『ボーダレス』最終話のネタバレ感想。
一番星、狙撃犯、警察庁の黒幕、そして桃子と蕾の結婚目前エンドまで、全部盛りにした結果、良くも悪くも最後まで暴走していた。
トンデモ設定のまま最終回まで突っ切った潔さはある。
ただし、刑事ドラマとして納得できたかと言われたら、そこは首をかしげるしかない。
- ボーダレス最終話のネタバレ感想
- 一番星頼みで突っ切った結末の評価
- 桃子・蕾・黒幕まわりの雑さと続編匂わせ
ボーダレス最終話は最後まで一番星頼みだった
『ボーダレス』の最終話、結局いちばん強かったのは刑事の推理でも、組織の正義でも、警察庁の権力でもない。
最後に全部をぶち破ったのは一番星だった。
いや、そこにワクワクがなかったとは言わない。
ただ、刑事ドラマの顔をして始まった物語が、最後は巨大車両で森をなぎ倒す方向へ突っ走るのだから、こっちの感情もシートベルトなしで揺さぶられる。
狙撃犯を追う話なのに、最後はトラック突進で押し切る
桃子が撃たれ、警察内部に狙撃犯がいるかもしれないという緊迫感が走る。
弾丸は警察が使うものだと判明し、射撃の強化選手という線から桂田へたどり着く流れも、設定だけ見ればかなり物騒で面白い。
警察官が警察官を撃つのか、いや警察官でありながら現場の捜査官ではない人間もいる、という会議の理屈も、強引ながらドラマとしては飲み込める。
問題は、その先だ。
狙撃訓練場に向かい、白鳥が撃たれ、美青にも弾がかすめ、須黒の足まで撃たれる。
ここまでは「誰がどこから撃っているのか」という緊張で引っ張れるはずだった。
なのに最後の決着が、蕾が一番星を走らせてスナイパーに突っ込むという、ものすごく物理的な解決に着地する。
銃撃戦の怖さより、トラックの馬力のほうが勝つ世界。
これはもう刑事ドラマのカタルシスではなく、装甲車バトルの気持ちよさに近い。
スナイパーが狙いを定め、発砲しても止まらない一番星。
木々をなぎ倒して迫るあの絵面は、冷静に考えたら笑ってしまうくらい無茶苦茶なのに、映像としては妙な迫力がある。
だから余計に困る。
つまらないわけではない。
むしろ勢いだけなら見てしまう。
ただし、犯人を追い詰める知恵や捜査の積み上げより、最後に勝つのが車体の強さなのは、さすがに乱暴すぎる。
ここで引っかかったポイント
- 狙撃犯の怖さを描いた直後に、トラック突進で空気が変わりすぎる。
- 刑事たちの総力戦より、一番星の突破力が目立ちすぎる。
- 「移動捜査本部」という設定が、最終的に「動く武器」みたいになっている。
最初から一番星で突っ込めばよかった問題
ここでどうしても頭をよぎるのが、それなら最初から一番星で突っ込めばよかったんじゃないの問題だ。
白鳥が撃たれ、美青が危険にさらされ、須黒まで足を撃たれてから、ようやく蕾が一番星を動かす。
ドラマとしては仲間が傷つき、限界まで追い込まれた末の反撃にしたかったのだろう。
だが視聴者の目には、あのトラックがあまりにも強そうに見えすぎている。
SATに囲まれても存在感を失わず、サイレンを鳴らして走り出し、地下駐車場への逃走にも絡み、最後は森まで突き破る。
もはやただの車両ではない。
一番星が出てきた瞬間、だいたい何とかなる空気が漂ってしまう。
刑事たちが傷だらけで走り回るより、運転席に座ってアクセルを踏んだほうが早いのではないかと考えてしまった時点で、物語の緊張感は少し壊れる。
もちろん、警察ドラマに現実だけを求めるつもりはない。
移動捜査本部という設定自体が、最初からかなり派手な嘘でできている。
だが、嘘には嘘のルールがいる。
一番星がどこまで頑丈で、どこまで自由に動けて、どういう制限があるのか。
そこを曖昧にしたまま切り札として使い続けると、視聴者は「それ、もう何でもありじゃん」となる。
刑事ドラマというより巨大車両ヒーローものに近い
一番星という設定は、正直かなり魅力的だった。
現場に捜査本部ごと移動するという発想は、地方も県境も管轄も飛び越える『ボーダレス』というタイトルに合っている。
車内で会議をし、刑事たちがぶつかり合いながら事件に向かう構図も、うまく転がればシリーズものの武器になったはずだ。
だが最終話では、その魅力が少し違う方向に爆発した。
一番星は捜査の拠点というより、正義の巨大ロボの発進基地みたいな存在になっている。
サイレンを鳴らして走り出すだけで空気が変わり、敵の包囲も、狙撃も、組織の圧力も、まとめて踏み越える。
刑事たちの信念を乗せた車両というより、脚本の無理を運ぶ車両になってしまった。
そこが惜しい。
トンデモ設定は悪くない。
むしろ今の刑事ドラマで、ここまで堂々と変なことをやる度胸は嫌いじゃない。
ただ、トンデモを成立させるには、どこかに一本だけリアルな杭を打っておく必要がある。
人が撃たれた痛み、警察組織が腐る怖さ、仲間を守れなかった悔しさ。
そこをきっちり重く描いたうえで一番星が走るなら、熱い。
でも今回は、重さを積む前にアクセルを踏み込んだ感じが強い。
だから見終わったあとに残るのは、感動よりも「なんだったんだ今の」という妙な疲労だ。
それでも、一番星が森へ突っ込むあの絵だけは忘れられない。
良い意味でも悪い意味でも、最後までこのドラマの主役は一番星だった。
桃子の病院抜け出しが雑すぎる
桃子が撃たれた衝撃は、本来なら最終局面の緊張を一気に引き上げる爆弾だった。
蕾の目の前で倒れた桃子、その命がどうなるのか、誰が撃ったのか、なぜ彼女が狙われたのか。
そこに物語の重さを乗せられたはずなのに、病院を抜け出す流れで一気に現実味が吹き飛んだ。
オンラインで話せるなら抜け出す必要がない
桃子が病院を抜け出して一番星にやって来る場面、気持ちはわかる。
自分を撃った人物の手がかりを伝えたい。
仲間たちが危険な場所へ向かう前に、少しでも役に立ちたい。
蕾のそばにいたい。
ドラマ的には全部わかる。
ただ、問題はそこではない。
桃子はオンラインで会議に参加できる状態だった。
ならば、わざわざ病院を抜け出す必要がどこにあったのか。
「狙撃犯はピアスをしていた」という情報なら、画面越しでも言える。
医師や看護師に止められながら、点滴を引きちぎるようにして飛び出すほどの内容ではない。
撃たれた直後の人間が動くなら、それ相応の切迫した理由がいる。
例えば犯人が病院内にいる、通信が傍受されている、桃子本人しか確認できない証拠が一番星にある。
そこまで用意されていれば、無茶でも飲み込める。
だが実際は、情報伝達のために移動したように見えてしまう。
その瞬間、桃子の行動は勇気ではなく、脚本上の都合に見えてしまうのだ。
桃子の行動で引っかかるところ
- 撃たれた直後なのに、病院から抜け出す体力がありすぎる。
- 伝えたい情報が、オンラインでも成立する内容だった。
- 一番星周辺の警戒が厳しいはずなのに、出入りの緊張感が薄い。
SAT包囲中なのに出入りできる一番星の謎
一番星はSATに包囲されていた。
突入寸前の空気があり、警察内部でも移動捜査課を潰す流れができていた。
ここは本来、逃げ場のない密室に近い状況のはずだ。
なのに、桃子が入ったり出たりできてしまう。
蕾も戻ってくる。
根本も天尾たちを逃がす。
赤瀬則文たちは会議を開き、関係者も続々と入ってくる。
包囲とは何だったのか。
一番星が鉄壁なのか、警備がザルなのか、その境目がぐちゃぐちゃになっている。
SATが本気で突入しようとしている場所なら、人ひとりの出入りにもっと緊張が走るはずだ。
桃子が現れた瞬間に銃口が向くとか、蕾が彼女をかばって怒鳴るとか、赤瀬側の命令系統が乱れるとか、そこを描けば場面に血が通う。
だが、結果だけ見ると「来たい人は来られる一番星」になっている。
移動捜査本部という設定の面白さは、閉じ込められた車内で刑事たちが情報をぶつけ合うところにもあったはずだ。
ところが出入りのルールが曖昧になると、密室感も包囲感も薄れる。
敵に囲まれているのに、なぜか会議室だけは普通に使える。
このチグハグさが、最終話の緊張をじわじわ削っていった。
撃たれた直後の人間にしては動きが強すぎる
桃子は強い。
それはずっと描かれてきた。
ただ、強い刑事と、撃たれても普通に動ける人間は別物だ。
銃撃を受けた直後の桃子が病院を抜け出し、手がかりを伝え、蕾に付き添われてまた病院へ戻る。
この一連の流れがあまりにも軽い。
命を落としてもおかしくない状況だったはずなのに、物語が彼女の負傷を都合よく使っているように見えてしまう。
撃たれた痛みが、展開を動かす小道具になってはいけない。
桃子が苦しみながらも言葉を絞り出すなら、視聴者は胸を掴まれる。
蕾が冷静さを失いそうになりながら、それでも刑事として踏みとどまるなら、二人の関係にも重みが出る。
だが、病院を抜け出せるほど動けるなら、逆に撃たれた衝撃が薄まってしまう。
桃子を狙撃するという大きな出来事を置いたのに、その後の扱いが妙に雑なのだ。
せめて彼女が一番星に来る理由を、もっと切実にしてほしかった。
蕾にだけ伝えたい言葉がある。
犯人の顔ではなく、警察内部の誰かに繋がる決定的な違和感を思い出した。
そういう一撃があれば、無茶な行動にも魂が宿る。
今のままだと、桃子は物語の中心にいるのに、場面を動かすために走らされているように見えてしまう。
それが惜しい。
最終話で桃子を撃つなら、もっと痛く、もっと怖く、もっと蕾の心を壊すくらいでよかった。
桃子の負傷は、もっとドラマ全体を揺らせる爆弾だった。
なのに実際は、爆発する前に消火器をかけられたような印象が残った。
警察官が警察官を撃つ話のわりに黒幕が薄い
警察内部の闇。
この言葉を出すなら、本来はもっと胃が重くなるはずだった。
味方だと思っていた組織が敵になり、正義を守るはずの人間が正義を潰す。
そこまで踏み込める素材があったのに、黒幕まわりの描き方は妙に軽かった。
筒井道隆の悪事が大物感のわりに曖昧
赤瀬心悟が黒幕として浮かび上がる流れは、役者の存在感もあって画面だけなら悪くない。
筒井道隆のあの静かな顔つきは、怒鳴らなくても「この人、上で何かを握っているな」と思わせる力がある。
だが、肝心の悪事がぼんやりしている。
桂田に狙撃を命じた。
実相寺を使っていた。
過去の事件にも絡んでいた。
掃除屋として警察にとって都合の悪いものを片づけてきた。
情報としては並ぶのに、視聴者の腹に落ちる決定打が薄い。
「こいつが全部を腐らせた」と震えるほどの証拠や犠牲が足りない。
官房審議官という肩書きの重さに対して、悪の描写が言葉で済まされすぎている。
最終的に逮捕される場面も、桂田の自供と実相寺が生きているというカードで押し切る。
もちろん捜査上は大事な証言なのだろう。
しかしドラマとして見ると、もっと赤瀬心悟自身の手が汚れている瞬間を見たかった。
誰かの出世を潰した。
証拠品を消した。
現場の刑事を切り捨てた。
一番星の面々が怒りで歯を食いしばるような具体的な傷がほしかった。
嫉妬と信念で片づけるには話が大きすぎる
赤瀬則文が兄に突きつける言葉は、兄弟の物語としては面白い。
キャリアで上へ行った兄。
ノンキャリアで現場に残った弟。
「弟に嫉妬したのか」と刺す構図も、刑事ドラマの人間臭さとしては嫌いじゃない。
だが、ここで扱っているのは兄弟げんかではない。
警察官が撃たれ、刑事たちが命を狙われ、組織ぐるみで真相を押し潰そうとしている話だ。
そのスケールを最後に「嫉妬」と「目障り」でまとめるのは、いくらなんでも小さく畳みすぎる。
赤瀬心悟が語る信念も、言葉だけは立派だ。
真の正義を手に入れたい。
警察のトップになればそれができる。
だが、その信念がどんな事件で歪み、どの瞬間に人を切り捨てる思想へ変わったのかが見えない。
だから、則文に「上に言われるがままに信念を着替えてきた」と斬られても、痛快さより説明の早さが勝つ。
ここは本来、もっと苦くできた。
兄は兄で本当に正義を信じていたが、組織の中で生きるうちに正義を管理する側へ回ってしまった。
弟は現場で泥をかぶり続けたからこそ、人の命の重さだけは手放さなかった。
その対比が濃く描かれていれば、兄弟の対決はもっと燃えた。
黒幕描写で足りなかったもの
- 赤瀬心悟が自分の手で誰かを潰した具体的な場面。
- 兄弟の確執が警察組織の腐敗につながるまでの積み上げ。
- 「掃除屋」と呼ばれるだけの、見ていて嫌になるほどの汚れた仕事。
掃除屋設定を出すなら、もっと汚れた証拠が欲しかった
「掃除屋」という言葉は強い。
警察上層部にとって邪魔なものを消し、都合の悪い人間を黙らせ、事件の形まで整える存在。
そういう匂いがあるだけで、物語は一気に黒くなる。
なのに赤瀬心悟の掃除屋感は、最後まで言葉の圧で押している印象が強い。
掃除屋なら、掃除した跡を見せてほしい。
誰かの人生が不自然に終わっている。
証拠がきれいに消えすぎている。
関係者がみんな同じタイミングで口を閉ざしている。
掃除屋の怖さは、本人が何をしたかより、何も残っていないことにある。
そこを映像や事件の痕跡で見せていれば、赤瀬心悟はもっと不気味になった。
逮捕される場面も、ただ追い詰められるだけではなく、自分が消してきたはずの過去に足首を掴まれる形なら燃える。
桂田の供述、実相寺の生存、根本や須黒たちが拾ってきた違和感。
それらが一本の線になって、掃除屋の仕事を逆に暴く。
そうなれば、移動捜査課が積み重ねてきた意味も強く出た。
現状でも悪役として成立はしている。
ただ、警察庁の上にいる男を倒す快感としては、まだ薄味だった。
役者の怖さに脚本の黒さが追いついていない。
そこがいちばんもったいない。
刑事たち総集合は熱いが、都合の良さも隠せない
根本が連れてきた刑事や警察官たちが、一番星に次々と集まってくる展開。
ここは素直に熱い。
バラバラだった連中が、最後に同じ方向を向く。
ただ、その熱さと同じくらい、急に味方が増えすぎる雑さも目立っていた。
これまでの面々が集まる展開は最終話らしい
今まで事件ごとに顔を出してきた刑事たちが、根本の動きに合わせて一番星へ集結する。
いがみ合い、疑い合い、時には移動捜査課を邪魔者扱いしていた人間たちが、最後に赤瀬則文のもとへ集まる。
こういう展開は、やっぱり最終盤のご褒美ではある。
「あの時のあいつが来た」「あの事件の刑事までいる」という顔ぶれの重なりは、シリーズを見てきた視聴者の記憶を刺激する。
移動捜査課だけでは警察庁の上層部に勝てない。
でも、現場で踏ん張ってきた人間たちが少しずつ集まれば、巨大な組織にもヒビを入れられる。
その理屈自体は気持ちいい。
現場の刑事たちが、組織の命令ではなく自分の目で見た正義に賭ける。
ここをやりたかったのだろうし、やりたいことはよくわかる。
特に根本がただの小物風味で終わらず、最後に人を逃がし、人を集める側に回るのは悪くない。
今野浩喜の持つ「情けなさ」と「妙な人間味」が、こういう場面では効く。
根本が完璧なヒーローではないからこそ、警察組織の隙間で生きてきた人間が、最後に自分なりの筋を通したように見える。
ただ、急に30人になる流れは勢いで殴りすぎ
だが、赤瀬心悟に向かって「たかが7人、何ができる」と言わせたあと、「それが30人になったよ」と返す流れは、勢いが強いぶん引っかかりも大きい。
言葉の応酬としては気持ちいい。
ただ、30人という数字が急に降ってくる。
いつ、誰が、どこまで根回ししたのか。
警察庁から移動捜査課に逮捕命令が出ているような状況で、なぜそこまでの人数が簡単に合流できるのか。
そこを飲み込む前に、場面だけがどんどん進んでいく。
熱い展開ほど、雑に出すと安っぽく見える。
例えば、過去の事件で赤瀬側に違和感を抱いた刑事が、それぞれ小さな証拠を握っていた。
根本が裏で連絡を回し、天尾や須黒たちがその信頼を少しずつ繋いできた。
そういう描写が積まれていれば、「30人になったよ」はもっと鳥肌が立つ台詞になった。
現状では、最終局面に必要な人数をまとめて呼びました、という印象が残る。
もちろんドラマだから、ある程度の勢いは必要だ。
だが、警察組織の中で反旗を翻すというのは、軽い決断ではない。
出世も、生活も、家族も、これまで積み上げたものも失うかもしれない。
それでも一番星側につく理由を、一人でも二人でもいいから強く見せてほしかった。
警察組織の壁を壊す話なら、もっと積み上げが必要だった
『ボーダレス』が本当に描きたかったのは、管轄の壁だけではない。
キャリアとノンキャリア、上層部と現場、命令と信念、組織の正義と個人の正義。
そういう境界線を一番星で踏み越える物語だったはずだ。
だから刑事たちが総集合する流れは、テーマ的には間違っていない。
むしろ、ここがいちばんタイトルに近い。
問題は、その境界線が壊れる瞬間の痛みが足りないことだ。
警察官が上の命令に背くなら、もっと怖い。
自分が信じてきた組織を疑うなら、もっと苦い。
仲間を守るためにバッジを賭けるなら、もっと震える。
総集合そのものより、そこへ至る迷いと覚悟が見たかった。
一番星に集まった刑事たちが、ただの応援団に見えてしまう瞬間があるのは惜しい。
一人ひとりの顔に「もう戻れない」と刻まれていれば、たった30人でも巨大な組織に見えた。
逆にそこが薄いと、どれだけ人数が増えても、演出上の配置に見えてしまう。
赤瀬心悟を追い詰めるには、人数ではなく現場の執念が必要だった。
一番星に集まった刑事たちは、その執念を背負えるだけの素材だった。
だからこそ、もっと泥臭く、もっと個人的な怒りを持って集まってほしかった。
熱い場面ではある。
でも、熱さだけで突っ切るには、扱っている敵が大きすぎた。
警察組織の壁を壊すなら、壁の厚さを先に見せてくれ。
そこが足りないから、せっかくの総集合が少し軽く見えてしまった。
メカ爺の不起訴にいちばん驚いた
緑川宗一郎、いわゆるメカ爺の扱いがまたすごい。
北大路欣也の存在感で画面は締まる。
そこは間違いない。
だが、物語の中でやってきたことを冷静に並べると、不起訴で済むのか、それという疑問がどうしても残る。
誘拐まがいの行動が流される世界観
メカ爺は、単なる頼れる老人ポジションではない。
一番星の中枢に関わり、過去の事件にも絡み、刑事たちを動かす謎の存在としてずっと物語に影を落としてきた。
その怪しさや不気味さがあったから、北大路欣也の重みも効いていた。
ただ、最終的に不起訴とされると、こっちは急に現実の法律スイッチが入る。
いや、あなた結構なことしていなかったか。
人を巻き込み、逃走に加担し、警察の正規ルートから外れた動きをしていた。
その行動がすべて「正義のためだった」で流されるなら、この世界の警察は黒幕だけでなく味方側にもかなり甘い。
悪人を捕まえるためなら、味方の無茶は帳消しになる。
その空気が出てしまうと、赤瀬心悟を責める言葉にも少しブーメランが刺さる。
組織の正義を名乗って汚いことをした男を倒すなら、味方側の越権行為にも痛みを残すべきだった。
メカ爺が不起訴になるにしても、せめて「本来なら許されないが、表に出せない事情と取引がある」くらいの苦さが欲しかった。
結果だけポンと出されると、重い過去が急におじいちゃん特権で片づいたように見えてしまう。
北大路欣也の存在感で無理やり納得させにくる
ただし、北大路欣也が演じると、妙に納得しそうになるのが怖い。
あの声、あの目、あの背筋。
黙っているだけで「この人には事情がある」と思わせる。
メカ爺が何かを語るたび、脚本の穴を役者の年輪がふさいでしまう瞬間がある。
これは役者の勝利だ。
でも、だからこそ危うい。
名優の説得力に脚本が甘えている。
視聴者は北大路欣也の顔を見ると、多少の無茶を飲み込んでしまう。
「この人がやるなら何か深い意味があるのだろう」と勝手に補完してしまう。
その補完力を使いすぎると、物語の説明責任が薄くなる。
メカ爺がなぜそこまで一番星に賭けたのか。
過去にどんな後悔を抱え、誰に対して何を償いたかったのか。
そこをもう一段深く掘れば、不起訴という結果にも少しは納得の余地が生まれた。
たとえば、彼が表に出せない証拠を守るために法を踏み越えたとか、赤瀬心悟の掃除によって人生を壊された人間をずっと見てきたとか。
そういう具体的な痛みがあれば、メカ爺の無茶は「老いた暴走」ではなく「最後の抵抗」になった。
メカ爺まわりで惜しかったところ
- 不起訴という結果だけが出て、そこに至る苦い事情が薄い。
- 味方側の違法スレスレ行動が、正義の名で軽く流されている。
- 北大路欣也の存在感が強すぎて、説明不足まで飲み込ませてしまう。
キャラの魅力と脚本の雑さが綱引きしていた
メカ爺というキャラは、かなりおいしい。
古い事件を知る老人、機械に強く、一番星の裏側を支え、若い刑事たちとは違う時間を背負っている。
こういう人物がいるだけで、物語には厚みが出る。
実際、メカ爺が画面にいると、一番星がただの派手なトラックではなく、過去の怨念や願いを積んだ車両に見えてくる。
だからキャラとしては好きだ。
好きだからこそ、処理の軽さが引っかかる。
魅力的な人物ほど、都合よく救ってはいけない。
メカ爺が罪を背負っているなら、その罪の形を視聴者に見せるべきだった。
不起訴になるなら、その裏に誰かの苦渋や、飲み込めない現実があるべきだった。
全部を丸く収める必要はない。
むしろ、メカ爺には少し後味の悪さが残るくらいが似合う。
正しいことをしたのに、やり方は間違っていた。
人を救ったのに、誰かを傷つけた。
そういう矛盾を抱えてこそ、老いた人物の背中は重くなる。
最終的には、北大路欣也の存在感で場面は成立していた。
だが成立していたことと、納得できたことは別だ。
メカ爺の不起訴は、このドラマらしい力技でもあり、最後まで残った雑さの象徴でもあった。
キャラは立っているのに、決着が軽い。
このもったいなさが、『ボーダレス』全体の弱点をそのまま映していた。
蕾と桃子の結婚エンドは続編狙いが露骨すぎる
蕾と桃子の結婚目前エンドは、二人の関係を見てきた側からすれば悪くない着地だった。
撃たれても生き残り、事件を越えて、ようやく未来へ進む。
そこだけ切り取れば祝福できる。
ただ、その直後に事件発生をぶち込まれると、幸せの余韻より続編の看板が先に見えてしまう。
恋愛の着地としては悪くないが、事件発生で台無し
蕾と桃子は、最終的に結婚へ向かう。
これはドラマとして、かなりわかりやすい救いだ。
桃子は狙撃され、蕾は目の前で彼女を失うかもしれない恐怖を味わった。
あの瞬間があったからこそ、半年後に二人が並んでいるだけで「生きていてよかった」という感情は出る。
刑事として事件に立ち向かうだけでなく、個人として誰かと生きる未来を選ぶ。
そこに物語の柔らかい出口を作ること自体は間違っていない。
だが、結婚という人生の大きな節目を置いた直後に、また事件が起きる。
この切り返しがあまりにもテレビドラマ的すぎる。
幸せを見せた瞬間にサイレンを鳴らす癖が強すぎるのだ。
もちろん刑事ドラマだから、事件で締めるのはわかる。
一番星が走り続けることを示したかったのもわかる。
ただ、桃子が撃たれた痛みを越えて結婚にたどり着いたなら、そこには少し静かな時間が欲しかった。
蕾が桃子を見る目、桃子が笑うまでの間、二人が何も言わずに立っているだけの空白。
そういう余韻があれば、視聴者は勝手に泣く。
なのに事件発生で強制的に次のページをめくられると、感情が置いていかれる。
結婚はゴールではなく次の出動前の小道具になってしまった。
大塚明夫登場で黒幕の奥を匂わせる
そして、最後に出てくる大塚明夫。
ナレーションだけでは終わらないだろうとは思っていたが、ここで顔を出してくるのは、さすがに「まだ奥があるぞ」と言っているようなものだった。
声だけでも圧がある人が、画面に現れる。
それだけで赤瀬心悟の上、あるいは警察庁のさらに奥に別の闇があるように見えてしまう。
これはズルい。
ズルいが、効果はある。
大塚明夫を最後に置いた時点で、物語は完全に終わる気がない。
赤瀬心悟が裁判にかけられ、腹心にも裏切られ、ひとまず警察内部のクリーナー騒動は決着した。
しかし、その面会に新たな大物感をまとった人物が来る。
この構図は、黒幕を倒したと思ったら、その黒幕さえ盤上の駒だったという匂わせだ。
視聴者の興味を引くには強い。
ただ、赤瀬心悟まわりの悪事がやや薄味だったぶん、さらに上を匂わせられても「その前に今の黒幕をもっと濃くしてくれ」という気持ちも湧く。
新しい闇を見せるなら、足元の闇をもっと深く掘ってからにしてほしかった。
続編を見たい気持ちと、もう十分という気持ちが同時に来る
『ボーダレス』は、続編を作れる形で終わった。
蕾と桃子は夫婦になりそうで、赤瀬則文たち移動捜査課もまだ動ける。
一番星という看板もある。
大塚明夫という次の扉も開いた。
材料だけ見れば、いくらでも続けられる。
ただし、ここで問題になるのは、視聴者の気持ちが本当にそこまで乗っているかどうかだ。
見たい気持ちはある。だが、もう十分だろという疲れもある。
毎回の事件は動く。
キャストも強い。
移動捜査本部という設定も、まだ使い道はある。
でも、解決が力技に寄りすぎると、次もどうせ一番星が何とかするんだろうと思ってしまう。
続編をやるなら、蕾と桃子の関係も、一番星の使い方も、警察内部の闇も、もう少し地面に足をつけてほしい。
トンデモを捨てろという話ではない。
むしろトンデモはこのドラマの売りだ。
ただ、トンデモの中にひとつだけ本気の痛みを置いてくれ。
撃たれた人間は痛い。
命令に背く刑事は怖い。
組織に潰された人間は戻ってこない。
そこを描けば、一番星が走る意味も変わる。
結婚エンドから事件発生へなだれ込む終わり方は、いかにも続編を狙った幕引きだった。
悪くはない。
でも、視聴者が本当に待ちたいのは「次の事件」ではなく、この雑な勢いがどう化けるのかなのだと思う。
ボーダレス最終話の感想は「嫌いじゃない、でも雑」
『ボーダレス』は、最後まで妙な吸引力のあるドラマだった。
冷静に考えたら穴だらけなのに、画面の圧と役者の濃さで見せ切ってくる。
だからこそ感想は単純に切れない。
嫌いじゃない。けれど、雑。
この一言に尽きる。
トンデモ設定を貫いた勢いは認めたい
一番星という移動捜査本部の設定は、最初からかなり攻めていた。
刑事たちが現場へ出向くのではなく、捜査本部ごと走る。
管轄も県境も関係なく、トラックが日本中を走りながら事件に食らいつく。
この発想だけなら、相当ワクワクする。
しかもテレ朝の水曜刑事ドラマ枠で、ここまで派手な嘘を持ち込んだのは、素直に面白い挑戦だった。
普通の刑事ドラマなら、会議室で資料を並べ、鑑識結果を待ち、聞き込みで少しずつ詰める。
でも『ボーダレス』は、最初からエンジン音で押してくる。
事件が起きたら一番星が動く。
揉めたら車内で会議する。
包囲されたら走り出す。
撃たれたら森へ突っ込む。
理屈より先に車体が動くドラマだった。
この馬鹿馬鹿しさを最後まで捨てなかったところは、評価していい。
中途半端にリアル寄りへ逃げず、トンデモのまま最終決戦まで持っていった。
赤瀬心悟の部屋へ乗り込み、狙撃犯を追い、刑事たちが集まり、一番星が突っ込む。
その全部が乱暴なのに、画面としては妙に勢いがある。
ここで小さくまとまらなかったのは、この作品の強みでもある。
嫌いになれない理由
- 一番星という設定に、シリーズ化できそうな妙な夢がある。
- 井ノ原快彦、北大路欣也、優香、横田栄司らの画面の安定感が強い。
- 真面目な顔で無茶をやるので、変な中毒性が残る。
リアリティが少しでもあれば化けた可能性はあった
惜しいのは、トンデモを支えるリアリティが足りなかったことだ。
嘘の大きいドラマほど、どこか一点だけは本気でなければならない。
たとえば、銃で撃たれた桃子の痛み。
警察庁に逆らう現場刑事の恐怖。
官房審議官を逮捕するための証拠の重さ。
メカ爺が法を踏み越えたことへの代償。
そこが生々しければ、一番星が森へ突っ込んでも「そうするしかなかった」と思える。
だが、現実の痛みが軽いままトラックだけが強くなると、どうしても展開が遊園地のアトラクションに見える。
トンデモと雑は違う。
トンデモは狙って作れる。
雑は、視聴者の納得を置き去りにしたときに出る。
桃子が病院を抜け出す理由、SAT包囲中の一番星への出入り、30人の刑事が集まる根回し、黒幕逮捕までの証拠の積み上げ。
そのあたりに一つずつ釘を打っていれば、かなり印象は変わった。
別に地味にしろという話ではない。
一番星は走っていい。
サイレンも鳴らしていい。
森も突っ込んでいい。
ただ、その前に誰かの怖さや痛みを置いてくれ。
そうすれば、同じ無茶でも熱になる。
今は熱になる前に、勢いで煙だけ上がっている感じがあった。
刑事ドラマとして見るより、勢いで見るドラマだった
『ボーダレス』を本格刑事ドラマとして見ると、かなり苦しい。
捜査の精密さ、証拠の積み上げ、警察組織のリアル、犯人特定の説得力。
そこに期待すると、あちこちで「いや、なんでだよ」と止まる。
だが、勢いで見るドラマとしてなら、妙に成立してしまう。
赤瀬則文の現場好きな熱さ、蕾の真っすぐさ、桃子の強さ、須黒や美青たちのクセ、そして一番星の異物感。
全部がきれいに噛み合っているわけではないのに、走っている間だけは目が離せない。
完成度より推進力で見せるタイプのドラマだった。
だから、文句は山ほどある。
桃子は病院にいろ。
メカ爺は不起訴でいいのか。
黒幕はもっと黒くあれ。
一番星が強すぎる。
ツッコミ出したら止まらない。
それでも、最後まで見た人間の中に「なんか見ちゃったな」という妙な敗北感が残る。
これがこのドラマの厄介なところだ。
雑なのに、空気はある。
強引なのに、画は残る。
変なのに、記憶に刺さる。
よくできたドラマとは言い切れないが、何も残らないドラマでもない。
そこがいちばん悔しい。
ボーダレス最終話ネタバレ感想、トンデモ設定のまま最終回まで走り切ったまとめ
『ボーダレス』最終話を見終えて残るのは、綺麗な感動ではない。
整った納得でもない。
むしろ、ツッコミと困惑と妙な愛着がごちゃ混ぜになった、かなり不思議な後味だ。
トンデモ設定のまま最終回まで走り切ったという意味では、このドラマは最後までブレなかった。
一番星という設定はワクワクした
一番星という移動捜査本部は、間違いなくこのドラマ最大の武器だった。
刑事ドラマの捜査本部といえば、普通は会議室、ホワイトボード、資料の山、上司の怒号。
そこを丸ごとトラックに乗せて走らせるという発想は、かなり乱暴だが、同時にかなり楽しい。
現場へ向かうだけでなく、現場を追い越すように捜査本部そのものが移動する。
この絵面には、古い刑事ドラマにはない妙なロマンがあった。
しかも一番星には、ただの便利車両ではなく、刑事たちの逃げ場であり、作戦室であり、時には家のような空気まであった。
だからこそ、最終局面でサイレンを鳴らして動き出した瞬間、理屈より先に少し胸が騒いだ。
設定だけなら、もっと化ける可能性があった。
管轄を越える、立場を越える、警察内部の上下関係を越える。
タイトルの『ボーダレス』を一番わかりやすく体現していたのは、やはり一番星だった。
でも最終話の解決はさすがに力技が過ぎた
ただ、どれだけ設定に夢があっても、最終話の解決は力技が過ぎる。
桃子が撃たれ、狙撃犯を追い、警察庁の黒幕に迫る。
ここまでは、警察内部の闇を暴く重い最終決戦として期待できた。
ところが実際には、桃子は病院を抜け出し、一番星は包囲をすり抜け、刑事たちは急に集まり、狙撃犯にはトラックで突っ込む。
ひとつひとつの場面に勢いはある。
だが、その勢いが全部「まあドラマだから」で片づけられてしまう危うさもあった。
勢いは免罪符ではない。
桃子の負傷には痛みがいる。
赤瀬心悟の悪事にはもっと黒い証拠がいる。
メカ爺の不起訴には納得できる苦みがいる。
刑事たち総集合には、バッジを賭ける覚悟がいる。
そこを少しずつ積んでいれば、一番星の突進も笑いではなく熱になった。
最終話のざっくり総括
| 良かったところ | 一番星の存在感、役者の圧、最後まで振り切った勢い |
| 惜しかったところ | 桃子の行動、黒幕の薄さ、事件解決の力技 |
| 残った印象 | 雑なのに、なぜか忘れにくい刑事ドラマ |
続編があるなら、次はトンデモに一本だけリアルを刺してほしい
続編の匂わせはかなり強かった。
蕾と桃子の結婚目前、そこに事件発生。
赤瀬心悟の裁判、面会に現れる大塚明夫。
一番星はまだ走れるし、移動捜査課もまだ終わっていない。
材料だけなら、いくらでも次へ行ける。
ただ、続けるなら同じことを繰り返すだけでは厳しい。
トラックが走る。
刑事が揉める。
上層部が汚い。
最後は一番星で押し切る。
これだけでは、さすがに飽きる。
次に必要なのは、トンデモを消すことではなく、トンデモの中心にリアルな痛みを一本刺すことだ。
撃たれた人間は簡単に歩けない。
組織に逆らう刑事は失うものがある。
正義のために法を破った人間にも代償がある。
その当たり前を描くだけで、一番星の爆走はもっと熱くなる。
『ボーダレス』は完璧なドラマではなかった。
むしろ穴だらけだった。
それでも、最後まで見てしまった。
一番星が森をなぎ倒して突っ込む絵面を、たぶんしばらく忘れない。
良作とは言い切れないのに、記憶には残る。
それがこのドラマのいちばん厄介で、いちばん面白いところだった。
- 一番星頼みで突っ切った最終回
- 狙撃犯との決着はまさかの力技
- 桃子の病院抜け出しは雑さ全開
- 黒幕・赤瀬心悟の悪事はやや薄味
- 刑事たち総集合は熱いが急展開
- メカ爺の不起訴には疑問が残る
- 蕾と桃子の結婚エンドは続編狙い
- トンデモ設定のまま走り切った作品





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