「殺した夫が帰ってきました」第5話ネタバレ――“夫”も“妻”も名前をすり替えた。愛と茉菜の物語が裂ける夜

殺した夫が帰ってきました
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名前が変われば、人生も変わると思っていた。だが、この夜、それは過去を塗り替えるための仮面に過ぎないと知る。

『殺した夫が帰ってきました』第5話は、和希の正体、茉菜の正体、そして“私”の名前の正体が一気に剥がれる回だ。

友情と恋情、赦しと罪、その境界線が雨音の中で溶けていく――感情の回収が連鎖する45分を追う。

この記事を読むとわかること

  • 第5話で明かされる和希と茉菜の衝撃的な正体
  • 愛と茉菜が築いた深い絆とその崩壊の過程
  • 名前の呼び間違いが生んだ温もりと別れの意味

第5話の核心――“夫”も“妻”も別人だった

名前を名乗るという行為は、信号機が青に変わる瞬間のようなものだ。相手に“進んでいい”という合図を与える。だが、その信号が最初から偽物だったとしたら――歩き出した足は、どこへ向かえばいいのだろう。

『殺した夫が帰ってきました』第5話は、その信号の色が一斉に反転する回だ。和希は和希ではなく、茉菜は茉菜ではなかった。物語がこれまで積み上げてきた“人物像”というレンガを、無慈悲に蹴り倒す。崩れる音は静かで、しかし耳に残る。

この瞬間から、観る者は「誰を信じてきたのか」という問いを、自分の膝に置いたまま物語を追うことになる。信じていた名前、愛称、肩書き――それらはすべて砂上の楼閣だったのだ。

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和希の正体は警官・和田佑馬

茉菜の夫として記憶されてきた鈴倉和希は、実は遺体となって発見されていた。その事実が差し込む光は冷たく、そして残酷だ。目の前にいた“和希”は、警官の和田佑馬だった。

和田は、自分が茉菜の兄であると名乗る。ただし、血の繋がりはない。父の再婚相手の連れ子だった茉菜は、彼に兄以上の感情を抱いていたという。その想いを知りながらも、和田は“家族”という境界を守っていた。

だが両親の離婚で「縁を切れ」と言われ、彼は茉菜の前から姿を消した。それは断罪のような別離であり、残された茉菜の感情は宙ぶらりんのまま凍りついた。和田にとっても、彼女を捨てた罪は心の底で発酵し続け、やがて謝罪という形で噴き出す。

この兄妹という事実は、視聴者に新しい地図を突きつける。地図には見覚えのある地名が並ぶが、道の繋がり方がまるで違う。感情のランドマークが、ひとつひとつズレていく。

茉菜だと思われていたのは上坂愛

もうひとつの偽名は、より個人的で、より切実だ。これまで鈴倉茉菜として行動してきた彼女は、実は上坂愛だった。幼少期の虐待、夜の店での邂逅、洋服作り――それらはすべて愛自身の記憶だった。

ではなぜ愛は茉菜を名乗ったのか。その答えは、二人の関係性の中にある。茉菜は愛にとって、名前の呪いを解いてくれた存在だった。嫌いだった「愛」という音を、初めて肯定的に響かせたのが茉菜の声だった。その響きに包まれるために、彼女は茉菜になりたかったのだ。

ここで視聴者は、物語の土台が二重構造であることに気づく。ひとつは事実のレイヤー――和希も茉菜も別人だったという現実。もうひとつは感情のレイヤー――名前を交換し、人生を一時的に借り合うことでしか生きられなかった二人の物語だ。

第5話の衝撃は、この二層が同時に崩れることにある。瓦礫の下からは、愛と茉菜、それぞれが本当に求めていた“呼び名”だけが、かすかに聞こえてくる。

愛と茉菜、“双子みたい”だった日々

二人が出会ったのは、夜の光が昼よりも安全に見えた頃だった。街灯の下で影を落とすより、ネオンの中で名前を呼び合うほうが、ずっと安心できた。愛にとって、その出会いは偶然ではなく避難だった。

9年前の仙台。盛岡を出た愛は夜の店で働いていた。客の男に腕をつかまれ、暗い通りへ引きずられそうになったその瞬間、茉菜が現れた。毅然とした声で「うちの店は店外禁止」と告げ、男を退けた。立場を守るための台詞だったが、その奥には“あなたはここで安全でいていい”という無言の約束があった。

この救いがきっかけで、二人は行動を共にするようになる。街の片隅で笑い合う姿は、他人には姉妹か恋人のように見えただろう。だが彼女たちは、自分たちを“双子みたい”だと呼んだ。生まれた場所も血も違うのに、感情の温度が同じだった。

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夜の店で始まった救いと友情

茉菜は運転免許を取ったばかりの新しい自由を、愛との時間に使った。深夜のコンビニ、雨上がりのカラオケ、知らない街の喫茶店。車は彼女たちの小さな国であり、どこにでも行ける魔法の船だった。

愛にとって、茉菜の存在は保護と刺激を同時にくれるものだった。危険な場面で庇ってくれる大人のようでありながら、時には子供じみた冗談を飛ばす。心の防波堤が一部壊れた愛の内側に、茉菜は遠慮なく足を踏み入れた。

この時期の二人を形容するなら、“寄りかかり合いながらも前に進む二輪車”だ。片方がバランスを崩せば、もう片方が体重を移して支える。無意識に、そして確かに。

洋服と名前がくれた生きる理由

茉菜は愛の手先の器用さをすぐに見抜いた。「デザイナーになれるよ」と、未来を差し出すように告げる。その言葉は、愛の胸の奥に長年沈んでいた“生きてもいい”という許可証を引き上げた。

洋服作りは、愛にとって自分を証明する作業だった。針と糸を動かすたび、愛は少しずつ自分の存在を縫い合わせていった。そして、その服を最初に褒めてくれたのが茉菜だった。“愛”という名前を、褒め言葉と同じ温度で呼んでくれた初めての人でもある。

愛は、その響きに救われた。嫌いだった名前が、茉菜の声を通ると、やわらかな布のように手のひらに収まった。だからこそ、後に彼女が茉菜を名乗ることは、単なる嘘ではなかった。それは茉菜という名前に込められた温もりを、自分の中に延命させる儀式だったのだ。

この“名前の贈与”こそが、第5話で暴かれる真実の核のひとつになる。事実と感情、そのどちらを取っても、二人は確かに双子のように似ていた――心のかたちが。

愛が見た茉菜の変化と崩壊

幸せは、音を立てずに傷んでいく。第5話の中盤、茉菜の笑顔はまだ形を保っていたが、その裏側では色が少しずつ剥がれ落ちていた。愛はその変化を最初、見て見ぬふりをした。なぜなら、崩れ始めた壁の向こうに何があるのか、知ってしまえばもう元には戻れないとわかっていたからだ。

ある日、茉菜が妊娠を告げる。相手は「望めば結婚する」と言ってくれたという。その瞬間の茉菜は光をまとっていた。愛はその光に手をかざしながらも、心の奥で小さな不安を覚えていた。“この人は本当に茉菜を守れるのか”という問いが、胸の隅で形になり始めていた。

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妊娠と結婚、そして沈黙のあざ

結婚し、新居へ移った茉菜は、以前より少し遠い人になった。再会したのはカラオケの個室だった。画面に流れる歌詞を眺めながら、茉菜は子どもの名前を考えていた。その穏やかな横顔に、不意に影が差す。手首にあざがあったのだ。

理由を尋ねても、茉菜は首を横に振るだけだった。“言葉にしてしまえば、それが現実になってしまう”――そう思っているのだと、愛は感じた。沈黙は、真実を守る鎧にも、真実を殺す刃にもなる。茉菜はその両方を握りしめていた。

その日から、愛は笑顔の奥に潜む疲れを見逃さなくなった。だが、介入するにはタイミングが遅すぎた。幸福の殻は、すでにひび割れを広げていた。

流産と生命保険、崩れていく幸福の形

数か月後、知らせが届く。茉菜は病院で呆然と座っていた。夫の暴力が原因で流産したのに、迎えに来ることすらなかったという。その瞬間、愛の中の怒りは沸騰し、同時に自分の無力さに冷やされていった。

荷物をまとめる手伝いをしていると、生命保険証券が出てきた。死亡保険金は3千万円。数字が示す冷たい価値が、茉菜の命の横に置かれている。その現実は、愛にとって吐き気を催すほどの侮辱だった。

愛は書類をそのまま置き、「帰ろう、うちに戻ろう」と促した。茉菜は生きる気力を失い、長い時間をかけて回復した。その間に離婚届を書いたとき、愛は正直安堵していた。だが、その安堵はすぐに裏切られることになる。

幸福は音を立てずに傷んでいく――だが崩壊は、突然で、そして一気にやってくる。雨の夜、茉菜は泣きながら愛のもとへ駆け込み、「夫を殺してしまった」と告げたのだ。その一言で、幸福の残骸は完全に崩れ落ちた。

殺害の告白と雨の夜の虚偽申告

その夜の雨は、まるで音で人を押し流すようだった。玄関のドアが開くと、びしょ濡れの茉菜が立っていた。目は泣き腫らし、唇は言葉を押し出す直前の形をしている。その口から放たれたのは、「夫を殺してしまった」という一行の告白だった。

愛はその言葉を聞いた瞬間、時間の感覚を失った。背後で流れる雨音が、部屋の空気と混ざり、外界と内界の境界線を溶かしていく。目の前の茉菜は、恐怖と安堵を同時に宿した瞳で、何度も瞬きをしていた。

彼女の話は断片的だった。和希に殺されかけ、必死に振り払った瞬間、彼が転落したという。事故だったのか、意図だったのか、その境界は雨に洗われ、形を失っていた。

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夫を殺した理由とその瞬間

茉菜の言葉を聞きながら、愛は頭の中でいくつもの場面を再生した。あの手首のあざ、流産後の虚ろな目、生命保険証券。すべてが、この夜の一点に収束していく。「守られなかった命が、ついに守られた瞬間」――そう言えば聞こえはいいが、その守り方は取り返しがつかない。

雨は二人を隔離するカーテンのように降り続けた。愛は、警察に行くべきだと考える理性と、茉菜を守りたいという衝動のあいだで引き裂かれた。結局、後者が勝った。二人は豪雨の中を走り、愛は警察で虚偽の申告をする。「夫を置き去りにして逃げた」と。

それは、茉菜の罪を覆い隠すための嘘であり、同時に自分自身が彼女と共犯になるための儀式だった。

「愛っていい名前だ」と呼ばれた意味

警察を出たあと、茉菜はふと笑って言った。「愛っていい名前だね」。その声は、雨粒よりもやわらかく、しかし胸の奥に落ちた瞬間には重く沈んだ。

愛は、自分がその名を嫌ってきた理由を話した。名付けた人間に一度も愛されたことがなかったからだと。それでも、茉菜が呼ぶ「愛」は違った。そこには承認と温もりがあり、名前が持つはずの意味が初めて回復していた。

だからこそ、愛は彼女を止めた。「行かないで」と。しかし茉菜は、「全部自分が選んだことだ」と答え、自首を決めた。その背中を見送る瞬間、愛は自分の中の一部が茉菜と一緒に歩き出してしまったような感覚を覚えた。

この夜、愛は名前の意味を取り戻したが、それは同時に最も大切な存在を失う前触れでもあった。雨がやんでも、二人の間に横たわった共犯という湿度は、消えることはなかった。

兄妹という告白と“本物の茉菜”の行方

第5話の終盤、物語は再び静かにひっくり返される。和希だと思っていた男――和田佑馬は、自分が茉菜の兄だと明かす。血は繋がらないが、同じ屋根の下で暮らした日々があった。茉菜は彼を兄以上の感情で見ていたが、和田はその想いを知りながら、家族という枠を崩さなかった。

二人の関係を引き裂いたのは、大人の都合だった。父と茉菜の母が離婚し、和田は「縁を切れ」と命じられる。抗う余地もなく、彼は茉菜の前から姿を消した。その決断は、彼の中で長く澱のように沈み、年月を経て後悔と謝罪の衝動に変わった。

「過去最高に好きになった人」という茉菜の言葉が、和田にとっては痛みを伴う証拠だった。彼は兄として、男として、その愛を受け止められなかった。しかし、その愛を裏切ったままでは生きられなかった。

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異母兄妹の過去と別離

茉菜が抱えていた感情は、淡い恋ではなく、心の避難所としての愛情だった。幼少期から孤独を抱えていた彼女にとって、和田は唯一「帰れる場所」だったのだ。だからこそ、その場所を失った日から、茉菜は居場所の座標を見失った。

和田にとっても、茉菜は守るべき妹であり、罪を背負わせたまま放置した存在だった。再び彼女を探し出したのは贖罪であり、失われた時間を取り戻すためだった。だが、見つけた茉菜はすでに別の名前を背負い、別の罪と共に生きていた。

この再会は、二人にとって救いではなく、未回収の感情を再び炙り出すための炎だった。

茉菜の自首は記録になかった

愛は和田に、茉菜と二人で警察に向かったと話す。だが、和田の口から出たのは予想外の事実だった――茉菜の自首記録は存在しない

この一言で、愛の世界は再びぐらつく。確かに手をつないで歩いたあの道、ドアを開けた瞬間の警察署の匂い、すべてが愛の記憶には鮮明だ。しかし、記録という現実の側には、その痕跡が一切残っていない。

「和希を殺したあと、何があった?」と和田は問う。愛は視線を逸らし、静かに答えた。「今から茉菜のところへ行こう。きっと、あなたのことを待っているから」。その声には、確信と祈りが同居していた。

だが視聴者は気づいている。茉菜が“待っている”という保証は、どこにもない。愛の言葉は、真実か、願望か――その境界線は次回への引き金として残された。

第5話の感情の回収ポイント

第5話は、物語の「事実の回収」と「感情の回収」がほぼ同時に行われる稀有な回だ。誰が誰なのかというパズルが完成する瞬間、同時に、視聴者は二人の女性が互いに返し合ってきた温度や匂いまでをも受け取ることになる。

重要なのは、この回収がすべて“名前”を媒介にしていることだ。和希と和田、茉菜と愛――名前を正しく呼び直すことで真実は明らかになるが、その瞬間にこぼれ落ちるのは、間違った名前で呼び合っていた日々の温もりでもある。

第5話は、正しさと優しさが必ずしも共存できないことを、名前の交換という形で証明してみせた。

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名前を呼び合うシーンが重ねる救済と別れ

茉菜が「愛っていい名前だね」と言い、愛がその響きに救われる場面。それは、過去に茉菜が愛の服を褒めたときの延長線上にある。あのときと同じように、茉菜は愛の存在をまるごと肯定した。

しかし、この場面は同時に別れの始まりでもあった。名前をやさしく呼び合うという行為は、その場限りの安心を与えるが、次の瞬間には離れてしまうための“最後の手触り”にもなる。

救済の言葉と別れの予告が同じ一文の中に存在する――この二重性が、視聴者の胸を強く締め付ける。

兄として、友として、赦しきれない距離

和田と茉菜の関係もまた、回収と喪失が同時に訪れる。異母兄妹という真実は、二人の過去を正しい位置に戻すが、その正しさはもう手遅れだった。幼い日の温もりは再現できず、後悔だけが鮮明になった。

和田にとって茉菜は妹であり、同時に“守れなかった誰か”だ。兄としての立場を守ったことで、彼女を孤独に追いやった。その事実を知ってもなお、彼は赦しを求めるしかないが、茉菜がそれを与える機会はもう残っていないかもしれない。

友としての愛も同じだ。共犯という形で茉菜を守ったが、その守りは結局、彼女を別の孤独へと送り出した。赦したいのに赦せない距離が、三人の間に横たわり続ける。

この第5話は、真実が明らかになるほど関係が遠のくという逆説を、最後まで美しく保ったまま幕を下ろす。次回、残された距離は縮まるのか、それとも永遠に測れないまま終わるのか――観る者はその問いを胸に、最終話を迎えることになる。

名前がずれると、心の距離もずれる

第5話を通して浮かび上がったのは、名前の正誤がそのまま人の距離を変えてしまうという事実だった。間違った名前で呼び合う日々は、表向きは偽物に見えるが、そこに宿っていた温度は誰にも否定できない。正しい呼び名がもたらす透明さと、間違った呼び名がくれる安心。そのあいだで、登場人物たちは揺れ続けていた。

正しい名前は、過去を照らし、関係の輪郭をはっきりさせる。だがその光は、同時に影を濃くする。愛と茉菜、和田と茉菜――本来の名が明かされた瞬間、それまでの記憶は整列し直されるが、並び直された先には、もうあの日の笑顔が収まる場所はない。間違った呼び名で守られていた心の空間が、音もなく崩れ落ちていく。

名前がずれることは、単なる言葉の誤用ではない。それは互いの心に作った避難所の鍵を、少し違う形で削って持ち合っているようなものだ。鍵穴にはぴったり合わないかもしれないが、なぜか安心できる――そんな奇妙な互換性が、二人をつなぎとめていた。

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間違った呼び名がくれた安心

愛と茉菜は、互いを正しい名前で呼んでいなかった。その事実は、普通なら裏切りや欺瞞として語られる。でも二人にとっては、間違いこそが心の温度を保つ毛布だった。名前が違えば、その人の過去も罪も一瞬だけ“他人事”になる。そうやって、一時的にでも痛みから逃げられる。

愛は“愛”という名に深い傷を抱えていた。名付けた人から一度も愛されたことがなかったからだ。その音を聞くたび、呼吸が浅くなる。それでも茉菜が呼ぶ「愛」は違った。声の響きに、承認と温もりが混ざっていた。茉菜に呼ばれるたび、その音は少しずつやわらかくなり、耳の奥ではなく胸の奥に届くようになっていった。

茉菜にとっても、“茉菜”ではない愛を茉菜と呼ぶことは、自分が孤独であることを一時的に忘れる儀式だったのかもしれない。本当の茉菜は、夫との間に傷を抱えていた。その現実を直視しないために、別の誰かに自分の名前を貸し、その人が笑ってくれることで、自分もまだ生きられると信じた。

こうして間違った呼び名は、嘘ではなく、互いの痛みを緩和するための暗黙の契約になっていた。正しさよりも、その瞬間の安全が優先されていたのだ。

正しい名前がもたらす別れ

和田と茉菜、愛と茉菜。それぞれの関係は、正しい名前を知った瞬間に形を変えた。兄と妹、友と友――立場は整理されても、距離は広がる。正しさが与える透明さは、真実を映し出すが、その透明さは時に残酷だ。透き通ったガラス越しに相手が見えるのに、その距離はもう縮まらない。

愛が「茉菜」と呼び、茉菜が「愛」と呼ぶ。その音の交換が二人の間に橋を架けていた。橋の上では、立場も過去も関係なく、ただ互いの存在だけが確かだった。だが第5話でその橋は外され、二人は正しい岸に戻された。そこは安全で、整っていて、しかし手を伸ばしても届かない場所だった。

名前がずれると、心の距離もずれる。逆もまた然り。だからこそ、二人が間違ったまま呼び合っていた日々は、偽物でありながら、本物以上に真実だった。正しい呼び名が与えるのは事実の明瞭さだが、間違った呼び名が与えるのは、たった一瞬の救いだった。

殺した夫が帰ってきました 第5話のまとめ

第5話は、登場人物の名前を正しく並べ直すだけで物語が別の形をとるという、稀有な構造を持っている。和希は和田であり、茉菜は愛だった。その事実は、視聴者に一度覚えた感情の地図を破り捨てさせ、新しい道筋を描き直させる。

しかし、この回の本質は事実の整理ではなく、感情の整理の困難さにある。名前を訂正すれば人間関係は明瞭になるはずなのに、訂正された瞬間に消えてしまう温もりや、呼び間違えていたからこそ守られていた優しさがあるのだ。

愛と茉菜、和田の三人は、それぞれが別の形で“守れなかった誰か”を抱えている。その後悔は、名前や立場を超えて共有されているが、共有されたからといって癒えるわけではない。

このエピソードが秀逸なのは、真実の発覚が物語の終わりではなく、次の問いの始まりとして機能している点だ。「茉菜は本当に自首したのか?」「彼女は今どこにいるのか?」――答えは示されず、観る者に委ねられる。

そして第5話は、視聴者にこう問う。「正しさと優しさ、あなたはどちらを選ぶのか」。名前を呼び直すことは、正しさへの一歩だ。しかし、もう二度とその響きが以前のように温かくはならないことも、同時に知ってしまう。

最終話を前に、第5話は物語の輪郭を整えつつ、感情の余白を広げる。そこにあるのは、答えを知るための道ではなく、答えのないまま歩き続けるための覚悟だ。視聴者はその覚悟を胸に、最後の扉が開く瞬間を待つことになる。

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この記事のまとめ

  • 和希と思われた男は警官・和田佑馬で茉菜の異母兄
  • 茉菜だと信じられていた人物は友人の名を借りた上坂愛
  • 愛と茉菜は夜の店で出会い、双子のような関係を築いた
  • 茉菜は妊娠と結婚後にDVを受け、流産と絶望を経験
  • 雨の夜、茉菜は夫殺害を告白し愛は虚偽申告で庇う
  • 茉菜の自首記録は存在せず、真相は最終話へ持ち越し
  • 名前の呼び間違いが互いの心を守る“契約”となっていた
  • 正しい名前が距離を広げ、間違った名前が温もりを残した

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