ボーダレス第8話ネタバレ感想 クリーナーに全部持っていかれた

ボーダレス
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『ボーダレス~広域移動捜査隊~』第8話、いきなり話が転がりすぎて、こっちの首が置いていかれる回だった。

誘拐、身代金、一番星、メカ爺、赤瀬兄弟、警察のクリーナー。これまで散らかしてきたものを回収するどころか、さらに床へぶちまけてくる力技。

ただ、筒井道隆の声だけはずるい。あんなに悪いことしてそうなのに、声がまだ人を信じさせようとしてくる。そこが一番タチ悪い。

この記事を読むとわかること

  • 『ボーダレス』で赤瀬心悟が「クリーナー」と呼ばれる意味
  • メカ爺の誘拐が金目的ではなかった理由
  • 天尾美青の裏切り告白が物語に落とした重み
  • 一番星が捜査車両ではなく「牢屋」に見えてくる構図
  • 官僚射殺と桃子被弾が示す警察内部の闇
  • 筒井道隆の静かな悪役演技が怖く見える理由
  • 最終回へ向けて赤瀬兄弟と一番星がどう動くのか

赤瀬兄の「クリーナー」で空気が一気に腐った

赤瀬心悟が出てきた瞬間、事件の景色が変わった。

誘拐犯がどうこう、人質がどうこう、身代金がどうこう、そんな表の騒ぎが一段下へ沈んで、いきなり警察組織のドブ底が見えてくる。

しかも呼び名が「クリーナー」。掃除屋。嫌な言葉だ。正義の看板を掲げた組織の中で、汚れを落とすんじゃなく、汚れを見た人間ごと消すやつの匂いがする。

ただの黒幕じゃなく、警察の汚れ仕事そのものだった

赤瀬心悟が怖いのは、いかにも悪党みたいにギラつかないところだ。

声は柔らかい。顔も荒れていない。怒鳴り散らすわけでもない。だからこそ気持ち悪い。あの手の人間は、自分のやっていることを悪事だと認識していない顔をする。組織を守るため、秩序を守るため、必要な処理だった。そんな理屈をスーツの内ポケットに入れて、平気で人を追い込む。

金城、館林、実相寺という警察官僚の名前が出てきた時点で、事件は単なる誘拐から完全に別物になった。

人質を取った犯人を追う刑事ドラマだったはずが、気づいたら警察の中にいる掃除屋をどう暴くかという話へ変質している。しかもその掃除屋が赤瀬則文の兄。ここが嫌らしい。外から来た巨悪ならまだ戦いやすい。だが身内の血が絡んだ時点で、赤瀬課長は正義だけで走れなくなる。

ここが一番えげつない。

「クリーナー」という言葉は、悪を裁く人間ではなく、悪が表へ出ないように現場を拭き取る人間を指している。

つまり赤瀬心悟は事件の黒幕というより、事件が事件として残らないようにする装置だ。

メカ爺が「兄の不正を最初に知った」という筋も強い。

この一言で、緑川宗一郎がただの老刑事でも、ただの変人でもなくなる。撃たれた過去、公安か捜査かもわからないような陰の仕事、そして赤瀬心悟への執念。全部が一本の線になる。メカ爺は狂ったのではない。消されかけても、まだ掃除されずに残ってしまった証拠だった。

「クリーニングされた」で赤瀬課長の左遷までつながる

赤瀬則文が一番星にいる理由も、ようやく別の色を帯びてくる。

広域移動捜査隊という響きだけなら、自由に動ける特殊部隊みたいに聞こえる。だが赤瀬の口から「閉じ込められた」という感覚が出てきた途端、一番星は急に牢屋になる。走れるのに逃げられない。現場には行けるのに核心には触れられない。こんな皮肉、なかなか性格が悪い。

赤瀬課長は、与党政治家の贈収賄を追い、金の流れをたどった先で兄にぶつかった。

そこから聴取したいとなった瞬間、移動捜査課へ飛ばされる。表向きは異動。実態は排除。これが赤瀬の言う「俺もクリーニングされた」だ。撃たれたメカ爺のように血は流れていない。だが刑事としての牙は抜かれている。殺さずに殺す処理が一番きつい。

.一番星って移動捜査の象徴みたいな顔をしていたのに、実は赤瀬課長を飼い殺す箱だったのかよ。急に車内の空気が重すぎる。窓を開けても逃げ場がないやつだ。.

ただ、ここで少し引っかかるのは、ドラマの持っていき方があまりにも荒いところだ。

赤瀬兄が警察のクリーナーで、メカ爺がそれを知り、赤瀬課長も左遷され、官僚たちには口封じが迫る。材料は全部うまい。なのに出し方が一気に丼へぶち込まれる。天丼、カツ丼、親子丼を同じ器に盛って「豪華だろ」と言われている気分になる。いや、具は強い。強いが、胃袋が追いつかない。

  • 赤瀬心悟は、警察内部の不正を消す側の人間だった。
  • メカ爺は、その不正を知ったことで撃たれた過去を持つ。
  • 赤瀬課長は、兄へ近づいたことで一番星へ飛ばされた。
  • 一番星は自由な捜査車両ではなく、赤瀬を核心から遠ざける檻にも見える。

それでも、赤瀬兄の存在で物語の芯がやっと見えたのは大きい。

これまでの事件がバラバラに見えていたぶん、「クリーニング」という言葉で一気に嫌な統一感が出た。警察が正義を守る場所ではなく、正義を邪魔なものとして磨り潰す場所になっている。だからメカ爺は誘拐という暴発に走った。だから赤瀬課長は一番星で燻っていた。だから天尾美青の裏切りまで、組織に利用された人間の弱さとして刺さってくる。

赤瀬心悟は、派手な悪役ではない。

人を消す時に手袋をはめ、報告書の言葉まで整えてくるタイプの悪だ。だから腹が立つ。だから筒井道隆の静かな声が余計に怖い。あの誠実そうな声で「必要なことだった」と言われたら、現場の刑事たちが何人も潰されてきた景色まで見えてしまう。

メカ爺の誘拐は金目当てじゃなかった

緑川宗一郎の誘拐劇は、身代金目当ての犯罪として見ると穴だらけだ。

だが、あれを警察内部への告発として見ると、急に嫌な筋が通ってくる。

問題は、筋が通っているから許せるかというと、まったく別の話だということだ。

人質事件に見せかけた告発という面倒くさい爆弾

メカ爺は、金が欲しくて人質を取ったわけじゃない。

ここが分かった瞬間、事件の温度が変わる。

身代金目的の誘拐なら、犯人は欲望で動いているだけだが、メカ爺の場合は怨念と正義感と復讐心がぐちゃぐちゃに混ざっている。

だから厄介だ。

金で終わる事件ではなく、警察の中に隠された腐敗を無理やり表へ引きずり出すための事件になっている。

犯人との通話が一番星の近くから発信されていたことを天尾美青が突き止め、緑川のもとへ単独で向かった流れも、ただの捜査ではなく、真相の入り口へ手を突っ込む動きだった。

天尾が「犯人と人質はここにいるのか」と迫った時、緑川はすぐに否定で逃げない。

むしろ「一人で来たのか」「犯人が二人以上いたら危険だ」と返す。

これ、犯人の台詞としては妙に変だ。

脅す側のくせに、相手の危険を気にしているようにも見える。

つまり緑川は、自分を完全な悪党として演じ切れていない。

人を巻き込んでいるのに、人を壊す側へ完全には落ちきっていない。

そこが腹立たしくもあり、同時に悲しくもある。

メカ爺の狙いはここだ。

誘拐事件を起こして警察を動かし、赤瀬心悟という「消す側」の存在を赤瀬則文たちに見せる。

ただし、そのために人質を使っている時点で、正義の告発ではなく、壊れた人間の強行突破になっている。

緑川が「仲間じゃない、同志だ」と言うのも重い。

ただの犯罪グループなら、仲間でいい。

だが「同志」と呼ぶことで、あいつらは自分たちを犯罪者ではなく、同じ敵を見据えた戦友だと思っていることが分かる。

ここが一番面倒くさい。

自分たちは間違っていない、自分たちは目を覚まさせようとしている、自分たちは掃除された側の声を届けている。

そう信じ込んだ人間は、ブレーキを踏まない。

同志という言葉が重いのに、やってることは物騒すぎる

緑川のやっていることは、感情としては分かるが、手段としては完全にアウトだ。

赤瀬心悟に撃たれ、警察内部の闇を見て、それでも誰にも届かない。

まともに告発しても揉み消される。

だから一番星を巻き込み、赤瀬則文を揺さぶり、事件という形にして表へ出した。

理屈は分かる。

だが、そのために人質を取ったら終わりだ。

正義を叫びながら、関係ない人間の人生を担保にしている

ここを曖昧に美談へ寄せたらダメだ。

緑川は被害者でもあるが、同時に加害者でもある。

その両方を抱えたまま北大路欣也が立っているから、ただの頑固爺さんでは終わらない。

目は静かなのに、やってることはめちゃくちゃ。

声に年輪があるぶん、余計に「もう引き返せない人間」の迫力が出てしまう。

.「同志だ」って言葉はかっこよく聞こえるけど、人質を取った時点でだいぶ泥まみれだ。正義の旗を掲げているつもりでも、その旗の棒で他人を殴っている。そこを忘れたらただの自己陶酔になる。.

増田と根本が銃を向け、緑川を逮捕する場面も、妙に苦い。

普通なら「犯人確保」でスカッとするところだが、ここではそうならない。

緑川を捕まえても、事件の根は残っている。

むしろ緑川は、根っこを掘り返すためにわざと自分を見つけさせたようにすら見える。

だから逮捕の瞬間に勝利感がない。

あるのは、もっと大きな爆弾の導火線に火がついた感覚だけだ。

一番星へ連れてこられた緑川が取り調べで語る「同志」という言葉。

あれは仲間意識ではなく、警察に消された側、警察に飼い殺された側、警察の正義をまだ諦めきれない側の呻きだ。

ただし呻きが大きすぎて、周囲を巻き込む爆発になっている。

ここがメカ爺という人物の一番しんどいところだ。

同情できる過去を持っているのに、同情だけでは済ませられない現在を選んでいる

だから見ていてモヤつく。

でも、そのモヤつきこそが、この誘拐劇の芯だった。

天尾美青の裏切り告白は遅いが悪くない

天尾美青の告白は、タイミングだけ見れば遅い。

仲間面して一番星に乗り込み、赤瀬則文を監視し、赤瀬心悟へ情報を流していた。

ただ、その裏切りが単なる小悪党ムーブで終わらなかったのは、美青自身がちゃんと痛んでいたからだ。

出世のために仲間を売った女が、仲間で揺れる

美青が赤瀬心悟の指示で赤瀬課長を監視していたという告白は、なかなか生々しい。

捜査一課へ行けるなら友達もいらない、結婚もしない。

その思考、きれいごと抜きで言えば分からなくもない。

刑事として上へ行きたい、認められたい、所轄でくすぶって終わりたくない。

そういう焦りを抱えた人間の前に、警察官僚が「キャリアの道」をちらつかせてくる。

そりゃ揺れる。

正義感だけで飯は食えないし、努力だけで道が開けるほど組織は甘くない。

だが、そこで赤瀬課長を売った時点で、美青は自分の刑事としての芯を一度へし折っている。

出世したいから仲間を監視する

この選択は、刑事ドラマの裏切りとしては派手ではないが、妙に現実の嫌さがある。

金に目がくらんだわけでも、脅迫されたわけでもない。

自分の夢を叶えるために、自分で仲間を差し出した。

だからこそ逃げ道がない。

美青の裏切りが刺さる理由

悪意で裏切ったのではなく、上へ行きたいという欲で裏切ったところだ。

夢や努力というきれいな言葉の裏側に、他人を踏み台にする冷たさが混ざっている。

それでも美青が完全に終わっていないのは、一番星の中で本当に仲間を得てしまったからだ。

最初は任務だった。

赤瀬課長を監視するための配置だった。

だが、根本や増田たちは美青を疑いの目だけで見なかった。

認めてくれた。

居場所を与えた。

それが美青の中の計算を狂わせる。

人間は、自分が裏切っている相手に優しくされると一番きつい。

責められるより痛い。

殴られるより逃げ場がない。

美青の「仲間ができました」という言葉には、裏切り者が今さら何を言っているんだという苛立ちと、それでも本当に苦しかったんだろうなという苦味が同時にある。

優香の静かな追い詰められ感が今回いちばん効いていた

優香の芝居が良かったのは、大げさに泣き崩れなかったところだ。

美青は派手に感情を爆発させるタイプではない。

ずっと抑えて、飲み込んで、冷静な顔をして、でも内側では自分がやったことの重さに削られている。

緑川の前で「私は裏切り者です」と言う場面は、懺悔というより自白に近い。

誰かに許してほしいというより、もう自分で抱えていられなくなった人間の吐き出し方だった。

ここで美青が赤瀬心悟のことを「なぜ赤瀬課長を憎んでいるのか」と聞くのもいい。

出世のために利用されていた女が、ようやく命令の外側から事件を見始めている。

監視対象だった赤瀬課長を、ただの対象ではなく、仲間として見てしまった。

ここが美青の遅すぎる覚醒だ。

.美青、遅い。めちゃくちゃ遅い。でも、ここで黙ったまま安全圏に戻らなかっただけまだマシだ。裏切り者が一番ダサいのは、裏切ったあと被害者みたいな顔で逃げることだからな。.

もちろん、美青の告白ですべてが帳消しになるわけではない。

赤瀬課長の監視に加担していた事実は消えない。

一番星の仲間たちを裏切っていた時間も戻らない。

だが、緑川の前に一人で踏み込んだことで、美青は初めて自分の足で選び直した。

赤瀬心悟の命令でもなく、出世のためでもなく、仲間を裏切った自分を終わらせるために動いた。

緑川がハンマーを持って迫る中で、「仲間ができた」と言い切る姿には、きれいな正義ではなく、泥をかぶった人間の意地があった。

裏切り者が仲間という言葉に救われ、同時にその言葉で裁かれる

美青の場面は、そこが一番おいしい。

このドラマ、話の転がし方はかなり荒い。

だが、美青の告白だけは、組織に利用された人間が、自分の弱さをやっと直視する場面としてちゃんと残った。

許されるかどうかは別だ。

それでも、ここで黙っていなかった美青は、ただのスパイ役から少しだけ人間に戻った。

急展開がすぎて、もはや何でもあり

終盤の畳みかけ方が、もう情報のダンプカーだった。

警察官僚の不正、クリーナー、左遷、同志、狙撃、桃子被弾。

ひとつずつ出せば相当おいしい材料なのに、まとめて鍋へ突っ込んで強火で煮立たせてくるから、見ている側は箸を持つ前に火傷する。

官僚が撃たれ、桃子まで撃たれるセミファイナルの暴力

金城、館林が射殺され、実相寺も一番星へ逃げ込もうとしたところで撃たれる。

ここは完全に「警察の中にいる黒い力」が牙をむいた場面だ。

都合の悪い人間を消す。

証言される前に消す。

守るべき組織が、自分の汚れを守るために人を撃たせる。

この構図自体はかなり強い。

クリーナーという言葉が、比喩ではなく本当に人間を処分する意味へ変わったからだ。

ただ、展開の速度が速すぎる。

金城と館林が消され、実相寺が逃げ、メカ爺が一番星を指定し、迎え入れようとした瞬間に狙撃。

そして桃子まで撃たれる。

いや、待て。

こっちはまだ赤瀬兄の悪さを飲み込んでいる途中だ。

そこへ官僚の死体と桃子の被弾を同時に投げ込まれても、感情の置き場がない。

ドラマとしては大事件を起こしているのに、情報量が多すぎて一つひとつの重みが逃げてしまう。

桃子が撃たれる場面なんて、本来ならもっと胸をえぐれるはずだ。

だが周囲で起きていることが大渋滞していて、「え、今そこまでやるのか」という驚きが先に来る。

終盤に詰め込まれた爆弾

  • 赤瀬心悟が警察のクリーナーと呼ばれていた。
  • 官僚たちに口封じの命令が出ていた。
  • 実相寺が一番星へ逃げ込もうとして撃たれた。
  • 狙撃の流れで桃子まで被弾した。

材料だけ並べると全部強い。なのに同時に来すぎて、ごちそうというより大食い大会になっている。

とはいえ、桃子が撃たれた意味は軽くない。

桃子は一番星の中でも、視聴者に近い場所にいる人物だ。

異様な事件や濃すぎる人間関係の中で、まっすぐ驚き、まっすぐ怒り、まっすぐ動く。

その桃子に弾が当たることで、警察内部の腐敗がただの会議室の悪巧みではなく、現場の若い刑事の体を貫く暴力だと分かる。

組織の上で決められた隠蔽が、下で働く人間の血になる

ここはかなりえぐい。

機動隊に囲まれているのに一番星へ逃げろは無茶すぎる

それにしても、一番星へ逃げ込めという指示は無茶だ。

外は警察に囲まれている。

狙撃手も動いている。

官僚たちは次々と消されている。

そんな状況で「一番星へ来い」は、普通に考えれば安全ルートではなく処刑台への案内に見える。

メカ爺にとって一番星は、赤瀬則文を目覚めさせる場所だったのかもしれない。

赤瀬課長が閉じ込められた牢屋であり、同時に真相を暴く最後の砦。

だから実相寺を呼び込む意味は分かる。

分かるが、作戦としてはガタガタだ。

相手は警察内部のクリーナーで、射殺まで平気でやる。

そんな連中相手に、一番星へ近づけば助かるという発想は、かなりロマン任せだ。

.一番星へ逃げろって、逃げ道なのか罠なのか分からんのよ。もはや安全地帯じゃなくて、全員集合させてまとめて撃たれる舞台に見える。車両というより、火薬庫だ。.

でも、このめちゃくちゃさが妙に嫌いになれないのも事実だ。

細かく整った物語ではない。

伏線を繊細に拾い、心理を丁寧に積み上げるタイプでもない。

むしろ、隠蔽だ、狙撃だ、裏切りだ、兄弟だ、牢屋だ、と大声で札を叩きつけてくる。

乱暴だ。

かなり乱暴だ。

だが、その乱暴さの中に「警察という正義の箱が腐ったら、現場の人間はどこへ逃げるんだ」という芯はある。

一番星に逃げても撃たれる。

組織に残っても消される。

告発しても潰される。

なら戦うしかない。

整合性より勢いで最終局面へぶっ込む荒業

上品ではないが、退屈ではない。

そこだけは認めざるを得ない。

筒井道隆の悪役は声が誠実だから怖い

赤瀬心悟の怖さは、怒鳴らないところにある。

悪党のくせに、声がやたら柔らかい。

人を追い詰める側の人間なのに、話し方だけはまともな大人の顔をしている。

悪い顔をしなくても悪人に見える絶妙な薄気味悪さ

筒井道隆が演じる赤瀬心悟は、分かりやすい悪役の記号をあまり背負っていない。

眉間にしわを寄せて恫喝するわけでもないし、狂ったように笑うわけでもない。

むしろ、普通に会議室へ入ってきて、普通に名刺を受け取り、普通に状況を整理しているように見える。

だからこそ怖い。

赤瀬心悟は、悪事を悪事として処理していない顔をしている

不正を隠すのも、邪魔者を飛ばすのも、口を開きそうな官僚を消すのも、本人の中では組織を保つための業務なのだろう。

こういうタイプの悪は、ナイフを振り回す悪よりずっと厄介だ。

なぜなら、自分を正義側だと思い込んでいる可能性が高いからだ。

赤瀬則文を一番星へ飛ばした件も、兄弟喧嘩の延長ではない。

弟だから甘くしたのではなく、弟だからこそ一番扱いやすい形で封じた。

殺さず、壊さず、だが本丸へは近づけない。

これは優しさではない。

血のつながりまで利用した、きわめて冷たい処理だ。

.筒井道隆、声がずるいんだよな。悪いことを言っているのに、声だけ聞くとまだ信じたくなる。そこが一番危ない。詐欺師もクリーナーも、たぶん怒鳴るやつより優しく話すやつのほうが怖い。.

まだ上に別のクリーナーがいても驚かない

赤瀬心悟が警察のクリーナーと呼ばれているなら、当然その上に「汚れを出す側」がいる。

掃除屋だけが存在するわけがない。

掃除を命じる人間、掃除された後に得をする人間、掃除が終わった現場を何食わぬ顔で歩く人間がいる。

赤瀬心悟ひとりを捕まえたところで、全部が終わるとは思えない。

むしろ、心悟自身も巨大な組織の部品に見える。

クリーナーが一人だけなら事件、何人もいるなら仕組みだ。

そして今回見えてきたのは、まさに仕組みの気配だった。

与党政治家の贈収賄、警察官僚への口封じ、赤瀬課長の左遷、メカ爺への発砲。

これだけのことを一人の官僚が勝手に回していたなら、それはそれで警察どうなってんだという話になる。

だから赤瀬心悟はラスボスに見えて、実は中間管理職の化け物かもしれない。

上から降ってくる汚れ仕事を、下へ血を流しながら処理する男。

その無機質さを筒井道隆がやるから、妙な現実味が出る。

悪の顔芸ではなく、組織人の顔で人を消す。

ここが強い。

赤瀬心悟の怖さはここにある。

派手な狂気ではなく、正しい手続きの顔をした暴力。

書類を整え、人事を動かし、証言者を消し、最後に何もなかったことにする。

だから、赤瀬則文との兄弟対決にも単なる感情のぶつかり合い以上の重さがある。

弟は刑事として真相を追う。

兄は官僚として真相を消す。

同じ警察にいながら、二人はまったく逆の方向へ進んでいる。

守るために暴く弟と、守るために隠す兄

この対比がはっきりしたことで、赤瀬兄弟の因縁はようやく熱を持った。

ただし、ここまで来たら中途半端な決着では困る。

兄が少し反省して終わるような生ぬるい掃除では足りない。

赤瀬心悟の静かな悪がどこまで深く組織に根を張っているのか、そこまで見せないと、この腐った空気は晴れない。

ボーダレス第8話ネタバレ感想まとめ|勢いだけで最終回へ突っ込んできた

ここまで来ると、きれいに風呂敷を畳む気なんて最初からなかったのではと疑いたくなる。

でも、その雑なほどの勢いに妙な中毒性がある。

クリーナー、裏切り、狙撃、一番星の正体まで、全部まとめてぶん投げてきた。

話はめちゃくちゃ。でも見せ場だけは妙に強い

冷静に考えると、かなりめちゃくちゃだ。

誘拐事件を追っていたはずが、いつの間にか警察官僚の不正、政治家の贈収賄、赤瀬兄弟の因縁、メカ爺の復讐、天尾美青の裏切りまで全部つながってくる。

しかも終盤で金城と館林が撃たれ、実相寺も一番星へ逃げ込む直前に狙撃され、桃子まで弾を食らう。

普通なら三話くらい使って処理する材料を、まとめて口の中へ押し込まれた感じだ。

噛めない。

飲み込めない。

でも味だけは濃い。

整合性は荒いのに、場面ごとの引きだけはやたら強い

ここが厄介だ。

赤瀬心悟が「クリーナー」と呼ばれていたことで、警察組織そのものの腐り方が見えてくる。

赤瀬則文が一番星に閉じ込められていたという告白で、あの車両の意味がひっくり返る。

天尾美青の裏切りも、出世欲で仲間を売った女が、仲間という言葉に今さら刺される展開になった。

ひとつひとつは強い。

ただ、配置が荒い。

高級食材を鉄板へ全部落として、火力最大で焼いているようなものだ。

焦げている。

でも匂いはうまい。

結局いちばん刺さったのはここだ。

一番星は自由に走る捜査車両ではなく、赤瀬課長を本丸から遠ざけるための檻だった。

その檻に、仲間も、裏切り者も、告発者も、狙撃の弾丸も全部集まってくる。

移動する場所なのに、誰も逃げられないという地獄が濃かった。

最終回は一番星が走るのか、爆ぜるのか、もう読めない

最終回へ向けて気になるのは、赤瀬心悟ひとりを倒して本当に終わるのかという点だ。

赤瀬心悟はたしかに悪い。

クリーナーとして不都合なものを消し、弟を左遷し、警察内部の汚れを見えない場所へ押し込んできた。

だが、あの男ひとりで全部を動かしていたとは思えない。

クリーナーがいるなら、掃除を頼む人間もいる

政治家の金、警察官僚の口封じ、組織の保身。

赤瀬心悟を捕まえても、さらに上の誰かが「ご苦労」と言って新しい掃除屋を出してきそうな嫌な気配が残っている。

そこまで描くのか、それとも赤瀬兄弟の決着へ絞るのか。

どちらにしても、桃子が撃たれた以上、一番星の面々がただでは済ませない流れになっている。

機動隊に囲まれ、狙撃手が潜み、メカ爺の告発が火を噴き、赤瀬課長が兄と向き合う。

もう捜査というより決戦だ。

.一番星、もう普通に走って終われる空気じゃない。ここまで来たら突っ込むか、撃たれるか、爆ぜるかだ。安全運転で最終回へ行ったら逆にびっくりする。.

正直、物語の緻密さで勝負している作品ではない。

だが、強引にでも視聴者を振り落とさず最終局面へ連れていく腕力はある。

赤瀬心悟の静かな悪、北大路欣也の老いた執念、井ノ原快彦の閉じ込められた正義、優香の遅すぎる告白。

役者の顔で強引な脚本をねじ伏せている瞬間も多い。

めちゃくちゃだが、退屈ではない

これが一番しっくりくる。

最終回で全部がきれいに片づくとは思えない。

むしろ多少散らかったままでもいいから、赤瀬兄の薄気味悪い掃除理論を、一番星の連中が泥まみれでぶち壊してくれればそれでいい。

この記事のまとめ

  • 赤瀬心悟の正体は警察のクリーナー
  • メカ爺の誘拐は金目的ではなく告発
  • 天尾美青の裏切りと覚醒が描かれる
  • 一番星は自由な車ではなく赤瀬の檻
  • 官僚射殺と桃子被弾で最終局面へ
  • 筒井道隆の静かな悪役ぶりが不気味
  • 荒い展開ながら見せ場の強さが残る

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