズン16は、冠城亘(反町隆史)と右京(⽔⾕豊)のタッグとしては3年目に突入する。
シリーズファンの間でも「安定期」に入った印象が強いが、
このOPはその“安定”をあえて揺らがせにきている。
右京はこれまで以上に「孤高の探求者」として描かれ、
冠城は「制御不能な爆薬」として描かれる。
2人の間にある緊張感を意図的に強調しているように見えるのだ。
この表現が興味深いのは、今後の展開への“予言”になっている可能性だ。
第1話でも2人の協力体制は盤石に見えたが、過去には言い争いもあった。
そして今回のような「司法vs特命係」の構図においては、
内部対立や信頼の揺らぎが物語を左右する。
シーズン16のOPが描く世界は、「正義の継続」ではなく、
正義の危機と、その中で踏みとどまる人間の物語だ。
“崩壊”の中で、私たちは何を信じ、何を守るのか。
オープニングは、それを静かに、しかし力強く提示している。
揺らぐ信頼、黙る絆──“誰も傷つけない正義”なんて幻想だ
今回のエピソードは、明確な敵がいるようで、その実“味方の中に潜む危うさ”がじわじわ効いてくる構造になっている。
事件そのものも確かに見応えはあるけど、それ以上に心がザワつくのは、人間関係の「ズレ」や「違和感」が何気ない場面に溶け込んでいたからだ。
特命係のコンビ関係、青木の裏の顔──。
画面には映らない“火種”を拾っていくと、このシーズンが一筋縄ではいかないことが見えてくる。
右京と冠城、あの対立は本当に終わったのか?
シーズン15の最終話を覚えている人なら、心のどこかに引っかかってたはず。
右京が冠城に放った一言──「想像が及ばないのなら黙っていろ」。
冠城の返しは「右京さん、あなた何様だ」。
あのやり取り、ちょっとやそっとの衝突じゃない。
信頼の基盤が揺れる、根っこの部分を突いてる。
ところが今作『検察捜査』では、その余波が描かれる気配はない。
まるで何事もなかったように、ふたりは並んで捜査に挑んでる。
でも、本当にそうだろうか。
表向きは冷静な連携。
でもそこに“共鳴”があったかと聞かれたら、どこか淡白に映る。
本音はまだ伏せたまま、仮面の上でチームを組んでる──そんな印象もあった。
それが悪いって話じゃない。
正義を貫くってことは、仲良しごっこじゃ成立しない。
だけど、“信頼が曖昧なままの関係性”ってのは、時に最も脆くなる。
特に、今回のような「司法の中で裁かれる立場」に立たされたとき。
冠城は、右京に対して信頼と同時に、“怖れ”も持っている。
それはきっと、誰よりも正義を信じているからこそ。
でもその正義が向かう矛先が、自分の仲間にも刺さることを知っている。
だから、何も言わずに従う。
だけど、信じ切れない。
その微妙な“間”こそが、今シーズンの火種になる気がしてならない。
青木年男という“矛盾の塊”が物語を狂わせる
青木が何を考えてるか、それを正確に読み取れる登場人物はいない。
冠城も、右京も、角田も。
むしろ、青木自身も、自分を持て余してるんじゃないかと思う。
彼はかつての“ヲタク系情報屋”ポジションから少しずつ存在感を強めてきた。
だけどその裏で、“特命係を敵視する側”ともコッソリ繋がってる。
今回も、日下部と接触するという意味深な場面がある。
あのシーンにセリフはほとんどいらない。
そこに“裏切り”の匂いが漂っているだけで充分だ。
青木は、正義に失望している。
でも同時に、正義に執着している。
この矛盾こそが、彼を“爆弾”にしている。
忠誠心のフリをしているけど、いつ裏返るかわからない。
彼にとっての“正義”は、常に揺れてる。
たぶん青木は、自分が一番“被害者”だと思ってる。
だから正義なんて信じてないフリをしながら、
「それでも誰かに認めてほしい」っていう本音を抱えてる。
それが叶わなかったとき、彼はどう動くのか。
もしそれが“破壊”という形だったとしても、もう驚かない。
シーズン16第1話『検察捜査』は、“正義の形”だけじゃなく、
“信頼のかたち”も揺らがせにきてる。
正義が一人歩きするとき、人は誰かを信じきれるのか。
その問いは、これから徐々に牙を剥いてくる。
『相棒 season16 第1話「検察捜査」』全体を読み解くまとめ
1時間半に詰め込まれたのは、殺人事件の真相だけではなかった。
それは、「正義という名のもとに動く人間たちの欲望と限界」だった。
『検察捜査』という副題が示していたのは、犯人を捜す物語ではなく、“正しさ”を審査する物語だということ。
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/Season16の核心を、その目で確かめて\
二重構造の事件が浮き彫りにする「正義とは何か」
今回の第1話には、2つの事件が重ねられていた。
- 大富豪・平井陽による連続殺人事件
- 特命係に対する脅迫罪による告訴
前者は“人を裁くための捜査”。
後者は“捜査する者を裁くための司法”──。
この2つが並列的に描かれたことで、視聴者は自然と「正義とは誰のものか?」という本質に引き込まれていく。
被疑者の供述は操作されたものか。
刑事たちは本当に“脅迫”を行ったのか。
検察は正義の代弁者か、それとも政治の道具か。
浮き彫りになるのは、「善悪がグラデーションで存在する社会の中で、どう生きるか」という命題だ。
相棒という作品がずっと描き続けてきたこの問いに、
今シーズンもまた、誠実に向き合っている。
第2話「反撃」への伏線と視聴者への挑発
本エピソードは“前編”という位置づけであり、当然ながら事件はまだ解決していない。
平井陽は証言を翻し、特命係は包囲網の中。
検察官・田臥は冷静に法の網を張り巡らせ、日下部事務次官は勝利の笑みを浮かべている。
だが、右京は言う。
「真実は、必ず浮かび上がってくるものです」
その言葉の意味が、どのような形で明らかになるのか──。
第2話「反撃」というサブタイトルが示している通り、
ここからの展開は「受け」から「攻め」へと転じる。
視聴者への挑発はすでに始まっている。
「あなたは、今の特命係を信じられるか?」
今シーズンが描こうとする“司法の危うさ”への序章
Season16は、すでに明確なテーマを掲げて走り始めている。
それが、「司法という正義が持つ、暴力性と脆さ」だ。
法律を使えば、人を殺さずに人を殺せる。
正義を名乗れば、悪を装って真実を壊せる。
日下部や田臥が象徴するのは、その危うい“制度の落とし穴”だ。
右京が本当に闘っているのは、犯罪者ではない。
その正義の名のもとに、人を裁こうとする者たちの「論理」と闘っているのだ。
これは刑事ドラマの皮をかぶった、現代社会への問いかけだ。
“正義”が使い捨てられる世界で、あなたは何を信じるのか。
Season16──始まりからして、重く、深く、そして鋭い。
このシリーズがまた「社会の鏡」として、私たちに問いを投げかけてくれることを、心から歓迎したい。
右京さんのコメント
おやおや……実に含蓄のある構造を持つ事件でしたねぇ。
一つ、宜しいでしょうか?
この事件の核心は、連続殺人のトリックや動機ではなく、“正義を振るう側”が、どこまで正しくあれるかという点にあるように思います。
被疑者を追い詰めた手段が「脅迫」に該当するのではないか──
法を守るべき者が、その法の網に絡め取られるという皮肉。
しかしながら、それを仕掛けたのが私怨に基づく政治的な検察権力であったという事実。
なるほど。そういうことでしたか。
つまりこれは、正義の仮面を被った復讐劇でもあったのです。
いい加減にしなさい!
自らの恨みを“制度”という盾で飾り立て、正論の装いで人を排除する──
そんな行為は、法治国家における“偽善”であり、感心しませんねぇ。
結局のところ、“正しさ”とは絶対ではありません。
だからこそ我々は、常に己の正義を問い直さねばならないのです。
今朝は、アッサムとディンブラのブレンドにしてみたのですが…少し濃いめの味わいが、今回のような重たい事件にはよく合いました。
さて、次はどんな理不尽が待ち受けているのでしょうか──楽しみですねぇ。
- Season16の幕開けは、正義が揺らぐ“告発劇”
- 特命係が違法捜査で告訴される前代未聞の展開
- 大富豪による妻連続殺人と司法の罠が二重構造に
- 焼却炉と“不要なもの”という心理の伏線が秀逸
- 検察官・田臥と日下部の“政治的正義”が特命を追い詰める
- 信頼関係のゆらぎと、青木の裏の顔が物語に不穏な影を落とす
- OP映像は「崩壊と再生」をテーマに、今期の象徴を演出
- 相棒の正義は“正しさ”ではなく、“信じられるか”を問う
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