Netflixオリジナルドラマ『未知のソウル』第3話は、表面的には「入れ替わった双子と彼女たちを取り巻く人間模様」の物語。
けれど本当は──“誰にも見せられない心の傷”と、“誰かに寄り添ってもらいたい”という静かな願いが交差する回でした。
この記事では、第3話で描かれたホスの退職の真意、そしてミジ(になりきるミレ)が抱える葛藤と成長を、ネタバレ込みで丁寧に読み解きます。
- ホスが退職を決意した理由とその背景
- ミジが本音を隠した切なさと葛藤の意味
- 詩と記憶が交差する“静かな感情”の揺れ
ホスが弁護士を辞めた本当の理由──「正義」と「共感」の狭間で
誰かを守るために正しいことをしたのに、なぜか傷ついてしまう。
Netflix『未知のソウル』第3話では、完璧な弁護士ホスが、突然退職するという驚きの展開が描かれました。
でも、それは“逃げ”ではなく、“戦う方法を変えた”という選択だった──。
理不尽を見過ごせない性格が、ホスを追い込んだ
ホスが所属していた弁護士事務所では、大手企業チェ会長との案件を扱っていました。
その会長が起こした暴力事件で、ホスは被害者を密かに支援していたことが発覚。
チームから外されるという処分を受けることになります。
「正しいことをしたはずなのに、どうして罰せられるのか?」
この疑問は、正義感だけでなく、過去に負った“心の傷”と直結していたのだと思います。
ホスは高校時代の事故で心身に大きなダメージを受けています。
耳も不自由になり、身体の一部には火傷の痕が残る。
そんな自分を“見下す人間”に出会ったとき、彼は決して黙っていられない。
だからこそ、クライアントがどれほど大きな存在でも、その“陰”を見過ごせなかった。
チェ会長との決裂と、チュング弁護士の“沈黙の圧力”
ホスが信頼していた上司・チュング弁護士は、形式的には冷静で優秀ですが、問題に対しては“波風を立てない”対応を取る人物です。
つまり、「見なかったことにする」文化を選ぶタイプ。
ホスが行動を起こしたあと、彼に向けたのは励ましではなく、「チェ会長と一緒に飲みに行けるか?」という問いでした。
この一言に、ホスは全てを悟ったように感じます。
「ここでは、自分の“信念”は踏みにじられる」
だから辞めたのです。戦いを終えたのではなく、“フィールド”を変えた。
彼が選んだのは、誰かの傘になることができる“個人”としての自由。
「これからは自由に」──ホスが選んだ“戦い方”の変化
退職後、ホスはミジ(になりきっているミレ)にこう伝えます。
「これからは力になるよ」
この言葉には、彼の変化と決意が凝縮されていました。
もう大きな組織の中で忖度することはない。
傷ついた人のそばに、そっと立ち続けるために、自分を解放したんです。
ホスはずっと、ミレ(ミジ)を“助けたい”と思っていました。
でもそれは、“弁護士”という肩書がなくてもできる。
人のそばにいるために、名刺はいらない。
ホスの退職は、その“優しさ”の裏返しだったのです。
この決断が、今後どんな波紋を広げるのか──。
そして彼が守ろうとする“ミジ”という存在に、どれだけの感情を抱いているのか。
私たちは、ホスという人物を、ただの「イケメン弁護士」以上に愛さずにはいられません。
「違う」と言ってしまったミジ──本音を隠すことで守りたかったもの
たった一言、「そうだよ」と言えたら楽になれたのに。
それでも彼女は“違う”と答えた。
『未知のソウル』第3話の最大の痛みは、ホスの問いに対してミジが真実を隠した瞬間にあったのかもしれません。
「ミジだろ?」──ホスの問いかけに心が揺れた理由
ホスが静かに言った「君はミジだろ?」。
その言葉には、疑いではなく、“願い”が込められていたように感じました。
ミレとしてふるまうミジの言動や、心の反応に違和感を覚えながらも、ホスは「君がミジなら、そばにいたい」と伝えたかったのではないでしょうか。
けれど、ミジはそこで「違う」と答えます。
それは裏切りではなく、“守るための選択”でした。
正体を明かすことで関係が壊れるかもしれない。
ミレとの“約束”を破ることにもなる。
そして何より──彼に自分を知られたくなかった過去があったのです。
高校時代の嫉妬と、視線の交錯が生んだすれ違い
実は、ミジは高校時代──大切な大会で転倒したとき、ホスとミレが抱き合っている姿を見てしまった。
あの瞬間、彼に「見てほしかった」のは自分なのに、視線の先にいたのは姉だった。
そのときに心が傷ついていた。
“勝手な勘違い”かもしれない。
でも、好きな人が、自分を見ていなかったという感情は、何年経っても消えない。
だから今回、ホスに「ミジだろ?」と聞かれたとき。
“今度こそ見てほしい”という願いと、“また見てもらえないかもしれない”不安がせめぎ合った。
その結果が──「違う」というたった一言だったんです。
“今度こそ見てほしい”という願いを胸に、ミジが選んだ沈黙
ミジは、本当は気づいていたはずです。
ホスが、自分を“見抜いた”のではなく、“信じてくれようとした”ことを。
でも、彼にその優しさを返す準備ができていなかった。
過去に見てもらえなかった悲しみが、“今の自分”を小さくしてしまった。
「私はミジだよ」と言えば、きっと何かが変わっていた。
でも、その勇気を持てなかった。
沈黙は、弱さではなく、まだ終わっていない“感情の揺れ”の証でした。
ミジが、もう一度ホスと向き合うためには、
自分自身と向き合い直す時間が必要だったのかもしれません。
あの瞬間に言えなかった言葉たちは、
きっと、これから少しずつ、彼女の中で育っていく。
そしていつか、「ミジだよ」と言える日が来たとき──
それが、本当の意味で“彼に見てもらえる瞬間”になるんじゃないかと、私は思います。
ロサの詩と涙──「霜月の海」が触れたミレの過去
言葉じゃ届かないと思っていた心に、たった一編の詩がそっと触れてきた。
『未知のソウル』第3話で描かれた、ミジの涙とロサの詩「霜月の海」──それは感情がぶつかりあうドラマの中で、ひときわ静かで美しい瞬間でした。
誰にも言えなかった想い、どこにもぶつけられなかった寂しさ。
詩の一節が“心の奥”に刺さった瞬間
“霜月の海に 声をかける者なし ただ私は波間に沈みたい”──
この一節を読んだ瞬間、ミレ(になりきったミジ)の目から涙が零れました。
それは、彼女自身も気づかないくらい深く沈んでいた“孤独”に、詩が寄り添ってしまったから。
誰かにわかってもらいたくて、でもうまく言葉にできなかった。
ただ静かに苦しくて、ただ黙って毎日をやり過ごしてきた。
でもこの詩だけは、黙って抱きしめてくれた。
ミジはその場から動けなくなって、ひとり、泣いていました。
母のような存在だったロサとのすれ違いと和解
ロサは、鶏モツスープの店主でありながら、実は韓国大出身の詩人。
そして、かつて母子家庭の学生に入学金を支援していた人──ホスもその一人でした。
そんなロサに、ミジ(ミレとして)の想いが伝わらない場面は、本当に切なかった。
尾行されたと誤解され、「もう二度と来るな!」と怒鳴られてしまった。
でもそれは、ミジが本当に“ロサの詩に救われた”からこそ、近づきたかっただけ。
本当は話がしたかった。感謝を伝えたかった。
それなのに届かなくて、拒絶されてしまって。
それでも彼女は、ロサを責めることはしなかった。
きっとロサも“何かを忘れかけている”ように見えて、ミジはそれに気づいていたんだと思います。
だから、相手を許すことで、自分の傷を癒そうとした──それが彼女の強さでした。
ロサの記憶と詩が、これから物語に与える意味
第3話では、ロサが少しずつ“記憶を失いつつある”描写もありました。
玄関に貼ったメモを忘れ、ミジとの約束も覚えていないかもしれない。
それは切なくて、でもどこか温かくて。
過去に何かを与えた人が、今度は誰かに支えられていく──そんな静かな循環が、ロサとミジの関係の中で描かれていくのかもしれません。
「霜月の海」に涙したあの瞬間は、きっと物語の中でも象徴的なシーンになる。
そして私たちに“詩が、人を救うこともある”という事実をそっと教えてくれました。
ロサの詩に出会えてよかった。
ミジが涙を流せて、本当によかった。
だってその涙は、誰にも見せられなかった悲しみが、初めて“言葉になった”証だったのだから。
双子の“すり替え”に気づいた人たち──秘密を共有する距離感
「本当のことを言わなくても、わかってくれる人がいる。」
それって、何よりの救いじゃないですか?
『未知のソウル』第3話では、ミレとミジが入れ替わっていることに気づいた人が、2人いました。
祖母とホス──この2人が気づいたという事実には、理由があります。
祖母とホス、“気づいた人”に共通する優しさ
まず祖母。
ミジ(中身はミレ)が介護施設を訪ねたとき、祖母は一目で彼女が“ミレ”だと見抜きました。
あのシーン、言葉はなかったけど、すごく強いものが流れていましたよね。
“逃げたくなってもいい”と、抱きしめるようなまなざしで彼女を迎える。
どんなに嘘をついても、それが“誰かを守るため”だとわかってくれる人──
祖母は、そんな存在なんです。
そしてホス。
彼も、言葉の端々や振る舞いで気づいてしまう。
でも、問い詰めない。責めない。
ただ「ミジだろ?」と、優しく尋ねるだけ。
ホスには、誰かの痛みにそっと手を添える繊細さがあるんです。
だから彼は、たとえ嘘でも「その人が必要としている姿」であれば、受け入れてくれる。
ミジ(になりきったミレ)は、“本当の自分”を見抜かれて怖かったけど、同時にホスの存在に安心していたはずです。
秘密を知ったからこそ、彼らが示す“そっと支える”愛情
秘密って、重たいんですよ。
でも、その秘密を“共有できる誰か”がいると、重さが半分になる。
第3話で描かれた祖母とホスの行動は、まさに「そっと支える愛情」そのものでした。
祖母は、ミレが逃げてきたことを責めず、「よく来たね」と迎えた。
ホスは、ミジが嘘をついたことに気づいても、“それ以上を求めなかった”。
問いただすのではなく、「必要なときにそばにいる」と伝える。
この“見守る力”に、私は泣かされました。
だって、誰かを愛するって、本当はそういうことだと思うから。
「あなたのままでいていい」と言ってくれる存在が、物語を照らす
第3話のクライマックス、ホスが事務所を辞め、ミジの前で宣言するシーン。
「これからは力になるよ」
この一言には、全てを知っている人だけが持つ“覚悟”が宿っていました。
相手が誰であっても、自分に何を隠していても。
「あなたが、あなたとしてそこにいること」を、肯定してくれる人──。
それは恋愛を超えた、魂の理解者なんだと思います。
このドラマの魅力って、ただの入れ替わりでもなく、ただのラブストーリーでもない。
“あなたのままでいてもいい”と誰かに言ってもらえる尊さを、丁寧に描いているところにあると思うんです。
ミジもミレも──自分を守るために誰かになりきった。
でも、そんな彼女たちの姿を見て、「そのままでもいいよ」って伝えてくれる人たちがいる。
だからこそ、この物語には“やさしい希望”がある。
それを感じさせてくれた第3話、わたしの心にずっと残りそうです。
“嘘をつけるようになった”ミジがくれた、小さな勇気
第3話を見ていて、ふと思ったんです。
もともと正直で、まっすぐで、“言いたいことは言ってしまう”タイプだったミジ。
そんな彼女が、ミレとして会社で働きながら、ちょっとずつ「嘘が上手になっている」ように感じませんでしたか?
もちろん、それは良いことばかりではないけれど、でも…
「生きていくって、少しの嘘と、少しの演技で自分を守ることでもある」と気づかされた気がしました。
“まっすぐすぎた”ミジが初めて見せた、大人の防衛本能
ミジは第2話まで、どこか“無防備”でした。
本音をストレートにぶつけて、空気も読まず、でもそれが“ミジらしさ”でもあって。
でも第3話の彼女は違いました。
ミレのふりをして、何も知らないふりをして、嫌味もやり過ごして。
少しだけ“自分を殺して”場に馴染もうとする姿があったんです。
それって、ある意味“成長”なんじゃないかなと思って。
私たちも、大人になる過程で、
「言いたいことがあっても、あえて言わない」という選択をすること、ありますよね。
ミジもまた、今その“苦さ”を知っていく過程にいるのかもしれません。
嘘って、“優しさ”にもなるんだなって思った
ホスに「君はミジだろ?」と聞かれたとき。
本当のことを言う勇気が出なかった。
でも、それはただの逃げじゃなくて、
“相手との関係を守りたかったからこその嘘”だった気がします。
本音だけが正義じゃない。
ときに、嘘がやさしさになることもある。
ミジは、そのことを“肌で”感じ始めているんじゃないかな。
そして、その“学び”が、彼女を少しずつ変えている。
「嘘も、涙も、全部わたしの一部」──そう思える日が来ると信じて
嘘をついたことに罪悪感を抱いて、
涙を見せたことに恥ずかしさを覚えて。
でもそれって、すごく人間らしいことだと思う。
だって、誰かを守るために嘘をついたり、自分を守るために演じたりするのって
“生きる力”そのものだから。
ミジがその力を少しずつ身につけていく姿に、私は胸を打たれました。
「こんな私でも、誰かの役に立てるかな?」
そんなふうに不安を抱きながら、それでも一歩踏み出すミジに、
私たちは、自分自身の姿を重ねてしまうのかもしれません。
未知のソウル 第3話の余韻──痛みと再出発が交差した回を振り返って
この第3話は、“過去”を引きずりながら、それでも“今日”を選ぶ物語だった。
誰もが少しずつ、心に棘を刺したまま生きていて。
それでも、何かの拍子に──誰かの言葉に──その棘が静かに抜けていく瞬間ってあるんだって、そう信じさせてくれた回でした。
ミレとして働くミジが得た“感情でぶつかる強さ”
これまでのミジは、“ぶつかる”というより“すり減らしてきた”タイプだったと思う。
でも第3話では、ミレとして働く中で、自分の想いをちゃんと「伝える」強さが芽生えていました。
会社で理不尽に怒られても、「少しぐらい人間扱いしてほしい」と叫んだ。
それは逃げでも、感情的な爆発でもなく、「今、ここに私がいる」という証明だった気がします。
「相手にどう思われるか」よりも、「自分の気持ちを丁寧に扱う」ことのほうが、ずっと大事だよね。
ミジのその変化に、私は勇気をもらいました。
ホスという存在が物語に与える“安心の灯り”
ホスというキャラクターが、この物語にいる意味。
それはたぶん、「選ばれたヒーロー」ではなく、“誰かのそばに黙って立てる人”の象徴なんだと思います。
彼は何も強制しない。
正体に気づいても、問い詰めない。
ただ、「力になるよ」とそっと言ってくれる。
それだけで、どれだけ人は救われるか。
物語の中で誰かが光になるとしたら、それはホスのような人だと私は思う。
彼がいるだけで、心が少しだけ軽くなる。
それでも物語は続く──次回、ロサとの再会は叶うのか?
第3話の終盤、ロサがミレ(中身はミジ)との約束を忘れそうな描写がありました。
認知症かもしれない──その可能性に触れたとき、胸がぎゅっとなりましたよね。
詩で救われたミジが、今度は“ロサを支える側”になるのかもしれない。
もし、ロサが約束を忘れても。
それでもミジは、彼女の元を訪ねるんだと思う。
なぜならあの詩が、彼女に“生きる強さ”を与えてくれたから。
この物語のテーマは、「すれ違い」や「入れ替わり」じゃない。
“誰かの痛みに触れたとき、私たちは変われる”ということなんだと思います。
そしてその変化は、小さくても、静かでも、ちゃんと未来へ繋がっていく──。
第3話は、その“始まり”をそっと描いた回でした。
- ホスが正義を貫き弁護士を退職
- ミジは本音を隠す苦しみと向き合う
- ロサの詩が心を動かし涙を誘う
- 祖母とホスが“入れ替わり”に気づくやさしさ
- 嘘を通してミジが“大人になる瞬間”を描く
- ミジの言葉に“感情で生きる力”が宿る
- ホスの存在が物語に“静かな光”を灯す
- ロサとの再会、そして記憶の不安が残る
- 痛みと再出発が交差する静かな名エピソード
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