小芝風花『べらぼう』第9話が“問題シーン”と呼ばれた理由──「濡れ場」ではなく、心の骨を折る演出だった

2025年NHK大河ドラマ『べらぼう』で、小芝風花が演じる花魁・瀬川の“あるシーン”が、視聴者の間で激震を巻き起こしました。

第9話に描かれたのは、“行為中”を想起させる衝撃的な演出。障子越しに浮かぶその構図は「NHKとは思えない」と驚きを呼び、SNSは“バックシーン”や“濡れ場”という言葉で騒然としました。

しかし、それは単なる過激描写ではなく、瀬川という女性が背負う“現実の痛み”を視聴者に突きつける、物語の核となる一撃だったのです。

「問題シーン」は第9話！小芝風花の“行為中”演出が話題となった瞬間

2025年春、日曜夜のNHKがざわめいた。

大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』第9話。
この回の数分間が、SNSを、批評を、そして観る者の心を“沈黙”させた。

その理由は明白だった。

障子越しに浮かび上がる瀬川の“四つん這い”の姿

画面に映るのは、障子越しの輪郭だけ。

光の奥で、ひとつの影が揺れている。

小芝風花演じる花魁・瀬川が、四つん這いのような姿勢で身体を動かし、
背後からは男のうめき声が漏れる。

演出は極めて慎重だ。直接的な描写はどこにもない。
それでも、観た者の脳裏には“行為中”という言葉が、否応なく浮かび上がる。

障子の向こうに見えるのは「肉体」ではない。

その場に閉じ込められた“女の運命”だった。

観てはいけないものを、覗いてしまったような罪悪感。

しかし、そこに映っていたのは小芝風花の“体”ではなく、“表現”だった。

音・光・表情が刺さる──NHK大河の常識を打ち破った演出

“あの瞬間”の衝撃を作り上げたのは、映像だけではない。

聴覚もまた、視覚と同じくらい雄弁だった。

障子越しに聞こえるうめき声──それはリアルすぎるがゆえに、視聴者の耳に棘のように残る。

そして次の瞬間、障子が開かれる。

瀬川がこちらを振り返るその顔が、恐怖でも羞恥でもない、“無”の表情だった。

そこに宿っていたのは、諦念と習慣。そして、何も感じなくなるほどの絶望。

この表情ひとつで、小芝風花は演技の境地をひとつ越えたと感じた。

演じたのは“行為”ではなく、“生きるしかない女の顔”だった。

NHK大河で“ここまでやるのか”という声がある。

だが、これは単なる話題作りではない。

むしろ、表現という枠の中で、最大限の想像力を観る者に委ねたからこそ、心に刺さったのだ。

このシーンの演出には、“攻めた”という軽い言葉では片付けられない切実さがあった。

「何も見えていないのに、ここまで伝わるのはすごい」

というSNSの声が示す通り、

視覚を曖昧にしたことで、逆に感情をくっきりと浮かび上がらせたのである。

“濡れ場”ではなく、“心の骨が折れる音”が聞こえた瞬間。

これは「問題シーン」などではない。

大河の常識をひっくり返す、ひとつの革命だった。

なぜ“濡れ場”と呼ばれたのか？演出意図に宿る「見せない力」

『べらぼう』第9話を観た者の多くが、ある“言葉”でこのシーンを語り始めた。

──濡れ場。

だが、冷静に画面を振り返れば、それは“見えていない”描写だ。

身体は映らない。ベッドもない。照明も赤くない。キスもなければ、肌の露出もゼロ。

それでも観た者の脳裏には、“濡れ場”というイメージが焼き付いた。

直接的な描写ゼロ、それでも“観た”と感じさせる巧妙さ

この矛盾が意味するのはひとつ。

このシーンは、視覚ではなく「観る者の記憶」を刺激していたということだ。

人は映像の“空白”に、もっとも深い感情を差し込む。

障子越しのシルエットは、観る者それぞれが持つ“行為”の知識、経験、想像と結びついた。

つまり演出は、観る者の心の奥にある「記憶ライブラリ」に鍵をかけず、そのまま引き出したのだ。

これは実は、非常に高度な“演出の引き算”である。

露出や刺激に頼るのではなく、“想像力に丸投げする勇気”がなければできない。

だからこそ、この演出は過激ではなく、痛烈だった。

「あのシーンを“濡れ場”だと感じた自分に、ちょっとだけ戸惑った」

という声が、X（旧Twitter）にいくつも投稿された。

その戸惑いこそ、演出が狙った“内省の種”だったのかもしれない。

インティマシー・コーディネーター導入が支えたリアリティ

この緊張感ある演出を下支えしていたのが、NHK初導入の「インティマシー・コーディネーター（IC）」の存在だ。

ICは、性を扱う場面において俳優の心理的・身体的安全を守るために調整を行う専門職。

海外では主流となりつつあるが、日本のテレビ界ではようやく動き始めた段階。

そんな中、『べらぼう』はその先陣を切った。

身体的距離、振付け、照明との呼吸、カメラの“引き”と“止め”の呼吸──。

それらすべてがICの監修のもと、「俳優を消耗させず、感情を残す」という目的のために設計されていた。

その結果、観た者には「リアル」だけが残った。

リアルなのに、直接描いていない。

これこそが、演出とIC、俳優の信頼関係が生み出した“究極の表現”だったのだ。

“濡れ場”という言葉では到底くくれない。

あれは、視聴者の心を裸にした「感情の告発シーン」だった。

花魁・瀬川の悲しみが詰まった一言「これがつとめよ」

映像の衝撃が去ったあと、静かに放たれたひとつの台詞があった。

「どれだけ飾りたてたって、これが瀬川のつとめよ」

これは、女郎屋の主人・半左衛門が蔦重に向かって告げた一言。

画面のインパクトよりも、言葉が心の芯に刺さる──そんな瞬間が確かにあった。

「年に2日しか休みはない」──遊女の地獄を15秒で描く台詞

半左衛門の言葉は、こう続く。

「年に2日しか休みはない。これが毎日だ」

説明も回想もいらない。この15秒の台詞だけで、“瀬川の人生”が一気に圧縮されて押し寄せてきた。

見せ場でも泣きのシーンでもない。

ただ、事実を語っただけだ。

だからこそ、痛い。

瀬川の“つとめ”とは何か。

花魁としての役割、商品としての義務、そして、愛していようといまいと身体を提供する日々──。

その日常の積み重ねが、蔦重が覗いた“障子の向こう”だったのだ。

たった一言で、この世界がどれほど非情で、瀬川という存在がどれだけ削られて生きているかが伝わってしまう。

これほど凝縮された“地獄の台詞”を、大河ドラマで耳にするとは思わなかった。

蔦重の絶望と視聴者の同調：物語のターニングポイントに

あの台詞を聞いた蔦重の顔に、演技を超えた表情が浮かぶ。

無力感と悔しさ、そして“愛”の無意味さに気づいてしまったような空虚さ。

視聴者の多くは、このシーンで「蔦重と一緒に心が折れた」と語っていた。

「女郎屋であんな言葉聞かされたら、そりゃ恋愛なんて無力になる」

というポストがXでもバズっていた。

ここで初めて、蔦重の“恋”は現実の重みに押し潰される。

相手を想うことが、逆に“痛み”を贈ることになる──そんな逆説が物語に染みていく。

つまり、このセリフが放たれた瞬間が、物語全体の“感情の分岐点”だった。

瀬川を救いたいと思っていた蔦重が、瀬川の「生き方の現実」に突き返される。

視聴者もまた、その無力感と苦しさを共有させられる。

“問題シーン”と呼ばれた構図の直後に置かれた、この15秒。

それは「衝撃を演出する」ためではなく、「この世界で生きていく重み」を刻むための時間だったのだ。

台詞は派手じゃない。感情の爆発もない。

でも、だからこそリアルだった。

この15秒が、瀬川をただの花魁ではなく、ひとりの“人間”として刻みつけた。

SNSでの反響：「攻めすぎ」「でも泣いた」──称賛と混乱の声

『べらぼう』第9話の放送直後──タイムラインは騒然とした。

「小芝風花」「行為中」「バックシーン」「NHKとは思えない」…。

このドラマのワードが次々とトレンド入りし、SNSは“感情のスパーク”で満ちていた。

その波の中には、驚きと称賛、困惑と絶賛、冷笑と共感、相反する温度の声が混ざり合っていた。

まさにこの回は、「炎上寸前」で止まった奇跡的なバランス感の上にあったのだ。

「NHKなのにここまでやる？」衝撃がトレンドを支配

もっとも多かった声は、「NHKらしからぬ演出に対する驚き」だった。

「大河でここまでやるとは思わなかった」

「完全に民放越えてる…てか深夜ドラマのノリじゃん」

この“想定外の領域”に足を踏み入れたことで、視聴者は一気に引き込まれた。

中には、「子どもと一緒に見てて気まずかった」という戸惑いの声もあったが、それさえも話題性に繋がっていた。

この手の批判が“少数派”だったことが、この演出の絶妙な成功を物語っている。

さらにSNSでは、小芝風花という女優への再評価も爆発的に広がった。

「あんな表情できる女優だったんだ」

「清楚系のイメージ覆った」

という投稿が続き、過去作との比較や彼女の演技力に関する考察も多数上がった。

「ただの濡れ場じゃない」切なさと演技力に注目が集中

しかし、このシーンが「話題性」だけで終わらなかった理由はもうひとつある。

“刺激”よりも“感情”を感じたという声が圧倒的に多かったことだ。

「あの演出は切なすぎる」

「ただの濡れ場じゃない、瀬川の人生を見せられた」

という声は、一晩中、X（旧Twitter）に流れ続けていた。

中でも注目を集めたのが、シーンのあとに描かれた“手を重ねるだけの別れ”。

“行為”の直後なのに、肌も交えず、ただ手をそっと重ねる──。

この大胆な「逆の演出」が、余計に泣かせたと、多くの視聴者が言った。

愛してるから触れない。愛してるから、離れる。

そんな“矛盾の美学”が、あの静かな手のひらの中に詰まっていた。

結果、第9話は「伝説回」と呼ばれるようになる。

濡れ場ではなく、感情の臓腑をえぐる“演出の奇跡”として。

ここにあるのは炎上ではない。

人々の“感情が燃えた”という意味での、正しい“火”だった。

第1話・第4話にも小芝風花の艶やか演技は存在したのか？

『べらぼう』第9話の“問題シーン”があまりに強烈だったため、「他の回にも似たような描写があったのか？」という声が多く聞かれた。

結論から言えば──直接的な“行為中”の演出は第9話のみ。

だが、それ以前の回にも“小芝風花の色気”と“過酷な現実”を内包した演出が、いくつも存在していた。

開幕から衝撃の吉原炎上、第1話の“過激演出”とは

まず第1話。

開幕早々に描かれるのは、明和の大火による“吉原炎上”という凄絶な場面だった。

燃え上がる楼閣、逃げ惑う遊女たち、炎に包まれる艶やかな衣装。

演出はあくまで史実に基づいているが、その“エグさ”は地上波としては際立っていた。

焼け跡に無造作に積み上げられた遊女の遺体の描写は、直接的な“濡れ場”よりも、遥かに心をえぐる。

「開幕からトラウマ級」「吉原ってこうだったのか…」

そんな声がSNSを覆い尽くした。

瀬川はこの回には登場しないが、この炎上シーンが後の彼女の運命を照らす“序章”となっていたのは確かだ。

男装・花魁道中…第4話の“艶”とのコントラスト

そして小芝風花が本格的に登場するのは第2話から。

だが、視聴者の記憶に強く残っているのは、第4話の“男装”と“花魁道中”という二つの演出だった。

まず男装。

蔦重との再会シーンで、小芝風花演じる瀬川は“男の装い”で登場する。

艶やかさとは真逆の、シャープで粋な立ち振る舞いに、SNSでは「小芝風花、イケメンすぎる」「性別超えて魅力的」といった声が飛び交った。

一方、花魁道中のシーンでは一変して、濃艶な化粧と目線の流し方、ゆったりと揺れる着物の裾で圧倒的な存在感を放つ。

「これは完全に“歩く芸術”」「目の演技だけで色気を表現してる」

演出側も明らかに、第4話で“瀬川という存在に、観る者を恋させる”意図を持っていたと感じた。

つまり、第9話の問題シーンは“突然現れたショック演出”ではなく、

「第1話の地獄」→「第4話の恋」→「第9話の絶望」という丁寧な感情の積み上げの中に配置されていたのだ。

小芝風花の演技もまた、色気・男装・絶望という三面をすでに見せていた。

だからこそ、第9話の“問題シーン”が「艶」ではなく「哀しみ」として視聴者に届いたのだろう。

すべては伏線だった。

第9話は“単発の事件”ではなく、“積み重ねた感情の爆心地”だった。

小芝風花の出演は何話まで？“問題シーン”以降の注目ポイント

視聴者の感情をかき乱した“第9話の問題シーン”。

しかし、それは瀬川の物語において、まだ“序章の終わり”に過ぎない。

小芝風花演じる花魁・瀬川は、物語の中盤で姿を消す運命にある──。

それを知った今、“残りの登場回”が、さらに観る者の視線を熱くしている。

退場予定は第14話？今後の“別れ”がもたらす余韻

関係者筋の報道によれば、瀬川の登場は第14話前後までとされている。

つまりあと数話で、蔦重と瀬川の関係には“別れ”が訪れる。

第9話で一度、ふたりの関係は壊れた。
だが、それで終わりではない。

あの“手を重ねる別れ”は、まだ“別れの予告”に過ぎなかった。

今後予告されている展開の中には、

• 瀬川が再び花魁道中をする場面
• 蔦重が“最後の願い”を彼女に告げる場面

が含まれている。

そのたびに、観る側は「これが最後かもしれない」という緊張感と切なさを抱えることになる。

「第9話を経て、彼女の1カット1カットが尊い」

という声が出ているのも、当然の感情だ。

最終回までに残る“情”の火種──蔦重との結末とは

そして最大の焦点は、瀬川が“どのように物語から退場するのか”という点にある。

愛し合っても結ばれない、という構図はすでに提示された。

だとすれば、このふたりの結末は、“切なさの結晶”でしかあり得ない。

一部では、瀬川が身請けされる説や、死を迎えるという予測も飛び交っている。

だが、いずれにせよそれは、“蔦重の人生に永遠の傷跡”を残す別れとなるはずだ。

彼女の消失が、蔦重という男の“覚悟”を生む──。

その布石がすでに第9話から始まっている。

最終的に蔦重が「何を世に残し、何を背負って生きるか」。

その根底には、瀬川との記憶が深く焼き付いている。

だからこそ、“消えていく女性”の表情や仕草が、視聴者にとっても“人生の伏線”になる。

物語の“結び”はまだ先。

だが、瀬川の一歩一歩が、もうすでに“余韻”として観る者の中で育っている。

描かれなかった“もうひとつの愛の視線”──蔦重が見落とした瀬川のまなざし

第9話で焦点が当たったのは、蔦重の視点だった。

障子越しのあの光景を見たときの、あの絶望。あの沈黙。

でも、ひとつだけ描かれなかったものがある。

それは──瀬川の視点から見た“蔦重”の姿だ。

「見せつけた」のではない、「見られるとわかっていた」悲しみ

あのシーン。

偶然、ではない気がした。

瀬川は、障子が開かれるその瞬間、ほんの一瞬だけ視線を“遅れて”振り向いた。

驚いたような表情を浮かべながらも、あまりに整った顔だった。

つまりあれは、「蔦重に見られる覚悟をしていた女の顔」じゃなかったか。

見られても構わない。むしろ、見せたかった。

これが私の現実で、あなたが愛そうとしている“本当の私”なんだよ──って。

それを見て、蔦重がどう壊れるかまで、わかっていた気がする。

でも、それでも見せた。

それが愛するということの“責任”だと、瀬川は思ったのかもしれない。

愛してほしいではなく、「愛を諦めさせる」ために

普通の恋なら、守られたい。

普通の愛なら、救ってほしい。

でも瀬川の愛は違った。

彼女は、自分が商品であることを隠さずに晒し、蔦重に「諦めさせる」ためにあの場にいた。

それは諦めさせることで、蔦重を自由にしようとしたんじゃないか。

愛しているから、遠ざける。

あのシーンは、瀬川の最後の“愛の表現”だった。

そしてそれに気づかず、ただ傷ついてしまった蔦重。

ふたりはすれ違ったようで、実は同じだけ傷を背負ってた。

ただし──瀬川は自分で“傷の意味”を決めていた。

蔦重はまだ、それを見つけられていない。

あの夜、見つめられたのは、女の身体じゃない。

「愛することの、残酷さ」そのものだった。

小芝風花『べらぼう』問題シーンの意味を振り返るまとめ

あの第9話の障子越しのシーンを、あなたは“なんと呼ぶ”だろうか。

濡れ場？ 問題シーン？ 攻めた演出？──どの言葉も正しくて、どの言葉も足りない。

これは、ひとつの愛が崩れた瞬間の記録であり、ひとりの女性が生きている証の断片だった。

「濡れ場」のための演出ではなく、心の現実を突き刺す一撃

あの演出は、決して「色」を狙ったものではなかった。

花魁として生きる瀬川が、“商品としての身体”に日常を支配されている現実。

その凄惨さを、光と音と、障子の奥の沈黙で描き出した。

視聴者の心をかき乱したのは、刺激ではない。

「こんな現実が、この美しい人の日常なのか」──という、突き刺さる想像だった。

「こんな愛し方しかできないのか…」

と、蔦重の絶望を他人事にできなかった視聴者も多い。

そしてこの描写によって、ただの恋愛ではない、“運命との対話”としての物語構造がくっきりと浮かび上がった。

“見せないで見せた”──女優としての新境地と表現の覚悟

そして、このシーンの本質的な衝撃は、やはり小芝風花の演技力だ。

彼女はここで、見せることを拒んだ。

ではなく、“見えないもの”で心を殴る方法を選んだ。

表情の“無”、目の揺れ、声なき疲労。

あらゆる表現が、「観る人に想像させる」という大人の演技へと昇華されていた。

かつて“清純派”と呼ばれた彼女が、今や“表現の領域”で語られる女優になった。

それは称賛であり、覚悟の証だ。

この役を引き受けたことも、

この演出に体を預けたことも、

演じきった後に残った沈黙さえも、

小芝風花の“次のフェーズ”を刻んだ瞬間だった。

『べらぼう』という大河は、“ただの歴史劇”では終わらなかった。

それは、見てしまった者の人生の中に「忘れられないページ」を作っていく作品だった。

そして、あの第9話は間違いなく──

大河ドラマ史に残る「感情の極点」として、刻まれていくだろう。